アクティブラーニング入門~文教大教授のお手本~

   

アクティブラーニングの入門として、東日本の代表的な教員養成大学である、文教大の会沢信彦教授(教育心理学)による、高校生対象のアクティブラーニングの実践(講義)を再現してお伝えします。

※駿台予備学校後援の進学フェスティバルで、高校生向けに実演されたものです。

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アクティブラーニング 講義開始前の様子

教室

文教大の会沢教授は、講義開始前から会場に控えています。教壇に立たずに、教室内を参加者の様子を観察しながら、行き来します。これからの授業が、楽しみで仕方ないという表情です。パワーポイントの準備はありません。

ポイント

・生徒の様子を、よく観察してから臨んでいる。生徒の実際の様子によって、導入や進行などが異なるはずなので、観察によって状況をつかむことは重要。

・硬い表情にならないように、心がけている。特に初対面では、生徒は講師の顔の表情により、心情が大きく左右される。

・パワーポイントを使用しない。パワーポイントは、話者の表情や声の調子から、生徒の関心を逸らす可能性がある。ただし、アクティブラーニングの本質は「脳の活性化」にあるので、使用が一律NGとは言えない。

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受験ネットから進呈

アクティブラーニング 講義開始時の様子

時間になり講義が始まります。自己紹介はおどろくほど短めです。また、あいさつを一方的にするのではなく、返答を求めます。私が「こんにちは」と言いますから、「こんにちは」と答えてくださいと、指示します。

ポイント

・初対面の場合、自己紹介の注目度は抜群だが、すぐに飽きてしまう。氏名、住まい、所属など、聞かないと違和感を覚える内容に絞るのが良さそう。

・一方で、自己情報の開示は、コミュニケーション上極めて重要。代ゼミ国語科の國井先生は、自己紹介は短いものの、講義の途中で再三自身の短いエピソードを挟んでいた。

・あいさつに返答を求めるのは、小学校の手法ではあるが、聞き手が中高生でも有効。声と声の交換で、身体的な交流回路が生まれ、雰囲気が変わる。

会沢教授は、テーマの「やる気の心理学」を確認した後、今日の授業は、アクティブラーニングという手法で行うと宣言。その後、在籍高校がバラバラの聴講者に対し、2~3人のグループを組むように指示。

・具体的には全員起立させ、グループを組めたら座るように指示。できれば知らない人と組んで欲しいと誘導。筆者は1人で参加のため、近くにいた高崎健康福祉大学高崎高校の生徒2名と組む。

・組めたら着席させるこの方法は、一見合理的。しかし、後日、筆者がある高校で実践したところ、1名誰とも組んでいない生徒の存在が判明した。周りの生徒は、それに気づきながら問題視せず、仲良し同士で組んでいた。要注意。

・グループの人数3名は、効果的。2名では広がらないし、4名以上では、聞き役やわれ関せずが発生してしまう。

グループの成立を確認した会沢教授は、途中指示があったらそのグループで相談するように指示します。相談の終了は「鈴の音」で知らせると説明がありました。

・教授が小学校教諭に造詣が深いため、鈴は、笛のような位置づけ。幼稚園児や小学生は、笛の音に身体的に反応し、それまでの作業から、すっと離脱するように教育されている。ただし、その後の実践から、落ち着いた高校(目安として都市圏では偏差値45以上、地方では偏差値40以上)では、鈴や笛は必ずしも必要ないと感じた。

アクティブラーニング 導入・展開1

やる気

会沢教授は「君たちは、いつ勉強にやる気を感じる?」と発問します。短時間個々人で考えさせたあと、グループで討議させます。私ののグループでは、「定期試験の直前」などの意見が出ました。

鈴を鳴らしたあと、教授はご自身の出身県である栃木県から来た高校生を皮切りに、その付近の5人を選び、答えを言わせます。

・講義開始直後に、参加者がどこから来たのかは、挙手によりヒアリングしてある。参加者が60人を超えるなか、栃木出身者、かつ明るい感じの生徒を1番目に指名した。

・60人の未知のオーディエンスのなか、1人目に指名され、ある意味で割を食った生徒とは、方言ネタをやりとりすることで関係を作り「割りを食った感」を減じている。この方言ネタは、栃木のユニークな方言を紹介するもので、自己開示にもなっている。

「君たちは、いつ勉強にやる気を感じる?」という質問に対する生徒5人の答え

(1)赤点とったとき

(2)成績を上げたいとき

(3)楽しみが待っているとき

(4)課題が終わらないとき

(5)好きな人に会ったとき

教授は、この5つの答えを「外発的動機付け」「内発的動機付け」の2種類に分類させます。正解は(5)は多少保留しつつ、全て外発的動機付けとしました。

・定義の説明は特になかった。外発的動機づけとは、評価、賞罰、強制など他人が関与する刺激。内発的動機付けとは、個人のうちに完結する興味、関心、意欲によるもの。難しい用語を回避するために、あえて曖昧にしていると思われる。

・ここまで具体(体験の考察)から抽象の流れを、上手に敷いている。対比的な概念を提示しているのも、わかりやすい。

ここで教授は、講義内唯一の板書を行いました。

外発的、内発的の違い

外発的 … 学ぶことが( 1 )
内発的 … 学ぶことが( 2 )

2番の正解が「目的」であることを明らかにしたあと、1番をグループで考えさせます。正解は、対義語の「手段」です。自由挙手方式で、正解が出ました。

唯一の板書が、この講義のテーマ「君たちは、いつ勉強にやる気を感じる?」(やる気の心理学)への答えとなっています。例えば、名著とされる『新釈現代文』は、内容にボリュームがありますが、著作全体の主張を1つに絞っています。受講者側が記憶にとどめるためには、さまざまな内容に触れつつも、1テーマに対し1つの答えを出すことが重要です。

例えば、年に20冊の本を読む人がいるとします。各著作の主張が7点ずつあったとしたら、140もの主張を、覚えなければいけないこととなります。教える側(書く側)の熱量と、講義を受ける者(読者)の熱量の差を、いつも意識しなければならないと感じました。

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アクティブラーニング 展開2

次に、教授は、高校生活のなかで行動が手段となる「外発的動機付け」と、行動が目的となる「内発的動機付け」のどちらが多いか、個々に考えさせた上でグループ討議させます。

・私のグループでは高校生2人とも9:1とのことで、外発的動機づけがメインだった。

会場の緊張が緩んでいるので、今度は適当な1列を当て5人に答えさせます。外発的動機付けに偏重しているとの答えが目立ちました。事例として、文教大生は「高校時代に7:3、大学時代に6:4から5:5が多い」と説明します。

・話の流れの中で、文教大生は内発的動機での行動が多く、しっかりとした学生が多いとPR。授業内容への親和性が高く、広告だと気づきにくい広告だった。

・聴講者によっては、内発的動機を増やしていくことが、大人への階段だと受け取ったかもしれない。

アクティブラーニング 補足

あまり時間がないなか、ド・シャームが、外発的動機に動かされる子どもをポーン、内発的動機を持つ子どもをオリジンと呼んでいることが紹介されました。また、心理学者のデシとライアンの関連研究が存在することが、簡単に紹介されました。

・心理学者のデシは、報酬と意欲に関する実験が有名。大学生に流行の立体パズルを解かせ、報酬を用意したグループが、報酬がないグループと比較すると、意欲の低下が見られることを明らかにした。報酬のないグループには、休憩時間にもパズルを解いていた大学生が目立った。

・デシとライアンは、共同研究で、やる気を支える3つの欲求を明らかにしている。

・レジメにはあったものの、触れられなかった要素は以下の通り。

(1)「やる気」になるのはどんなときか。原因帰属(ワイナー)。

(2)無気力になるメカニズム。学習性無気力(セリグマン)。

(3)「学び」の条件とは。学びを編み上げる3色の糸(森敏昭)。

アクティブラーニング まとめ

① 高校生は、おもに外発的動機づけに沿って行動している。

② 一方、内発的動機づけとは、学ぶことが(   )となっていることである。

③ 内発的動機づけを増やしていくことが、成功への階段である。

なお、同じグループの高校生からは、高崎のラーメンのおすすめを教えてもらいました。屋号は匠。ボリューム重視で選んだとのことでした。

アクティブラーニングの根源とも言える、教えると育つの関する議論は、下の書籍がおすすめです。

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