工学部とは 理学との違い、就職状況、将来性、学ぶ内容を解説

工学部を検討中の高校生のために、就職状況、将来性、学ぶ内容を解説し、学生の口コミを紹介します。

工学部の就職状況と将来性

工学部は、希望者の方には当然ですが、ほぼ全員が学んだことを生かす業界に就職します。その意味で文学部のように、作家や出版業界に進む人がごく一部である【学問系】の学部とは大きく異なります。

【国家資格系の学部リスト】

自然科学系の一部 ・工学(電気、機械、材料化学等) ・薬学 ・医学
教員養成系(小学校教諭)
看護・医療系
家政・生活科学・福祉系

工学部のように、学んだことを将来に生かす可能性が高い学部をこのサイトでは【国家資格系】に分類しています。【国家資格系】の学部の詳しい注意点は、次の記事に掲載されています。

日本一わかりやすい 文系・理系のための学部選び〜適性、診断、決め手〜

簡単に言えば、進学後進路変更が効きにくく、就職状況だけで学部を選んでしまうと楽しさを感じないため成績が低下し就職に失敗するリスクがあります。

工学部を出て技術を生かして就職したい方へ

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【1】理学部と工学部との違いを知る

工学部を選ばれた方は理学部との違いを理解している場合も多いのですが、なかには何となくであったり、「理工学部」とひとくくりにして考えている方もいます。理学部との違いはしっかりと理解しておく必要があります。

理学部 … 高校の教科である「物理」「化学」「数学」「生物」「地学」の延長線上で高度な研究を行う。

工学部 … (物理や化学を土台にしながらも)モノづくりに生かせる形の実践的な技術を身につける。

 

少し難しい言い方をすると、理学部ではそれが実際にお金を生む技術になるかを度外視して、学問発達のための「基礎研究」を行います。ノーベル賞候補になるのは原則として工学系に比べ、画期的な発見を伴う理学系の研究者です。逆に言えば、少数の日の目を見る研究の背後に、多数の賞賛すべき屍(しかばね)が積み上げられている世界です。塾講師などをしながら、研究員として大学に残っていたら40歳になってしまったという人もいます。小保方晴子さんも理学系ならではの苦労を重ねられていると思います。

「小保方晴子の再起写真集」について(外部サイト)

その反面、理学部を出て数学や理科の中学・高校教員に採用される方は少なくありませんし、大学院を経て運よく大学や大企業で研究者のポジションをつかむ人もいます。また「物理」「化学」「数学」「生物学」「地学」のなかで、化学専攻はやや有利との見方もあります。しかし全体としては専門性を生かし切れない就職も多くなっています。

【2】工学部の学科を知る

一方、工学部は時代に関わらず就職に強い状況が続いています。特に就職に強いのは「機械系」「電気系」です。それに次ぐのが「材料系」「情報系」「建築・土木系」と考えてよいでしょう。日本中のどの工場でもどんな場所でも機械、電気は欠かすことができません。少しフィールドは小さくなりますが、化学の知識を使って様々な素材を研究する材料も需要があります。またニーズが強い反面、やや人材過多となっていますが、情報も就職状況はそれほど悪くないです(就職先の企業の良し悪しの差に注意)。建築、土木に関しては、家を建てるのは一生に一回ですし、大きな建物や道路は景気に左右されますが就職はそれほど悪くありません。

簡単に言うと「物理」を使う分野はお金になる(=世間のニーズが高い)といえ、「化学」がそれに次ぎます。「コンピュータ言語」というやや文系要素が入る情報は、物理系にはかなわないところがありますし、入試に「数学」がないことも多い建築・土木はやや弱くなります。

しかしいくら就職が良くても、物理学や機械などに興味がないなら「機械」「電気」の学科では落ちこぼれるだけです。建築やデザインに興味があるなら、「建築」の分野でトップに立つ方がよほど楽ですしやりがいもあるでしょう。

なお大学院進学者が多いことも特徴です。首都圏で言えば、東大・東工大・横浜国大では院進学が圧倒的、早慶・千葉大・埼玉大では院進学が多数派、MARCHで半分程度だと思われます。

【3】工学部で目指すことができる主な資格

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工学部では学科によっては国家資格を取得せず、研究室の教授紹介などで就職を決めていく学生も多くいます。しかし国家資格は大きな武器になりますので、可能なものは取得しておくとよいでしょう。

主な資格

・技術士補 … 実務経験を経て技術士をめざすことが可能。
・ITストラテジスト … 難関資格で社会人の受験が多いが学生の合格例も。
・電気主任技術者(電験1〜3種)
・弁理士 … 特許、実用新案などの届け出の専門家。
・第1級総合無線通信士 … テレビ局や通信会社の送信所や中継局保守
・第1級陸上特殊無線技士
・高等学校教諭1種免許状(数学、理科、工業、情報)
・中学校教諭1種(数学、理科)
・1級建築士
・電気通信主任技術者
・甲種危険物取扱者
・毒物劇物取扱責任者

(まとめ)工学部とは

・学問色が強い理学部に比べると、実用性が高く就職は有利。院進学が多数。

・物理を使う電気・機械系、次いで化学を使う材料系に強い業界ニーズ。

・文系より学習量が多くごまかしが効かないため、好きな学科を選ぶことも重要。

(参考)大学の工学部の研究レベル【東日本】

東大、東北大、東工大の研究水準が高くなっています。次いで筑波、千葉などの主要国立大と早慶。それに次ぐのが、電気通信、東京海洋、東京農工、首都大学東京の国公立(このグループは多少知名度が低く狙い目となります)。

私大を見ていくと早慶に次ぐのが、東京理科、芝浦工業、法政、青山学院です。この辺りが水準以上の研究をしていると考えられます。芝浦工業大は知名度の関係からか、多少低く見られることがあり狙い目となります。

工学部の研究例〜コンクリートはどこから来たのか〜

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建物や橋などを作るのに欠かせないコンクリート。近年は政府主導でアスファルトの代わりに道路に使用する動きもあります。

そのコンクリートの原料をご存知ですか?石灰石・粘土・けい石・酸化鉄原料・石膏などとなりますが、石灰石が占める割合が最も多くなっています。その石灰石はどこで生まれたのでしょうか?

石灰石は、もともと赤道付近にあったサンゴ礁などが地殻とともに、なんと2~3億年かけて移動してきたものです。日本で石灰石が取れるのは、首都圏では秩父、奥多摩など、関西圏では伊吹、藤原などにあり、また北海道、四国、九州、沖縄にもあります。

日本大学工学部のコンクリート工学研究室では、コンクリートを利用して様々な建造物のモデルを作り、耐久性を確かめる実験をしています。コンクリートは常に非常に重い重量に耐えなくてはいけません。そこで機械を使った「圧縮試験」によりコンクリートがどのくらいの負担に耐えられるかを実験します。コンクリートは道路に使用されることもあります。その際にはトラックなどが通過します。タイヤと接する非常に狭い面積にトン単位の荷重が加わった場合に耐えられるかの試験設備も使用します。コンクリートは寒冷地でも使われます。そのため氷点下まで室温を下げられる特別な部屋を使って実験を行います。

実験は深夜にまで及ぶこともあるそうです。ときには実験室から出て、実際の橋をモデルに、保守点検の講習会や実際の塗装を行うこともあります。

このようにコンクリート工学は、荷重への耐性など物理学に支えられた分野ですし、材質の強化は化学に支えられています。石灰岩の生成まで辿れば地学にも関わってきます。物理学、化学、地学など、理学があってこその工学ですが、上述のように企業がすぐに利用できる技術を多く研究しています。このことが工学が就職に強い理由です。

日大工学部コンクリート工学研究室フェイスブックを参考にしました。

工学部生の口コミ

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東京農工大は、農業の学校だと誤解されるが「農」+「工」の学校でキャンパスも別々。「立体カーナビの研究」「携帯電話やSUICA等の電波解析」「ナノマシンの研究」など面白い研究がある。産学連携が盛んで、研究も実際の製品に近いものが多い。研究者より、会社に入って実際の製品を設計、開発したい人には理学部より工学部をお勧めしたい。(東京農工大―工)

物理の力学を発展させた構造力学や、コンクリート・土に関する力学を学びつつ、都市計画や経済学まで幅広く学ぶ。教授陣が豪華で、その筋で五指に入る人が多い。就職も良好。(芝浦工業)

社会環境工学科に属しているが、最近はもともと人気があった計画系に対し、防災系の人気も上がってきた。7割の学生が院に進学する。ゼネコンや専門職の公務員に関しては強い。(早稲田―創造理工)

実践的な授業が1年次から多く、入学初日から課題のはじまり。建築意匠、歴史、材料……他大学の同じ学年の建築の内容とくらべてみると違いがすごい。欠点はそれに特化しすぎて語学とかは高校初級~中級くらいのレベルどまりなとこかな(笑)。面白いのは手塚研究室の手塚貴晴先生。夫婦で建築事務所をもっていて、日本建築学会賞を受賞したりと建築界の若手のトップ。受け持ちの授業は最高難度。例えばソファのデザインでも線が一本足りないだけで課題を受け取ってくれないくらい(笑)。仕事面では見習うべきがたくさんあると思う。依頼主の趣味を知って、自宅に招待して食事して、そんな関係を持ちながら理想の家を組み上げていく。客と店員という関係を超えることはどんな仕事でも大事な点だと思う。まあそれだけでも困るけど(笑)(東京都市/旧武蔵工業―工・建築)

就職率はほぼ100%と聞いている。JABEEという技術士の一時免除の特典もある認定を受けているため成績評価は非常に厳格。(芝浦工大―工)

「もの作りが好き」というのはすごく大事だが、それを取り巻くすべての事柄も好きでないと続けられない。(日本)

授業は下手だが、授業やテストのレベルが高く、ひまな時間があまりないが、だんだん楽しくなってきた。(千葉)

半導体、回路、通信について日本でトップクラスの内容を学べます。有機トランジスタ、SAWディバイス等も有名。(千葉)

学生の意識が低く、学問をやりたいのであればすすめない。燃料電池を主として、有機(高分子・有機材料)、無機、物理(機械)を学ぶ。燃料電池では世界レベルの教授もいる。(東京都市―エネルギー化学)

船、飛行機、宇宙機を工学的に学ぶ。大学では世界最大の実験水槽を使う実験もある。東京海洋大と協力しての海洋実習がある。車以外の乗り物に興味がある人にはおすすめ。(横浜国大)

単科大学だが国からの予算が非常に多く工学部の設備は最新のもの。また理系大学としては女子が多い。(東京農工大―工)

物質工学科と生産工学科、建設学科建築学コースは三獄と呼ばれるほど忙しい。建設学科の他のコースは比較的楽。(横浜国大―工・建設)


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