2020年大学入試改革の内容(2)〜賛成・反対理由と問題点を整理する〜

   

2019年の大学入試センター試験廃止を機に大学入試、高校の授業内容が大きく変わります。その内容をわかりやすく説明します。

 

 

大学入試改革の内容(2)〜賛成・反対理由と問題点を整理する~

 

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大学入試改革の全体像

情報、技術、知識が高度化し目まぐるしく変化する国際(グローバル)競争社会。日本が生き残るために大学を研究の場から社会人育成の場に変え、新時代にふさわしい思考力・判断力・表現力を問う新大学入試を導入。高校のカリキュラムも改革。

これが大学入試改革の全体像です。

詳細 ➡大学入試改革の内容(1)~センター試験廃止はいつ?なぜ廃止するのか~

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受験ネットから進呈

なぜいま大学入試改革なのか〜文科省の「嘘」〜

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文科省はいま大学入試改革(高校改革と大学改革を含む)を行う理由を時代の転換だとしています。

・工業社会 ⇒ 情報社会
・人口増、経済成長 ⇒ 人口減、低成長社会

※文科省は不況・低成長という言葉を立場上使えないため説明上は「成熟化社会」と表現しています。

これはもっともな主張であり誰しもが賛成する点でしょう。また、学力観について次のような変化が必要だとしています。

・ゆとり/詰め込みの二項対立 ⇒ 真の学ぶ力の育成(思考・判断・表現)

この説明はいかがなものでしょうか?ゆとり教育はそもそも真の学ぶ力を育成する改革の半ばで学力低下が見られ、マスコミに「ゆとり教育」と批判されたのが実情です。「ゆとり教育」と呼ばれる1994年の新学力観導入、2003年の新学習指導要領導入の時期には次のような図式が考えられていたのです。

・詰め込み ⇒ 真の学ぶ力の育成

2003年の新学習指導要領では「総合的学習の時間」などが設けられ、従来の科目ごとの知識の暗記を脱し、現代の社会を研究し科目の枠を超えて各自が研究し成果を発表し議論するような教育スタイルが提案されました。

実際には、具体的な授業内容が高校教員に任されたこともありすぐには上手くは行きませんでしたが、その流れを汲んだ教育は現在でも教育現場に根付いています。

学力低下を生んだはずの「総合的学習」は成功点も

静岡県の沼津商業高校では「情報ビジネス科」の生徒が楽天IT学校という取り組みに参加しています。「マーケティング」という科目は、大学では実践的な内容が盛り込まれますが、高校では通常は教科書を用いて行うものです。

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出典:実教出版

沼津商業高校では、教科書学習だけでなく実際のマーケティングを実体験するために「楽天IT学校」を導入しました。ネット通販に不慣れな高校生ですので、まずは各班が楽天サイトで好きなもの(例えばある班はティラミス)を購入しネット通販の便利さを理解します。

その後今年度販売にチャレンジするご当地の「三島馬鈴薯ポテトチップス」について実際の試食、じゃがいもの産地の見学、試験販売などに取り組みます。その後価格、送料や販売単位などを議論し、各班でウェブサイトを作り実際に販売していきます。

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出典:沼津商業高校 楽天IT学校

商業高校はもとより実践的な授業があり、楽天IT学校も2010年の新高等学校学習指導要領(電子商取引の授業導入)の影響を受けたものであり、総合的学習の時間の事例としては相応しくないかもしれません。しかし1994年、2003年の教育改革が想定した「総合的学習」の完成形・理想形はこのような授業であると言えます。

沼津商業高校では初回の授業で教科書で習ったマーケティング理論FABの公式(=商品の機能、効果、消費者の得る利益)の復習から入っていきます。これは実際に「三島馬鈴薯ポテトチップス」の紹介をする際に行かされる理論です。

基盤となる知識をベースに、各生徒が主体的に工夫し、生産者や仲間とコミュニケーションをとりながら実践的に学んでいく。これは総合的学習の目指したものであり、そしてどこかで聞いたことがある理屈です。

この理屈は2019年の大学入試センター試験廃止(2020年に大学入学希望者学力評価テスト導入)を象徴として進められている教育改革(高大接続改革)の目指すところと瓜二つなのです。

 

94、03年の教育改革の見直しから進めるべき

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2019年の教育改革は、1994年、2003年の新学力観導入、新学習指導要領と目指すところは同じと考えられます。今回の改革でも「基盤となる知識」とあるように、暗記すべき知識は多少減ることが予想されます。

2003年の反省を踏まえて、大きく学習量を減らさない方針とも読めますが、古典の科目がなくなり現代文を主軸とした国語に組み込まれる案も出ているようです。これは文科省が社会で今後の必要となる主な能力として「日本を理解すること」を挙げている点と大きく矛盾しています。

いずれにせよ2003年の改革は「土曜日の学校休業」「カリキュラムの緩和(習熟すべき知識の削減)」という点に関し揚げ足を取られ、マスコミにゆとり、学力低下を批判され撤回となりました。

このとき文科省は「ゆとり教育」の象徴的存在だった寺脇研氏を更迭しただけ。このとき文科省で働いていた人が今回の教育改革にも携わっているはずです。まずは文科省自身が1994年、2003年の新学力観導入、新学習指導要領制定を見直すべきではないでしょうか。この点が今回の改革の進め方に関して反対すべき点であると思います。

高校の現場にはその時の正の遺産も存在するはずです。いまも存在する正の遺産たる授業を評価することなく、教壇に立ったことのない人材が一から理論構成したとしても、すぐに成功するはずはありません。

アメリカで2011年に小学生になった児童のうち65%は現在存在しない職種に就くだろうと予想されるような「変化の早い世界」。文科省はそう強調しますが、過去の正の遺産を放り投げて試行錯誤している間にアジア新興国はどんどん伸びていきます。

まずは1994年の新学力観=今回の大学入試改革の前提となる学力観、だと認めたうえで高校の現場から知恵を集約すべきだと考えます。

今は、「ゆとり教育」と呼ばれていますけれども、文科省としては、ゆとり教育と呼んでいたわけではないのです。ゆとり教育というのは、いい意味でも悪い意味でもマスコミが貼り付けたレッテルですね。

ゆとり教育は、長い時間と多くの方々の知恵と経験を結集して検討した結果、導き出された教育政策でした。すなわち、生涯にわたって学習する、その一環が学校教育である、という考え方に立った教育改革が必要であること、そのために知識重視型ではなくて経験重視型の教育方針のもとで生きる力をはぐくみ、ゆとりある学校づくりを目指すこととしたのです。

寺脇氏の発言(出典

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