2019年6月、NHKニューウオッチ9が、中学受験心を病む子どもたちと題して、「教育虐待」について特集しました。この記事では、小中高生全ての受験指導の経験者が、教育虐待を防ぎ、中学受験に成功させる方法を考えます。
- 関連する記事:【大学入試改革】保護者は子に何をアドバイスすべきか
NHKの教育虐待に関する報道内容は?

NHKニューウオッチ9が、中学受験心を病む子どもたちと題して、「教育虐待」について特集しました。
- 心療内科を訪れる、中学受験に臨む小学生が増えている(世田谷区・川畑友二医師)。
- 忙しい日々のなかで心身ともに疲れ、自律神経が狂い、精神的にも不安定になる症状が見られる。
教育虐待とは?
教育虐待の意味は十分に定まっていませんが、武蔵大学の武田信子教授は「子供の受忍限度を超えて勉強させるのは教育虐待になる」と述べています。子どもの意思を無視して、長時間大量の勉強を課し、子どもの心身に支障を来たしてしまうことと考えて良いでしょう。
中学受験塾の授業時間はどのくらい?

中学受験塾の授業時間はどのくらいなのでしょうか? 首都圏の大手中学受験塾、四谷大塚の小学校6年生の時間割は、以下のようになっています。
曜日 | 授業時間 | 夕食 |
平日① | 3時間20分の授業(17~21時) | お弁当 |
平日② | 3時間20分の授業(17~21時) | お弁当 |
平日③ | 3時間20分の授業(17~21時) | お弁当 |
土曜日 | 1時間40分のテスト、2時間の解説授業 | 自宅 |
日曜日 | 家庭で4時間分の宿題(テストの復習) | 自宅 |
このように、小学校の授業をこなした上でさらに1日3時間以上、現役高校生の予備校に匹敵する授業時間が課されています。
また、塾によって異なりますが、かなりの分量の宿題が課される場合もあります。小学生の段階で、友人との交流、スポーツ、習い事、家庭での夕食を犠牲にして臨むこととなります。
教育虐待の原因は、親の期待と子の能力のギャップ

中学受験をめぐり教育虐待(子どもの意思を無視して、長時間大量の勉強を課し、子どもの心身に支障を来たしてしまうこと)が起きる原因の1つには、親の期待と子の能力のギャップがあります。
親としては、わが子かわいさに、子どもの能力を信じて疑いませんし、受験に成功して、安定した人生を送ってほしいと考えています。しかし、それぞれの子どもの勉強に対する適性は、小学校4年生の受験勉強のスタートの時点でかなりの差があります。
勉強に対する適性は、小4でもかなり差がある
勉強に対する適性は、小4の時点でもかなりの差があります。
勉強に対する適性 |
①落ち着き・従順さ、②理解力(頭の回転)、③好奇心、④競争心、⑤考え方の深さ、⑥創意工夫ができるか、⑦語い力、⑧計算力、⑨国社への関心、⑩理数への関心 |
例えば、上の10項目を3点ずつで採点すると、小学校4年生でも、子どもにより大きな差(10点~30点)があることが分かるでしょう。①・②があれば、授業で教えたことは理解できます。③・④があると、自習時間に差がつきます。⑤・⑥があると、徐々にほかの子を引き離してゆきます。
親の期待と子の能力のギャップ
例えば、落ち着きがなく自由気ままで、理解力も乏しい子どもに、親が大きな期待を寄せたとしても、勉強の過程や結果に大きなギャップが生じます。このギャップこそが、教育虐待につながってゆくのです。
このギャップを防ぐためには、わが子を客観的に厳しく採点することが必要です。上の表を、小学校や塾の先生に見せ、忌憚(きたん)なく採点してもらえば、評価のギャップがはっきりします。
合わない中学受験をさせていませんか?
同時に、子どもには、それぞれに合った受験時期があるということを認識しておくと、良いでしょう。
タイプ | 性格 |
中学受験が合う | 落ち着きがあり従順で、年齢の割に大人びた話ができる(早熟)。頭の回転が良く、勉強につまづいたことがないタイプ。 |
高校受験が合う | 理解力は多少浅くても、記憶力に富み、素直でものごとに一生懸命取り組むタイプ。 |
大学受験が合う | ものごとへの理解が非常に深く、波があるものの主体的に取り組むと能力を発揮するタイプ。 |
大学受験が合うタイプなのに、中学受験で無理をさせることは、その子の勉強への意欲を壊してしまいます。
子どもを確実に伸ばすためには

勉強への適性は、幼い頃に身につけた、国語的な理解力、社会・文化への関心の高さ、計算力・空間把握力などで、かなりの部分が決まってきています。たしかに小学校高学年で子どもは大きく成長しますが、幼少期ほどは変化しません。
芽の頃は倍倍ゲームで伸びるが……
これは、草花が、芽の頃は2倍3倍と伸びるものの、ある程度成長すると、2倍3倍にはならないとイメージすると良いでしょう。子は親の鏡です。子の能力は、幼少期の親子の会話で大枠が決まっていますので、子がつまづいたとしたら、すべてが親の責任です。
親ができることは、水やりだけ
親ができることは、自分自身の子育てを思い起こしときには反省しながら、子どもが勉強しやすい環境を、心身ともに整えることです。
塾に持ってゆくお弁当には手をかけます。子どもがゲームを我慢できない場合、親も何か好きなものを断ち、一緒に頑張ります。子どもが苦手な科目は、親も苦手なことが多いですから、一緒にテキストを勉強して克服します。そして、親も何かの資格を目指すなどして、子に背中を見せながら頑張ります。
草花を無理に引っ張っても、伸びることはありません(切れることはあります)。親の仕事は、水やりだけです。
怒るな働け
怒るな働け。これは、ある私立中学のモットーです。親は、子に怒るひまがあったら、お弁当を作り、何かを我慢し、自分も勉強をするのです。このことが、無理をせずに子のやる気を引き出してゆくはずです。
関連する記事:【大学入試改革】保護者は子に何をアドバイスすべきか
コメント