元・予備校講師が、日本史通史の覚え方・まとめ方や日本史の勉強法を解説します。日本史学習の最大のコツは、全体と部分に分けることです。この記事では、年表による通史学習、つまり全体(マクロ)の学習法を明らかにします。
日本史の勉強法選びの重要性
- 日本史の勉強法は、全体(マクロ)と部分(ミクロ)に分けるとうまく行き、高得点につながります。
- 紹介する方法は、人の脳の学習の仕組みに沿った、合理的かつ効率の良いものです。この記事との出会いが、日本史学習を大きく変えることを約束します。
- この記事は1人の大学生の体験談ではなく、数百名の生徒に、実際に勉強法を指導してきた集大成となります。
※入試において日本史は、英語と並び確実性の高い得点源ですが、やり方次第でかかる時間に大きな差が出ます。
日本史通史一覧
1~5世紀 6世紀 7世紀 8世紀 9世紀 10世紀 11世紀 12世紀 13世紀 14世紀 15世紀 16世紀 17世紀 18世紀 19世紀 20世紀
【結論】日本史の勉強法
日本史の勉強法には、2つの柱があります。全体の学習と部分の学習です。
- 部分(ミクロ)の学習 … 高校または予備校の授業の復習。通常、数十年を1単位として、時代順に学習を進めて行く。
- 全体(マクロ)の学習 … 「通史学習」とあいまいにされがちだが、より具体的な方法論が必要。暗記用の年表を用意し、1世紀ごとに、学習してゆく。
この記事では、全体(マクロ)の学習、つまり簡易的な年表を使った、通史の学習方法を扱います。
全体の学習(日本史通史学習)のメリットとは?
- 日本史の通史の理解は、まずセンター試験の点数に直結します。センター試験は、通史の理解に重きを置いています(事件の並べ替え問題など)。
小学校以来の歴史嫌いで、ほとんど日本史の授業を受講していない人が、10時間、この記事で紹介する方法で通史学習をした事例があります。この生徒は、センター試験過去問に、1度目の挑戦で、全国平均点まであと5点に迫りました。通常なら、到達まで数百時間はかかる点数です。
- 確実な通史の理解は、国立2次の記述式で、大きな得点要素となります。さらに、通史の強固な暗記は、枝葉の知識をおもしろいうように添えることができるため、早慶などマニアックな入試問題への対応力も上がります。当然、ほかの難関私大も十分視野に入ります。
- 全体(マクロ)の学習、つまり、簡易的な年表を使った通史の勉強法は、大量の勉強時間を食う日本史学習の唯一の近道(抜け道)であり、勉強時間を数割程度にまで圧縮することが可能です。その時間を英語に割けば、好結果は見えています。
※大学受験、就職に失敗し、奨学金を返せない人が続出しています。日本史の学習時間を圧縮し、英語に時間を割くことは、この先、自由で楽しい人生を送るのか、不自由でつらい人生を送るのかの、1つの分岐点になります。
中学の授業からはじまる日本史勉強法の誤り
高校生のなかには、中学校の学習習慣が抜けきらず、受験に失敗する例が多く見られます。
- 中学校で、1回数十年単位で日本史を習う。
- 数十年の細か過ぎる単位で復習するので、全体としては記憶が混乱し、定着しない。
- 中3の高校受験期になり、結局ほとんど覚えていない。塾教材や参考書で全体像や頻出範囲を詰め込む。
- 高校でも、1回数十年単位の学習を続け、うまく覚えられない。
- 日本史の偏差値が上がらず、苦手教科になってしまう。
日本史に限らず、あらゆるものごとは、
深いところまで一気に学ぶのではなく、まず基本だけを身に付け、自信が持てたら、徐々に深い部分を学んでゆくものです。
どうせいつかは学ぶからと、深いところまで一気に身に付けた場合、知識や記憶が混乱し、短期間で消えてしまいます。定期試験前に詰め込んだ内容が、試験後にきれいに消え去っていることからも、これは分かります。
例えば、野球を教える際に、初日に、ルール学習、走り込み、素振り、バッティング練習、長打の打ち方、練習試合、公式試合をすべてやらせる指導者はどこにもいません。しかし、日本史学習においては、時代を細かく区切り、50分間の授業で、中学校の復習程度の部分から、深いところまで、一気に教えることが普通です。この勉強スタイルは、中学校から何度も刷り込まれており、間違っていると考えない生徒が大半です。こうして、日本史の苦手が作られてきています。
日本史では、全体像をつかむ学習(通史学習)と、部分をつかむ学習(授業とまとめノート)の両立が決定的に重要です。日本史で押さえるべき重要な事件・できごとは、実は300あります。この300を世紀ごとに押さえてゆくのが、必勝法となります。
日本史でまず最初に押さえるべきできごとは、300しかありません。
年表を使った通史の覚え方・まとめ方
年表を使った通史勉強法では、まず大まかな通史を把握します。各世紀ごとに、ベスト10~20程度に位置づけられる出来事から押さえてゆくのです。この基本的な通史は、できればほぼ暗唱できるレベルに仕上げます(1つをヒントに4つを数珠つなぎに出せる程度でも構いません)。各世紀ごとに、核になるできごとが押さえられたら、関連する出来事をつけ加えてゆくと、絶対に崩れない記憶のカタマリが出来上がります。
世紀ごとの事件を完全に暗唱できるレベルに仕上げるには、独自の記憶術が必要ですが、「ほぼ暗唱」というレベルでもまずは問題ありません。つぎの2つのツールを使い、用語の意味を把握したあと、穴埋め問題に進みます。
- 【特に苦手な場合】『小学館の日本の歴史』(ビリギャルの推奨)の、3巻「奈良の都」を通読。
- 参考書『石川晶康 日本史B講義の実況中継(1)』8~12回をつまみ食い。
注意したいのは、この学習は「全体学習(通史の勉強)」であるということ。個々の事件・できごとの詳細には踏み込まず、あくまで漠然としたイメージや、大きな流れを押さえてください。
例えば8世紀の重要事件の1つ目、大宝律令について、次のようなことが分かります。
- 『石川晶康 日本史B講義の実況中継』では、「8世紀に入ってすぐにできた基本的な法律。天皇を中心とする、中央集権的な体制のもととなる」と説明(p146~p147)。
この下調べにかけて良い時間は、1世紀分で20分程度です。あくまで全体学習(通史学習)であることを、強く意識してください。「どうせ後から読むのだから、今読んでおこう」と考えると、通史学習の際に、余計な情報が混ざりうまくいきません。また、「自分は記憶力が弱いから、因果関係や背景などを、しっかり理解しておこう」と考えると、それは部分の学習となり、通史学習の意義はゼロとなります。通史を覚えるコツは、分かったか分からないかの曖昧な用語を、まずは割り切って覚えてゆく過程です。
ビリギャル推奨『小学館の日本の歴史』(偏差値50以下、高校日本史未履修者)
ビリギャルでも推奨されている『小学館の日本の歴史』は、偏差値50以下、高校日本史未履修者におすすめです。『小学館の日本の歴史』の該当する世紀のストーリーを、時間をかけすぎずに読みます。『小学館の日本の歴史』に覚えたい事件・できごとが掲載されていなかった場合、実況中継と(合計で20分程度)。
定番『石川晶康 日本史B講義の実況中継』(偏差値50~60)
日本史の参考書の定番となった『石川晶康 日本史B講義の実況中継』は、講義口調でまとめられた、分かりやすい参考書です。通史学習に使う場合は、あまり読み込まず、重要な事件・できごとの用語のイメージや大きな流れを漠然と押さえるようにします。用語が見つからないときは、巻末の索引を利用します。通史学習で使用する場合は、1世紀あたり20分程度しか時間をかけません。
10分の予習のあと、年表を暗唱に近いレベルに仕上げよう
例えば、8世紀の通史学習をする場合、以下の事件・できごとを、ほぼ暗唱レベルに持ってゆきます。
日本史通史ベスト300 8世紀 |
---|
701 大宝律令制定 |
708 和同開珎鋳造 |
710 平城京遷都 |
712 『古事記』成立 |
718 養老律令制定 |
720 『日本書紀』成立 |
723 三世一身法制定 |
729 長屋王の変 |
740 藤原広嗣の乱 |
741 国分寺建立の詔 |
743 墾田永年私財法制定 |
743 盧舎那仏造立の詔 |
752 東大寺大仏開眼供養 |
757 橘奈良麻呂の乱 |
764 藤原仲麻呂(=恵美押勝)の乱 |
766 道鏡,法王就任 |
792 健児の制 |
794 平安京遷都 |
手順は、以下の通りです。
- 『日本史講義の実況中継』などで、イメージがわかない用語を中心に、20分程度で下調べ。
- 40分間程度のイメージで、穴埋め問題を繰り返し完成させる。
- 40分間の使い方は、集中して10分 → 1時間後に10分 → 寝る前に10分 → 翌朝10分 のようなインターバルな流れが理想です(以降は1週間毎にメンテナンス)。暗記モノは、一気に時間を使うと、結局10倍程度の時間がかかります。時間を分割して使うことが、最大の必勝法です。
穴埋めテストは、次のように作ると良いでしょう(年号は覚えなくても構いません)。
1回目 | 2回目 | 3回目 |
---|---|---|
701 大宝律令制定 | 701 大宝律令制定 | |
708 和同開珎鋳造 | ||
710 平城京遷都 | ||
712 『古事記』成立 | ||
718 養老律令制定 | ||
720 『日本書紀』成立 | 720 『日本書紀』成立 | |
723 三世一身法制定 | ||
729 長屋王の変 | ||
740 藤原広嗣の乱 | ||
741 国分寺建立の詔 | ||
743 墾田永年私財法制定 | 743 墾田永年私財法制定 | |
743 盧舎那仏造立の詔 | ||
752 東大寺大仏開眼供養 | ||
757 橘奈良麻呂の乱 | ||
764 藤原仲麻呂(=恵美押勝)の乱 | ||
766 道鏡,法王就任 | 766 道鏡,法王就任 | |
792 健児の制 | ||
794 平安京遷都 |
実際に日本史未履修の生徒にやってもらいました
実際に、日本史未履修(受験科目は政治・経済。日本史は嫌いで、高校の授業はほとんど覚えていない)の生徒に、8世紀の通史学習をやってもらいました。
まず、20分間を使い、『石川晶康 日本史B講義の実況中継(1)』8~12回をつまみ食いし、用語のイメージと大きな流れをつかんでもらいました。そのときに、何を考えていたのかを聞き出した内容です(正確な史実の把握でありません。暗記は、正確さ・細かさを捨てることが重要です。
- 8世紀は簡単に言えば。平城京ができ、きちんとした日本政府がはじめでできた時代だと思いました。
- 国づくりのベースは、やっぱり法律と予算ということで、大宝律令、和同開珎が作られた。律は、政経で言うと刑法で、令は民法とかみたいです。
- そのあとに国がやるとしたら、国民をまとめるための物語作り。それが、古事記と日本書紀。最近は言わなくなったけど、安倍首相の美しい国日本を守れ的な話に似ていると思いました。
- それで、詳しくは分からなかったけど、田んぼが不足して、三世一身の法ができた。そのあと、天皇家の力が下がり、今だと国家公務員にあたる、藤原一族がパワーアップ。長屋王の変は、邪魔者の排除で、そのあと藤原広嗣の乱。ここは、何となく長屋(=1階建ての横に長い木造のアパート)は広いっていうイメージにしました。
- 結局、権力争いは収まらず、田んぼも足らなくなって、お祈り的な意味の国分寺建立の詔、東大寺大仏開眼供養と墾田永年私財法。ここは、国分寺→墾田永年私財法→東大寺の順だから、2つの寺の間に田んぼがあるイメージです(笑)
- お祈りの効果もむなしく、権力争いは続き、橘奈良麻呂の乱と藤原仲麻呂の乱。ここは時間がなくなって、適当です。
- 最後は唐突に、藤原氏でなく、道鏡というお坊さんが権力を持って、健児の制は時間がなくなって、道鏡の健康な児童でいいやと(笑)
- 泣くよ(794)坊さん平安京は、さすがの僕でも知ってました。
『石川晶康 日本史B講義の実況中継(1)』8~12回をつまみ食いした、下調べの様子です。
この生徒の下調べの優れた点は、以下の通りです。
- 全体も用語も、時間を意識し「ざっくり」とした把握に留めている。
- 政経の知識など、持っている知識と関連づけ、自分の力で考えている。
- 時間がない場合は、場所のイメージで記憶している(長屋は広い、2つの寺の間に田んぼがあるイメージ)。
- 用語の詳細に踏み込まず、字面に慣れようとしている(ここは時間がなくなって、適当)
- 語呂合わせも多少利用(道鏡の健康な児童)。※ただし語呂合わせよりも、場所の記憶のほうが、人間の脳は得意です。
穴埋めテストを。1・2・3回の順に、合計10分間でやってもらいました。具体的には、テスト→答え合わせを3回繰り返します。通史の学習では、用語は、おおざっぱに把握できていれば正解としてください。
1回目 | 2回目 | 3回目 |
---|---|---|
701 大宝律令制定 | ○ 大宝律令制定 | 701 大宝律令制定 |
○ 和同開珎 | 708 和同開珎鋳造 | ○和同開珎 |
710 平城京遷都 | ○平城京遷都 | ○710 平城京遷都 |
○古事記 | 712 『古事記』成立 | ○古事記編纂→成立 |
718 養老律令制定 | × 三世一身の法 | ○養老律令制定 |
○日本書紀 | 720 『日本書紀』成立 | 720 『日本書紀』成立 |
723 三世一身法制定 | × | ○三世一身法制定 |
○長屋王の変 | 729 長屋王の変 | ○長屋王の変 |
740 藤原広嗣の乱 | ○藤原広つぐの乱 | ○藤原広嗣の乱 |
○国分寺建立のみことのり | 741 国分寺建立の詔 | ○国分寺建立の詔 |
743 墾田永年私財法制定 | ○墾田永年私財法 | 743 墾田永年私財法制定 |
× | 743 盧舎那仏造立の詔 | ○ルシャナ仏 → 盧遮那仏 |
752 東大寺大仏開眼供養 | ○大仏開眼 | ○東大寺大仏開眼の儀 → 開眼供養 |
× | 757 橘奈良麻呂の乱 | ×橘??の乱 → 奈良麻呂 |
764 藤原仲麻呂(=恵美押勝)の乱 | ×藤原??の乱 | ×藤原??(??吉勝)の乱 → 仲麻呂(=恵美押勝) |
○道鏡 | 766 道鏡,法王就任 | 766 道鏡,法王就任 |
792 健児の制 | ○健児の制 | ○健児の制 |
○794 平安京遷都 | 794 平安京遷都 | ○794 平安京遷都 |
ちなみに、ある日本史未履修者が、この方法での学習を、6~18世紀まで終わらせた上でセンター試験を解いたところ、平均点まで5点に迫った実績があります。かけた時間は、10時間程度でした。通常の学習法なら、半年程度かかるはずです。
通史の勉強法はやり方を覚えれば簡単かつ効果は無限大
いかがでしょうか? 日本史の暗記事項は大量にあり、どこから手をつけてよいか分からなくなりがちです。しかし、日本史全体の重要事項は300個。8世紀には、18の重要事項があることが分かると、学習がかなり楽になります。そして、やり方に工夫すれば、8世紀の重要事項を大まかに暗記するのは、10分程度で済みます。
10分程度かけたあとは、1時間後、寝る前、翌朝の最低3回は再テストします。合計所要時間は40分程度。人によっては、白紙に書ける段階まで仕上がります。
そして、覚えた用語に関して、スタディサプリで知識を増やしてゆきます。すると、脳内記憶に、木の幹や太い枝ができてきます。このあと細い枝や葉をつけるのは意外に簡単。人の記憶は樹形図の形が最も効率が良いので、おもしろいように記憶が増えていきます。さらに、難関大や早慶レベルの「葉」にあたる知識をつけることもできます。
なんだ、樹形図の記憶法かと思われた方がいらっしゃると思いますが、そうではありません。樹形図の日本史学習は、単に「重要なことに、そうでないことを関連づけなさい」と漠然と指示されるだけです。当記事のおすすめする方法では、例えば8世紀には18の基本事項がありますと明確に示し、使うべき参考書・アプリ、小テストの方法まで一貫して提示しています。
スタディサプリを利用の場合は、『高3 スタンダードレベル日本史 』
日本史の重要事項に、枝をつけてゆくなら、スマホから受講できるスタディサプリがおすすめです。月980円で、全受験教科1万の講義が視聴できるアプリです。現在は、14日間の無料体験がついています。
通史学習に『高3 スタンダードレベル日本史 』を使用する場合、全て聞くのではなく、なじみのない事件・できごとを中心に、1世紀あたり最大60分程度でつまみ食いをしてください。
公式サイト:【スタディサプリ】動画授業で苦手を克服
(まとめ)日本史通史の覚え方・まとめ方と通史勉強法
最後に日本史の勉強法をまとめます。
日本史の勉強法は2本柱です。
- 全体の学習 … 年表(日本史重要事項ベスト300)を用い、1世紀あたり2時間を目安に学習(下調べ20分、記憶10分×4回、知識の追加60分)。
- 部分の学習 … 授業50分、まとめノート50分、問題演習20分の2時間が基本。
合格までの道筋は以下の様になります。
- 初期(偏差値目安57まで)… 全体の学習と部分の学習を並行。全体の学習は、自分のペース。部分の学習は、高校や予備校のペース。ときどき、単元・時代別の基本問題集にチャレンジし、知識のメンテナンス。
- 中期(偏差値58~62)… 全体の学習と部分の学習を並行しつつ、問題集(単元別・時代別)を進める時間を徐々に増やす。問題集は、知識の確認、弱点の補強、知識の発展、角度を変えた知識の検証。
- 入試直前期(偏差値63以上)… 単元や時代のくくりがない、入試問題演習を軸に、早慶・難関大で狙われる細かい知識を攻略したり、国立2次の記述対策を行い深めたりしてゆきます。
日本史通史ベスト300 リスト
1~5世紀 6世紀 7世紀 8世紀 9世紀 10世紀 11世紀 12世紀 13世紀 14世紀 15世紀 16世紀 17世紀 18世紀 19世紀 20世紀
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