この記事では、幼児教育・保育学部の就職状況、志望理由書、学ぶ内容をわかりやすく説明します。
幼児教育・保育学部の落とし穴
幼児教育・保育学部は、つぎの資格をめざします。近年は、就職活動を有利にするため、複数の資格をめざす人も増えています。
- 幼稚園教諭(=幼稚園の先生)
- 保育士
- 小学校教諭
幼児教育・保育学部は、学部全体の中では、専門系の学部(専門的に学び 特定の進路を目指す学部)に属します。なお、幼稚園教諭や保育士は、大学以外に、短期大学や専門学校からめざすこともできます。
専門的に学び 特定の進路を目指す「専門型学部」
- 理科系(大学) ・工学・医歯薬・農学(・理学)
- 教育系(大学) ・小学校教諭
- 家政・生活科学系 ・保育・幼児教育・栄養・福祉
- 看護・医療系 ・看護・リハビリ・臨床検査・放射線・歯科衛生
自由に学び 幅広い進路がある「総合型学部」
- 人文系(大学) ・歴史学・文学・哲学・人類学・心理学・外国語学
- 社会系(大学) ・経営学・経済学・政治学・社会学・商学・法学
(注)学部分野は代表的なもののみ掲載しています。
幼児教育・保育学部をはじめとする、専門系の学部の長所は、次の通りです。
- 入学後、周囲も同じ目標であり、迷うことが少ない。
- 学校側も、全員の目標(資格、技術、就職)が似ているため、丁寧な指導が可能。
- 就職を前提とした内容を学ぶため、就職率は高い。
幼児教育・保育学部をはじめとする、専門系の学部の落とし穴は、次の通りです。
- 総合型学部と異なり、授業(講義)の幅が狭く、自由に選べないため、入学後合わないとわかると、つらい日々が続く。
- 授業(講義)の中身が濃く、復習は絶対に必要で、宿題も多い。また実習は、欠席するとついていけなくなるため、1時間も休むことができない。
- 将来の目標がはっきりしているか、学部で得られるものを明確に理解していないと、継続できないことが多い。
幼児教育・保育学部の就職状況
少子化の時代になっていますが、共働きの家庭が増えているため、幼稚園教諭、保育士はむしろ不足しています。また、中途退職者が比較的多いため、経験がない大学・短大・専門学校の新卒でも、就職状況は良好です。
一方、幼児教育・保育の希望者は、なぜ中途退職者(定年まで勤めずに幼稚園教諭や保育士をやめる人)が多いかを、理解しておく必要があります。
幼稚園教諭、保育士の中途退職者が比較的多い理由
- (学校側の説明)幼稚園教諭、保育士は、結婚や家庭をもつことに憧れる人が多く、30歳前後で退職してしまう。
- (あまり語られない理由)給与水準が低く、勤務内容や勤務時間も厳しい条件が多く、保育士を持っていても勤めていない人が、70万人弱いるとされる。
現役の保育士などが、安すぎる給与の改善などを訴えた。
手取り月収は、24歳、2年目で、およそ11万4,000円、28歳、6年目で、およそ14万円。 pic.twitter.com/xP1ddJuXg8— Shigeshi (@shigeshi711) 2017年1月11日
学校側の説明は嘘ではありませんが、幼稚園教諭、保育士は、外から見たイメージよりは大変な仕事であり、体力が落ちたり、家庭を持ち時間がなくなることで、退職する人も多いことは知っておきましょう。
※ただし、地域や幼稚園・保育園の種類(公立、私立、認可、無認可)などにより、待遇は異なります。
幼稚園教諭、保育士は、キツいからめざすのはやめるべきか
幼稚園教諭、保育士の待遇(給与、勤務時間)や勤続年数(勤め続ける平均年数)を知って、幼稚園教諭、保育士をめざすのを辞めようと思った人もいるかもしれません。しかし、幼稚園教諭、保育士を希望する方は、つぎに当てはまる場合が、多いはずです。
- すごく得意な教科があるわけではなく、大学の研究に興味がわかない。
- 小さな子供が好きなことは、確か。
- 幼児教育・保育以外に、やりたいことを思いつかない。
もし文系の大学に進学したとしても、短期間のうちにやりたいことが見つかり、多くの資格を取得できるかどうかは分かりません。そのため、資格無しで就職活動に臨むことになる可能性も高めです。それならば、多少待遇に問題があったとしても、幼稚園教諭、保育士の資格を持っていたほうが、有利になります。
幼稚園、保育園の違いは?
幼稚園、保育園には、次のような違いがあります。
- 保育士:母親が働きに出ており、面倒を見る人(おばあちゃん等)がおらず、保育に困っている児童に向けた国の育児保証。開園時間は、仕事に合わせて長くなりやすい。厚生労働省が管理している。
- 幼稚園:原則として、子どもを伸ばしたい人のための自由教育で、開園時間は、固定されている。文科省が管理している。
一見すると、保育士のほうが勤務時間が長いようにも見えますが、実際にはシフト制がひかれ、負担の軽減が図られています。
また、幼稚園は閉園時間がはっきりしていますが、公立などを除き、園に長時間残っての教材準備や研究を行う先生も多くいます。一方で、夏季休暇などは長く取れる場合もあります。
園によって状況が異なり、一概には言えませんが、保育士は、介護福祉士や看護師のように「交代制で年中面倒を見る人」、幼稚園教諭は「あくまで先生。教育・研究業務もある」というイメージがベースとなります。
大学・短大・専門学校はどれが良い?/幼児教育・保育
幼稚園教諭、保育士をめざす上で、必ず迷うのは、大学・短大・専門学校はどれが良いかということです。大学・短大・専門学校のどこからでもつける業界の場合、一般的な企業なら大学が有利ですが、幼稚園、保育園では必ずしもそうとは言えません。筆者は、幼稚園、保育園や、各学校の職員に事情を確認したことがありますが、幼稚園、保育園では次のような基準が一般的であるようです。
- 過去に採用した幼稚園教諭、保育士のなかで、優秀だった人の出身校を重視。
- 結局、同じ学校から繰り返し、採用するようになる。
- したがって、大学・短大・専門学校の種別よりも、伝統校が有利。
この基準から、大学・短大・専門学校は、伝統が長い学校がまず有利といえます。
- 歴史の長い短期大学、専門学校(※)。そして、歴史の長い短大がもととなる四年制大学。
- もととなる短大をもたない四年制大学。
- 歴史の浅い専門学校。
※歴史の長い専門学校は、首都圏では御三家の、彰栄保育福祉専門学校、竹早教員保育士養成所、道灌山学園保育福祉専門学校が代表例。
目安として、上の1、2、3の順で、就職に強みがあると言えます。ただし、次のような要素も考えておきます。
- 資格取得に絞り、効率よく実習中心に学ぶのが専門学校。
- 資格取得に限らず、発達心理学など、幅広く教養を身につけるのが大学(力はつきますが、ある程度勉強に慣れていることが必要)。
- 大学は、初任給が高くなるため、それに見合った人材でないと、かえって不利になる場合もある。
幼児教育・保育学部で学ぶ内容
幼児教育・保育学部で学ぶ内容には、次のようなものがあります。
- 幼稚園教諭、保育士、小学校教諭の資格取得をめざすことが目的。
- 保育・教育実習を通じて、教育技術(実践力)を身につけることが基本。
- 大学では、保育学、教育学、発達心理学、体育学など、理論も十分に学ぶ。
幼児教育・保育学部の志望理由書
志望理由書の書き方については、下の記事が参考になります(タイトルはクリックできます)。
志望理由書には、学部志望理由と、学校志望理由の両方を書くことが一般的です。学部志望理由は、通常つぎの6要素があります。
- きっかけ
- 学びたいこと
- 将来像
- 適性
- 意義
- 比較 … なぜ小学校教諭でなく、保育幼児教育をめざすのかなど。
(まとめ)幼児教育・保育学部の就職状況、志望理由書、学ぶ内容をわかりやすく
- 幼児教育・保育学部の就職状況は、良好。ただし、激務の割に給与は低めで、辞めてしまう人もいる。やる気と覚悟が必要。
- 幼稚園と保育園では、保育園の方が開園時間が長いもののシフト制を取る。保育士はチームプレーで面倒を見るイメージ、幼稚園教諭は先生のイメージに近い。ただし、互いに似ている部分も大きい。
- 大学、短大、専門学校の比較は、伝統を重視すると良い。
- 幼児教育・保育学部で学ぶ内容は、保育・教育実習を通じて、教育技術(実践力)をつけることが柱。ただし、大学では、発達心理学など学問も学ぶことができる。
- 幼児教育・保育学部の志望理由書は、きっかけ、学びたいこと、将来像、適性、意義、比較から考える。
コメント