高卒公務員 種類・収入・試験・難易度の全てを解説

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高卒で公務員受験を考えている方のために、高卒公務員の種類、収入、試験、難易度などをわかりやすく説明します。

筆者:キャリア情報系の企業と予備校講師(大学受験教務部長)を経験。現在は、年に80校前後の高校で講演を行なっています。

高卒公務員は勝ち組? 年収と手取りの給料は?

公務員は、高校卒業時にめざすことも、大学卒業時にめざすこともできます。試験は別々のものとなります。

高校卒業者向けの試験は、年齢制限(地方公務員は20歳が多い)があるため、大学卒業時には受験できません。大学卒業時は、試験内容が高度になり人気も集中するため、高校在学中に準備を進めた人は勝ち組とも言われます。一方、高卒の公務員は給料が安く負け組という人もいます。

人事院の資料によると、高卒の国家公務員の初任給は約14万円です(平成23年12月)。高卒の地方公務員は、さらに約2万円安くなります。

種別初任給初任給(23区)規定
総合職試験(院卒者試験)203600円240248円2級11号俸
総合職試験(大卒程度試験)181200円213816円2級1号俸
一般職試験(大卒程度試験)172200円203196円1級25号俸
一般職試験(高卒者試験)140100円165318円1級5号俸

高卒のフリーターと比較するとどうでしょうか。

  • 高卒フリーター:月給は16万円(時給千円、週5日、8時間労働)
  • 高卒地方公務員:初任給は12万円前後。

このように、高校時代に試験勉強を重ねた公務員が、フリーターに初任給の面で負けてしまうことから、負け組とも言われます。

しかし、公務員には、条件を満たせば住居手当、通勤手当、期末手当、勤勉手当等が支払われ、規定にあるように努めれば務めるほど給与の階級が上がっていきます。フリーターは、給与があまり上がらないうえ、30歳を超えると求人自体も減りますので、公務員が圧倒的に有利だと言えます。

大卒で公務員を受けるか、高卒で公務員を受けるか

人事院の資料によると、高卒の国家公務員の初任給は約14万円ですが、大卒の場合は17〜18万円に上がります(平成23年12月)。このことから、高卒で公務員をめざすか、大卒で公務員をめざすか、迷う人もいるでしょう。

2016年に、大卒公務員の合格者が多く出た大学は、以下の通りになります(大学通信による)。

  • 1位 日本大学、2位 立命館大学、3位 早稲田大学、4位 金沢大学・中央大学、6位 広島大学、7位 愛知教育大学、8位 新潟大学、9位 千葉大学、10位 文教大学

日本大学は卒業生が多いことから公務員になる人の数が多く、公務員になる率は、就職者のなかの7%で少な目。文教大学は、教員として公務員になる人が多くなります。

そのため、大まかにいえば、大卒で公務員試験に合格し実際に採用されるのは、MARCH国立レベルの学生がメインであることがわかります(警察官・消防官・自衛官はもう少し難度が下がり、国士舘大学などからも多数合格しています)。MARCHレベルの大学の偏差値は60前後。確実に合格するには、高校の偏差値が65以上が目安となります。

そのため、個人差はありますが、以下のように考えることもできます。

  • 偏差値65以上の高校に在学中なら、学力から考えて、大学進学後の公務員試験合格も可能。大卒の学歴を確保しつつ、民間と公務員を比較しても良い。
  • 標準レベルの高校に在学中なら、高卒公務員を狙うのも有力な選択肢。ただし、公務員になったあと、辞めて民間に転職するのは、学歴の条件から困難な場合も。

そもそも公務員とは?

そもそも公務員とはどんな仕事なのでしょうか? 民間企業と公務員の違いは、以下のように表現できます。

  • 民間企業:利益を出すことを主眼にすべての活動を行う。
  • 公務員:利益を出すことが難しい仕事を担当する。

例えば民間企業では、利益にならない商品は、どんなに良い商品でも売り続けることができず、多少問題がある商品も、売り上げのためには販売せざるを得ません。本当にお客のことを考えると、やりづらい面があります。

一方公務員は、災害への備え、暮らしが安定しない人への支援、地道な町づくりなど、すぐに利益にはならないものの、非常に社会貢献性が高い仕事を担当します。ただし、前例が重んじられ、創造力が発揮できず、転職が難しいという制約もあります。

このような違いを考慮して、民間企業と公務員を比較してゆきます。

高卒公務員の種類は?

公務員には事務系の職種と、公安系の職種があります。

事務系職種
①省庁職員、税務署職員、裁判所職員など(国家公務員)
②都道府県職員・市町村職員・東京23区職員(地方公務員)

公安系職種
①海上保安官、入国警備官、皇宮(こうぐう)護衛官、刑務官、衆[参]議院衛視、自衛官など(国家公務員)
②警察官(各都道府県)、消防官

多くの高校生が受験する公務員資格は、以下のようになります。

・都道府県職員[一般事務、警察事務、学校事務に分かれる場合も]
・市町村職員、東京23区職員
・自衛官[一般曹候補生、自衛官候補生]
・警察官、女性警察官(身体基準あり)
・消防官

トラブルによる転校や高校受験のでの併願都合もあり一概には言えませんが、偏差値45以上の高校の生徒は、積極的に都道府県職員や市町村職員を狙ってくるはずです。例えば東京都で偏差値46の普通科高校に、足立高校がありますが、平成26年度に東京23区職員に合格者を出しています。一方、偏差値が少し下の足立西高校は、自衛官や警察官への合格者のみ輩出しています(平成26〜29年度)。

簡単に言うと、進学校の生徒は国家公務員(自衛官を除く)を十分狙え、偏差値45付近から都道府県、市町村、23区の事務職が視野に入り、そこを下回ると自衛隊、警察官、消防官の公安職が多い傾向があります。もちろん、トラブルによる転校や高校受験のでの併願都合で、高校の偏差値より能力が高い生徒もおり一概には言えません。

※工業高校など実業高校からは、公務員技術職へ応募する道があります。

高卒公務員の試験科目

高卒公務員の試験科目は、1次試験、2次試験に分けられます。

  • 1次試験 … 教養試験(=高校教科+知能テスト)、作文試験
  • 2次試験 … 面接試験

※1次試験として、事務系で適性試験、技術系職種で専門試験が実施されることがあります。2次試験には、身体検査が含まれます。また、公安系職種では体力試験があります。

教養試験は、簡単に言えば①高校教科と②知能テストからなります。

教養試験とは?
①知識分野    … 社会科学(政治、経済、倫理、時事問題)/人文科学(日本史、世界史、地理、文学芸術、英語、国語)/自然科学(数学、物理、化学、生物、地学)
②知能分野  … 文章理解、判断推理、空間把握、数的理解、資料解釈

知識分野は、科目数が多く負担を感じるかもしれませんが、学ばない高校生も多い倫理を出題から除く採用試験もあります。また、各教科の出題内容は、例えば国語で常識的な敬語の問題が出題されることがあるように、基本的なものです。苦手な生徒が多い数学も、出題範囲は絞られており、問題集を購入ししっかりと対策すれば、十分に対策は可能です。

作文試験の出題例
・東京の魅力を世界に発信するために私がやってみたいこと(東京都職員)
・これまでにあった苦労したことをどのように乗り越えたか。また、その経験を警察官としてどう生かしていくか。(埼玉県警)
・社会人としての心構えと行動について、あなたの考えを具体的に述べなさい。(東京都消防庁)

将来像や、高校生活を振り返る内容が多くなります。

都道府県、市町村、東京23区の事務職を希望する場合、仕事内容は多岐にわたり、しかも希望する職種に配属されるとは限りません。それでも、希望の役所の仕事内容をよく調べ、配属を希望したい職種をいくつか挙げられるように準備しておきましょう。

面接試験の出題例
・志望理由
・職業像
・自己PR
・高校生活
・友人関係
・社会への関心

自己PRは、取得した資格、継続して行った活動(部活動、生徒会、委員会、係、地域、ボランティア、コンテスト、留学、勉学等)、長所の3ジャンルから、2つ程度は準備しておきます。

また、公務員は、どの職種でも社会と関わると言う点が特徴となります。新聞を毎日1年以上は読み通す経験が必要です。

高卒公務員の試験日程

高卒公務員の試験日程は、平均的には以下のようになります。

  • 6月下旬 受験申込
  • 9月 教養試験、作文試験
  • 10月中旬 合格発表
  • 10月中下旬 人物試験(面接試験)
  • 11月中旬 合格発表
  • 11月下旬 採用内定

実際には、採用試験により微妙に前後しますが、高校によっては進路室に地元の公務員試験の日程が掲示されています。日程が重ならない試験は、併願が可能です。

高卒公務員の難易度と倍率

高卒公務員の倍率は、受験する試験や地域により差がありますが、倍率5倍前後が多くみられます。

高校のレベルで考えると、偏差値45程度以上の高校からも、数は少ないものの事務系職種(都道府県庁、市町村役場、23区役所)への合格は出ています。それ以下の場合は、公安系職種(自衛官)への合格が多い傾向です。自衛官を除く国家公務員を受験する場合、大学進学が多数を占める進学校のレベルが必要です。

ただし、どの高校にも、転校や高校受験時の併願の都合、あるいは中学生のさいに能力の割に内申が取れなかったという生徒がいますので、偏差値だけから判断しないようにしてください。一方、公務員は定年まで安定が保証されるため、高校生の中でも上の方の層が受験してくることは確かです。在籍する高校から、過去に事務職(都道府県庁、市町村役場、23区役所)への合格が出ていない場合、やはり合格は厳しいとも言えます。

公務員試験を甘く見ることもしてはいけませんし、最初から諦めることもしてはいけません。不合格時にどうするのかを保護者と相談しつつ、後悔のない圧倒的な勉強量で試験に臨むことが重要です。

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