
大学理系に進むには、奨学金は月にいくら借りればよいのでしょうか? 学費の相場や、保護者が借りる国の教育ローンも含め、キャリアコンサルタント(国家資格)がお答えします。
当ブログは、Amazon等のプロモーションリンクを含む場合があります。
筆者は、大学広報関連の業務も経験しています。
大学理系 高3秋の支払いは90万8000円!

私立大学理系の学費の平均額は、下の通りです。最初の支払いは、早いと高3の秋(合格から1~3週間以内に銀行振り込み)。授業料と施設設備費の後期分は後払いでもよい大学が多く、その場合、高3秋に平均90万8000円の準備が必要です!
入学金 | 授業料 | 設備施設費等 | 初年度学費合計 | |
私立大学文系 | 22万5000円 | 81万5000円 | 14万8000円 | 118万8000円 |
私立大学理系 | ①25万1000円 | 113万6000円 [②前期分]56万8000円 | 17万9000円 [③前期分]8万9500円 | 156万6000円 [①+②+③]90万8000円 |
専門学校 | 18万3000円 | 69万5000円 | 39万9000円 | 127万6000円 |
国立大 | 28万2000円 | 53万5000円 | 学校による | 81万7000円 |
※(私立大)文科省2021年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額調査。私立理系に医歯薬系(初年度学費合計489万円)は含みません。私立短大は、入学金23万7000円、授業料72万3000円、施設設備16万6000円、合計で平均112万7000円。
※(専門学校)2021年度東京都専修学校各種学校協会調査統計部調べ ※(国立大)2022年度文科省令による標準額

初年度納入金や進学後の支払額(平均)は、授業料の分納制度がある大学の場合、以下のようになります。
納入時期 | 入学金 | 授業料 | 設備施設費等 | 合計 | 月あたりの額 |
高校生(3年生の秋~冬) | 25万1000円 | 56万8000円(前期) | 8万9500円(前期) | 90万8000円 | |
大学生(1年夏、2年以降は春夏の2回) | 56万8000円(後期) | 8万9500円(後期) | 65万7000円 | 10万9000円 |

子が高3の段階で初回の学費支払いがあるためか、親が学費、子が生活費という分担が一般的です(統計)。
学費は、保護者が、貯金+国の教育ローンン(子ども1人あたり総額350万円が上限、一部条件で450万円)で賄うことが多いです。通常、高3秋頃と、進学後の夏頃(後期の支払い用)に、借り入れを行います。(高3秋に、初年度分はまとめて借りても構いません)
国の教育ローンは「今後1年間で使用する額」しか申し込めないため、以降は、2年生の春、3年生の春、4年生の春に、その学年分を借りるご家庭が大半です。
卒業まで待ってもらえる子どもの奨学金と異なり、返済はすぐに始まります。しかし、すぐに返済を始めてしまうと、ローンでローンを返すような状況になりやすく、多くのご家庭は「子の在学中は利息のみ返還」という選択肢を取っています。この場合、高3の秋(借り始め)から、子が卒業するまで、月の返済額は数千円程度です。
なお、子が自宅外通学の場合、多くの家庭で、親だけで学費を負担するのが難しく、子も何割か負担することが多いです。

子が自宅外の場合 生活費・家賃+学費の3割を子が負担の場合、奨学金は月11万7000円!

自宅外から通う学生の生活費と家賃の合計額は、月に12万5000円が相場です(ライフルホームズ)。学費の3割を負担するとすると、月ごとの負担額は、下のようになります。
学費の3割の月あたりの額 | 生活費・家賃 | 合計 | |
大学理系(各学年、各月) | 3万2000円 | 12万5000円 | 15万7000円 |
大学理系生は、授業やレポートの負担が文系より大きく、とくに高学年では研究活動で時間も取れません。アルバイトは月平均4万円前後がおすすめです。そのため、次のように、設計できます。
学費(3割)・生活費・家賃 | アルバイト+奨学金 | |
大学理系(各学年、各月) | 15万7000円 | 4万+11万7000円 |

親が高3の秋の支払い、学費の7割を負担するとすると、アルバイトをしたとしても、奨学金は11万7000円程度借りなければならないと、計算できます。
なお、学生支援機構の奨学金は1万円単位のため、月12万円の借り入れとなります。うまくできているもので、学生支援機構の月の借り入れの最大額が12万円(私立大の医歯薬獣医除く)。これは、最もお金がかかる、ひとり暮らしの私立理系生を意図しているのかも知れません。
※アルバイトを「月平均」としたのは、夏休みなどに多く稼ぎ、忙しい通常期は、月2~3万円程度に抑える学生が多いからです。また、理系生は、研究室は忙しくならない、1、2年生のうちに稼ぎ切ることがポイント。さらに、院進学が多い大学もありますので、注意が必要です。
子が自宅から通う場合 生活費を子が負担の場合でも、奨学金はほぼ不要

自宅外から通う学生の生活費は、月に5万8000円が相場です(ライフルホームズ)。学費は、親が負担するとします。
大学理系生は、授業やレポートの負担が文系より大きく、とくに高学年では研究活動で時間も取れません。、アルバイトは月平均4万円前後がおすすめです。そのため、次のように、設計できます。
生活費(学費は親負担とする) | アルバイト+奨学金 | |
大学理系(各学年、各月) | 5万8000円 | 4万+1万8000円 |

子が自宅から通い、親が学費の全額を負担する場合、奨学金はそれほど必要ありません。しかし、アルバイトが学業を圧迫すると、就職に響きますので、就職率が高い理系では、積極的に奨学金を使うのも得策です。
なお、兄弟が多い、家計が大変など、事情がある場合、自宅住まいでも、子が学費の何割かを負担していると考えられ、例えば3割(月3万2000円)を負担するとすると、月5万円前後の奨学金が必要になるはずです。
大学理系生の奨学金の平均は、8万8000円前後(推定)

大学理系生の奨学金の平均額は、どのくらいになるのでしょうか?
はい。学生全体の奨学金の月額の平均は、6万8000円前後と推定されます。この平均より安く済むのが平均して年度が短い専門学校生、高くなるのが学費が高く、院進学も一定数ある大学理系生です。そのため大学理系の平均額は、3割を加算し、8万8000円前後と見積もることができます。
計算法 奨学金の借入総額は平均324.3万円と分かっています(画像、労働者福祉中央協議会)。学ぶ年数は、専門学校の1年制から、大学院まで進学する合計9年まで様々です。大まかな人数比、大学文系7:大学理系3:専門3をベースに、学ぶ年数が長い理系分を、学ぶ年数が短い専門学校分が相殺できますので、平均して4年と割り切ると、6万8000円程度と計算されます。
ただし、自宅生と自宅外生で、かなりの金額差があると推定できます。
- 自宅から通う理系生(学費は親が負担)が必要とする奨学金額 1万8000円前後
- 自宅から通うが学費を一部(3割とする)負担する理系生が必要とする奨学金額 5万円前後
- 自宅外から通う理系生(学費を3割負担とする)が必要とする奨学金額 11万7000円程度
上記の平均額(自宅生は0割負担、3割負担を平均)は、7万5000円。自宅生、自宅外生の割合は、おおむね1:1ですので、統計から予測される平均額(8万8000円)とのつじつまはおおむね合います。
奨学金の返済額の調べ方は?

奨学金でいちばんよく使われ、いちばん借りやすいのは、日本学生支援機構の第2種奨学金です(有利子、要返済)。
このほか、学力基準(成績が良いほど有利)と家計基準(家計がある程度厳しいこと)をダブルで満たす場合、第1種奨学金(無利子=返済必要)があります。私立大学の理系生の場合、2~6.4万円の範囲で、金額を選べます。また、2種と併用可能です。
また、家計が非常に厳しい(住民税非課税、またはそれに準ずる)場合、文科省の修学支援制度(学費減免+返済不要の給付型奨学金)があります。奨学金部分は、日本学生支援機構の扱いです。

例えば、ひとり暮らしの場合、奨学金は月に11万7000円前後必要と思われます(学費の3割と、生活費・家賃を、子が負担するとする)。もし4年制大学で、月12万円借りるとすると、月約2万4000円を42歳頃まで返済することになります(奨学金シミュレーターが便利)。

学生支援機構の奨学金は、高3の1学期に、高校経由で予約ができます。保護者の負担+アルバイト+第2種奨学金(有利子、要返済)で、学費、生活費(人によっては家賃)を全て負担できる額を申し込みます。
同時に、第1種奨学金(無利子、要返済)、給付型奨学金(返済不要、学費減免制度とセットで利用可)や、大学や自治体主催の奨学金、特待生などを申し込んでおき、借りられたら、第2種を減額するプロセスが普通です。
なお、保護者は、国の教育ローンの利用が一般的です。高3の秋(大学合格から1~3週後が目安)には、学費の支払いがありますので、平均して90万8000円の準備が必要です(国の教育ローンシミュレーターが便利)。
実は、就職率が重要!


奨学金を月に12万円、4年間借りると、月約2万4000円を42歳頃まで返済することになります。理系の場合、就職はしやすいことが多いですが、理学系であったり、成績が不振であったりする場合は、苦戦もありえます。
進路選択のコツとしては、(上の内容と逆のようですが)就職率を気にし過ぎず、まず自分が好きな領域を選ぶことです。理系は、講義やレポート、実験と内容がハードなため、文系のようにごまかしは効かず、適性がモノを言います。
ただし、教務が深い領域が、例えば生物の研究のように、就職先の候補に乏しい場合、早期の段階で中高理科教諭など手堅いところを選択肢に入れておく必要があります。

予備校講師経験者が、全国80の高校での指導実績をもとに説明しているため、最新・最善の合格対策が可能です!
コメント