理学部とは 就職状況、将来性、学ぶ内容を解説

      2016/04/27

理学部を検討中の高校生のために、就職状況、将来性、学ぶ内容を解説し、学生の口コミを紹介します。


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理学部の就職状況と将来性

動画は資生堂の工場です。シャンプーの容器づめなどは全て機械(産業用ロボット)が見事に対応しています。仮にこの工場でロボットが止まってしまったとします。もし理学部物理学科の卒業生と工学部機械学科の卒業生がその場に駆けつけたとして、修理ができる可能性があるのはどちらでしょうか?この現場で物理生額の知識だけでは役立ちません。工学部卒生です。

工学部は全国の工場、発電施設、鉄道や道路などの運輸関連、建設現場など非常に働き口が多いのが特徴です。一方理学部は簡単に言えば高校の理科(物理、化学、生物、地学)の応用研究をする学部で、産業との結びつきはやや弱くなります。理系の就職率の高さは工学部が稼いでいるのが実情です。

しかしノーベル賞受賞者を輩出するなど世界の科学の最先端を進むのが理学部です。物理学や数学の知識があったからこそ、機械が開発され多くの人に貢献しているのです。その意味でやりがいは決してほかに劣る学部ではありません。

理学部は、就職先で使う技術との結びつきが強い医学部や薬学部を代表とする【国家資格系】に対し、純粋に学問を究める【学問系】に分類されます。

【学問系の学部リスト】

①人文科学系統の全て ・文学 ・哲学 ・心理学 ・歴史学 ・考古学 ・文化人類学 ・外国語学 ・教育学(理系含む)
②社会科学系統の全て ・法学 ・政治学 ・国際関係学 ・経済学 ・経営学 ・商学 ・地域
③自然科学系の一部 ・理学 ・農学(院進学者を除く)

理学部のように、学んだことを将来に直接生かすというよりも、教養として学んでいく学部をこのサイトでは【学問系】に分類しています。【学問系】の学部の詳しい注意点は、次の記事に掲載されています。

日本一わかりやすい 文系・理系のための学部選び〜適性、診断、決め手〜

【1】理学部生の就職は、工学部生とは異なる

理学部とは

誤解を恐れずに分類すれば、理学部は学んだことを将来に直接生かすというよりも、むしろ(文系ほど幅広いとは言いませんが)教養として学んでいく学部と言えます。

ただし注意していただきたいのは、理学部卒の社会人に話をきいて頂くとほとんどの人が「学んだことを生かしている」と答えるはずです。しかし中高の理科の教諭や公務員を除けば、食品、薬品をはじめとしたメーカーの総合職についているケースもが多くなります。医学部、薬学部、工学部のように大学で学んだことをダイレクトに生かしているかというと微妙な部分があります。

例えば就職率が芳しくないことが比較的よく知られてきた理学部数学科卒業生は、銀行への就職が比較的目立ちます。これは確かに大学で学んだことを生かしてはいるのですが、銀行で微積などを利用するわけではありません(むしろ和差積商が中心)。銀行が数学科を採用するのは、桁が大きな数字や数字に埋もれた職場環境への適性があり、数字にアレルギーがないという部分が大きいでしょう(もしかしたら企業の財務に関して、私情を挟まずシビアに判断できると思われているのかもしれません)。業務のうち国公立文系でも対応できる部分も多いはずで、これは悪いことではないのですが、医学部、薬学部、工学部(とくに機械科、電気科)卒業生に比べれば「独占できる仕事」がない点で、職を守り給与を上げていく点では多少不安も残ります。

つまり理学部卒の場合は、ほんとうに学んだ内容を生かすとしたら中高教諭か大学、企業の研究職しかないのが実情です。そして多くの理学部生が少ない枠に殺到しています。中高の理科教諭は、国語や社会よりは広き門ですが、高校教諭なら大学院卒も多数応募してきますので学部卒では限界があるかもしれません。

しかし大学や大学院で大好きな数学の難問を存分に解き、就職は手堅く銀行というコースも悪くありません。機械や電気に興味がないのに工学部に進んでも長続きしませんし、仕事も面白くないはずです。

【2】理学部と工学部との違いを知る

理学部の工学部との違いは上述しましたが、「理工学部」とひとくくりにして考えている方もいます。理学部との違いは改めてしっかりと理解しておく必要があります。

工学部 … (物理や化学を土台にしながらも)モノづくりに生かせる形の実践的な技術を身につける。

理学部 … 高校の教科である「物理」「化学」「数学」「生物」「地学」の延長線上で高度な研究を行う。

 

少し難しい言い方をすると、理学部ではそれが実際にお金を生む技術になるかを度外視して、学問発達のための「基礎研究」を行います。ノーベル賞候補になるのは原則として工学系に比べ、画期的な発見を伴う理学系の研究者です。逆に言えば、少数の日の目を見る研究の背後に、多数の賞賛すべき屍(しかばね)が積み上げられている世界です。塾講師などをしながら、研究員として大学に残っていたら40歳になってしまったという人もいます。小保方晴子さんも理学系ならではの苦労を重ねられていると思います。

「小保方晴子の再起写真集」について(外部サイト)

【3】理学部は大学単位で学科をよく調べる

理学部 就職状況

高校の普通科、商業科、工業科は学ぶ内容は高校間で大きな差はありません。しかし大学はどの学部を選んでも大学間で大きな差があります。教授一人一人が狭い研究分野を持っているからです。そして理学部は就職状況がやや微妙な面があるため特に詳しく調べる必要があります。

理学部は工学部ほど具体的な産業に結びついていません。しかし物理学や数学の延長線上に機械やロボットがあるように、理学でも応用的な研究は工学に隣接しています。また「化学」は比較的産業との接点を持ちやすいという意見もあります。大学見学の際、学科での具体的な研究内容をよく調べ、できれば各「研究室」の就職状況を聞き出すとよいでしょう。

細かい就職状況については入試課の先生はあまり詳しくなく、また立場上「この研究室は就職は苦しい」とは言えません。そのため何度も通い、教授や大学生(大学院生)に声をかけるのがカギです。とくに体験授業のある日には教授が壇上に上がりますので質問のチャンスです。入試科の先生に比べ、教授(準教授、講師)は教育者の思想を持つ人が多く本音で教えてくれます。

【4】理学部で目指すことができる主な資格

理学部で目指すことができる資格の一例を挙げます(富山大学の場合、生物学科は省略)。

物理学科 … 物理が好きな人向け。物理学と結びつきが深い➡工学部と比べると資格の種類は大きく減ります。

中学校教諭1種免許状(理科)
高等学校教諭1種免許状(理科)
学芸員

化学科 … 化学が好きな人向け。物理学科と比較すると、実際の産業に関わる資格も目標にできることが分かります。

中学校教諭1種免許状(理科)
高等学校教諭1種免許状(理科)
学芸員
危険物取扱者(甲種) ※
毒劇物取扱責任者 ※
放射線取扱主任者 ※
X線作業主任者 ※

生物圏環境科学科 … 生物が好きな人向け。

中学校教諭1種免許状(理科)
高等学校教諭1種免許状(理科)
学芸員
危険物取扱者(甲種) ※
公害防止管理者 ※
環境計量士 ※
毒劇物取扱責任者 ※
放射線取扱主任者 ※
潜水士 ※
小型船舶操縦士 ※

数学科 … 数学が好きな人向け。学んだことを直接生かすのは教諭または大学に残り研究者となるぐらいしかなく厳しい道ではあります。

中学校教諭1種免許状(数学)
高等学校教諭1種免許状(数学)
情報処理技術者 ※

地球科学科 … 地学が好きな人向け。資格の数は少な目になります。

中学校教諭1種免許状(理科)
高等学校教諭1種免許状(理科)
学芸員

※資格試験の受験が必要となります。

(まとめ)工学部とは

・工学部と比べると産業界への結びつきが弱く就職はやや不利。

・学んだことを生かす道として中高の理科の教諭がある。研究者は狭き門。

・学んだことを間接的に生かす形で、食品・薬品メーカーなどへの総合職としての就職も多い。

・理学の範囲でも工学に近い分野や就職状況の良い研究室もあり、大学の学科とくに研究室について調べることが必要。

【5】理学部の研究例〜脳内にあるアンテナ〜

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皆さんは「宇宙空間は地球とちょっと違うようです。地球の空間はどうなっているのですか?」と宇宙人に尋ねられたらどう答えますか?

「縦と横と奥行きがあります」と答える人が多いかもしれません。しかしもし広大な砂漠に暮らしている虫から見たらどうでしょうか?また別の空間のイメージがあるでしょう。ずっと砂漠に暮らす人は、日本人と少し異なる空間把握をしているかもしれません。また、視力が弱いコウモリなどはさらに別の空間のイメージを持っていると思われます。

実は空間のかたちは実際に存在するのではなく、あくまで人の脳が作ったイメージに過ぎないのです。では人は空間のイメージのもとになる外界の情報をどのようにつかんでいるのでしょうか?

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出典:RIKEN BSI NEWS

研究の結果、見た目もアンテナに似たアンテナの役目をする細胞が小脳にあり外界からの情報を捉えていることがわかりました。名称は「ブルキンエ細胞」と呼ばれ、驚くことにこれがひとつの細胞なのです。このたった1つの細胞が、同時に最大15000もの情報を処理しています。

そしてこういった複雑な細胞も、シンプルな細胞ももとはといえば全く同じ細胞から形成されています。するとES細胞(現在は人工多能性幹細胞が中心)からも作ることができそうですが、長い間それは困難とされてきました。しかし平成22年に京都大学と企業の共同研究で初めてES細胞から「ブルキンエ細胞」を作ることに成功したのです。マウスに移植する実験では、多くの細胞が小脳で「ブルキンエ細胞」に成長を遂げました。この研究を進めていけばいつかは、「脊髄小脳変性症」などの移植治療法の開発につながるかもしれません。

このように理学は、すぐに社会で役立てることができる技術を学ぶわけではなく、いつかは花開くかもしれない「種」にあたる研究を続けています。しかし想像以上に芽が出ない種も多く、仮説の誤りや実験の失敗はつきもので、実用化に成功したとしても何十年とかかることもあります。そのようなリスクや困難を承知で理学に打ち込み新しい発見という夢を追う人も多く存在します。

【6】理学部生の口コミ

物理学科の物理は高校の物理とは次元が違う。覚悟が必要。3分の2くらいが大学院へ進学。(東京理科)

今、私は「平面で成り立つ定理(三角比の余弦定理等)が単位球面上で成り立つか」の研究をしています。例えば、球面上の余弦定理         cos(∠BAC)=(cos(AB)cos(AC)-cos(BC))/(sin(AB)sin(AC))です。(数学科)

一般的な理系の大学は毎週実験のレポート等の提出に追われますが、情報科学科はほぼレポート提出をする実験(授業)がないので、かなり自由に使える時間が増えます。(東邦―理・情報科学)

男女比がほぼ5:5という噂だったのですが、理学部ではなく薬学部に大半の女子がいるという事実にショックを受けました。それはさておき、地図や写真などを縮小コピーし、元の写真上にはみ出さないように置くと、どのような置き方をしても必ず1点重なる場所があり、2点以上の点で重なることはないことがわかります。このように重ねる操作で全く動かない点を「不動点」といい、その不動点をHilbert空間上の非線形写像について探す研究をしています。(東邦―理・情報科学)

数学の定義定理公理は、高校の公式とは次元が違い頭の良い人にしかわからない。証明の答案が正しいかどうかを判定できるコンピュータを作っている人がいる。(千葉)

文系が中心の大学なので、文系のいろいろな人と関わることが出来るのがメリットだが、やや肩身が狭いし設備面は不利だと感じる。また、他大学に比べ研究の選択の幅が狭いので入学前に調べたほうがよい。分子の研究者は多い。(立教―理)

豊島区内の小中学校を訪問し、理科や数学を教える授業がある。私は、中学校に出向きDNAの抽出実験をした。理科離れを防止するのも目的。(立教―理)

音や画像をベクトルで解析する研究をしています。(東邦―理・情報科学)

留年率が高い。平均卒業年数は4.4年。(順天堂大―理)

卒論がありません。大学院までいって当然だよね、というカリキュラムになっているため、学部生レベルでは論文が書けないからだと思います。また、同じ学部の他の学科とはキャンパスが違うため、他の学科との交流がほとんどありません。学部卒では半数以上が院に進学するため、「就活する」という雰囲気が一切ありません。学科としても就職を支援する気があまり無く、例えば学科主催の就職説明会が一度ありましたが、必修の講義と時間が重なっていました。基本的には「自分で何とかしなさい」というスタンスのようです。(東京―数学)

物理に関してはレベルの高い教授がそろっている(高すぎると思う教授も)。1年生のうちからレポートが多く、教職は取りづらい。(千葉―理・物理)



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