【例文あり】慶應通信 志望理由書の書き方

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慶應義塾大学 通信教育課程の志望理由書の書き方や、出題の狙いに沿った合格対策について、元予備校講師が説明してくれます

慶應通信制の志望理由書の出題の狙い

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慶應通信制の書類は、3種類あってちょっと特殊だと思うのですが、どのような狙いなんでしょうか?

1.志望した学部・類で何を学ぼうとしているのか、①過去の学習体験、②将来の展望、のいずれにも触れながら、具体的に述べなさい。(720字以内)

2.自分の学びたい学問領域に関わる書籍を一冊選び、概要を簡単にまとめた上で、自身の視点から詳しく評論しなさい。(720字以内)

3.なぜ慶應義塾大学の通信教育課程を選んだのか述べなさい。(150字以内)

はい。ほかの大学では3の志望理由がメインとなりますが、慶應通信制では字数が少なく、「何を学ぼうとしているのか」の字数が多く、1番目に記載されていることに注目してください。

慶應通信制は、通信制かつハイレベルという特徴を持ちます。大学側としては「学歴を得るために入学をしたい」と考える受験生は採用したくない。あくまで、学びたい具体的な目標があるという受験生を採用したいということです。

具体的には、自分自身が書く卒業論文(卒論)のテーマを漠然とでも構わないので意識し、ズバリ「この講義またはこの教授を重視し、こういった勉強をしたい」ということを書き切れるかが合否の分かれ目です。

  • 落ちる 英語圏の文学について幅広く学びたい。
  • 落ちる 法律の基礎を身につけたい。
  • 合格する 都市経済学を中心に学び、地方の活性化を考える素地を身につけたい。
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なるほど! でも難しい学問の話はまだ分からないので、どうやって書いたらいいのでしょうか?

はい。それは、このあと分かりやすく説明します。なお、慶應通信制の合否判定の基準は部外秘ですが、恐らく1番(何を学ぼうとしているのか)が最も重視されていると考えられます。

慶應通信部の卒論は、字数が10万字前後という情報も見られ、他大よりも相当厳しいです(卒業率も低め)。2番(学問領域に関わる書籍)は、レポートや卒論の作成能力、国語力を測る設問で重要ではありますが、1番がしっかりしていることが前提になると考えられます。

なお、3番( なぜ慶應義塾大学の通信教育課程)は「ほかの大学にないもの」を書けばよいです。なぜなら、一般的な志望理由書の要素は、①きっかけ、②将来像、③学びたいこと、④ほかの学校にないものであり、②③は1番で指示があるからです。(きっかけについては、慶應義塾卒業生や学問の専門家、高校の先生などからのおすすめなど、ぜひ書きたいことがあれば3番に書きます)

【書き方、調べ方】1.志望した学部・類で何を学ぼうとしているのか

1.志望した学部・類で何を学ぼうとしているのか、①過去の学習体験、②将来の展望、のいずれにも触れながら、具体的に述べなさい。(720字以内)

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これは、どのように書いたらいいのでしょうか? 卒論をイメージして、講義や教授名を具体的に出すことがカギということですが……。

はい、これから分かりやすく説明してゆきます。

最初に押さえておきたい大前提

まず大前提として、この書類は、下のような流れになっています。

  • 過去の学習体験 ⇒ 何を学ぼうとしているのか ⇒ 将来の展望

慶応通信制は、高校をすでに卒業した方の受験が多い大学です。そのため、「現在まで、すでに学びに取り組んでいるはず」「社会経験のなかで将来像が見えてきているはず」と大学側は考えています。ただし、注意したいのは、この書類は、あくまで何を学ぼうとしているのかを聞いているということです。

「過去の学習体験」は書きやすく、「何を学ぼうとしている」かは難しいため、次のような字数配分になってしまうことがあります。

  • 過去の学習体験7:何を学ぼうとしているのか1:将来の展望2

これは、どの大学でも、不合格者の典型的な事例です。最低でも「何を学ぼうとしているのか」に5割以上の字数は割くようにしてください。

  • 過去の学習体験3:何を学ぼうとしているのか5:将来の展望2

この配分は一例です。将来像に自信がある方は、将来の展望を増やすなど、自分の持ち味も考慮します。ただ、「志望した学部・類で何を学ぼうとしているのか、具体的に述べなさい。」という指示は、絶対に外さないようにします。

1.志望した学部・類で何を学ぼうとしているのか、①過去の学習体験、②将来の展望、のいずれにも触れながら、具体的に述べなさい。(720字以内)

「①過去の学習体験、②将来の展望、のいずれにも触れながら、」は挿入されている部分に過ぎず、「志望した学部・類で何を学ぼうとしているのか、具体的に述べなさい。」という指示となります。

志望した学部・類で何を学ぼうとしているのか の書き方

「志望した学部・類で何を学ぼうとしているのか」については、将来像をなるべくはっきりと、卒論のテーマをおぼろげにでもイメージするのがコツです。

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自分の場合は、地方の活性化に関わる仕事についてみたいです。卒論は、全くイメージできませんが💦

はい。少子高齢化社会や過疎に加え、感染症による観光客の減少で悩む地方の活性化に興味があるのですね。それなら、慶應通信制では、経済学部が対象となります(慶應通信制の経済学部は、経済学部、商学部の内容をあわせて学ぶ学部です)。

慶應通信制のWebサイトから、開講科目一覧 講義要綱、教員紹介(商学部)を見てみます。

「経済学部専門教育科目」を見ると、人文地理学、地理学、都市社会学が、地方の活性化に関係ありそうです。それぞれの用語を、ネットで調べます。

  • 人文地理学 …人間の社会構造や経済活動、歴史、文化、宗教、交通、人口分布など、人間の営みの地域的な特徴を研究する学問。
  • 地理学 …土地・水・気候などの自然と人間生活との関係を明らかにしていく学問。
  • 都市社会学 …都市生活の実態をふまえて、都市の構造や機能を多角的に分析、解明しようとする社会学の一領域。
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僕の場合は、観光地でもある地方都市出身なので「土地・水・気候などの自然」や「都市の構造や機能」といったところに興味があります。

だいぶ絞れてきましたね! 次に教員紹介(商学部)を見てみます。

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人数が60人以上いて、内容も難しくて自分には無理でした💦

たしかに、ちょっと探しにくそうですね。経済学部の教授も調べると、さらに大変です。

しかし、諦めずにリサーチすれば、上のようなページもあります(慶應義塾研究者情報データベース)。上は地理学で検索したものです。

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調べたら「海岸地域の地形・地質の調査・分析を通じて,地形発達過程や堆積環境変化を復元する研究(中略)に従事しています」という准教授がいました!

見つかりましたね。ただ、その准教授が通信制の講義を担当するか分からない場合もあります。また、教授・准教授の退任や異動もありますので、その先生がいないと通用しない、という内容は避けてください。

【例文】1.志望した学部・類で何を学ぼうとしているのか

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ここまでで、材料が集まったので書いてみます。

1.志望した学部・類で何を学ぼうとしているのか、①過去の学習体験、②将来の展望、のいずれにも触れながら、具体的に述べなさい。(720字以内)

  • 何を学ぼうとしているのか …①都市社会学(都市生活の実態をふまえて、都市の構造や機能を多角的に分析、解明しようとする社会学の一領域)②地理学(土地・水・気候などの自然と人間生活との関係を明らかにしていく学問)③「海岸地域の地形・地質の調査・分析を通じて,地形発達過程や堆積環境変化を復元する研究」に興味がある。
  • 卒論のイメージ …海岸の自然を生かし観光客を増やし、都市機能を充実させる方法を書きたい。
  • 過去の学習体験 …高校の「総合的な探究の時間」で、地元の観光客の不満を調べたことがある。
  • 将来の展望 …公務員や、観光に関係する企業。
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構成はどうしたらいいでしょうか?

はい。志望理由書の一般的な構成(600~800字)は、上の4段落構成となります。

【大学入試】志望理由書のやさしい書き方と例文集

慶應通信制では、「ほかの学校にないもの」は書類3(なぜ慶應義塾大学の通信教育課程を選んだのか述べなさい。150字以内)に回しますので、メインは学びたいことです。きっかけは、大学側の指示に従い、過去の学習に入れ替えます。

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書いてみました!

1.志望した学部・類で何を学ぼうとしているのか、①過去の学習体験、②将来の展望、のいずれにも触れながら、具体的に述べなさい。(720字以内)

私が貴学で学びたいことは、今後求められる都市の仕組みと、海岸部の観光資源の生かし方だ。

私は、在籍していた高校の「総合的な探究の時間」で、地元の観光客の不満を調べたことがある。公共交通の不便さの指摘が多く、同時に海岸が平凡で観光地としての魅力に欠くという意見もあった。また進学した短大では、ホスピタリティ産業論に力を入れ、顧客満足度を高める接客技法を学んだ。貴学で学びを深めたあと、公務員試験に挑戦し、より広い視野で地方の活性化に取り組みたい。

貴学では、まず、中小企業の経営実態を知るために、商学の基礎を身につけたい。地方では、より支援が必要なのは中小企業であり、飲食や宿泊業など、住民や観光客と直接接する機会も多いからだ。つぎに、都市の構造や機能を分析する「都市社会学」を学びたい。今後も地方都市では少子高齢社会が続くと予測されるが、感染拡大を機にしたリモートワークの充実による、地方回帰も進むはずだ。高齢者にも、リモートワーカーにも過ごしやすい都市づくりに興味を持っている。同時に、私の地元は海岸の観光地に恵まれるが、観光客の満足度が低いという課題がある。その背景には、景観としての魅力がやや劣ることが考えられる。そこで、地理学を学び、 海岸地域の地形・地質を知ることで、日本人や海外からの観光客に、地形や地質の魅力をPRできないか、研究してゆきたい。卒論は、入学後の学習や担当の教授からの指導により変わる可能性があるが、現在は「海岸の自然を生かし観光客を増やしつつ、同時に都市機能を充実させる方法」を構想している。

以上が貴学で学びたいことだ。進学後は、目標実現のため精一杯勉学に励むつもりである。(706字)

Q 慶応通信の志望理由書では、改行は必要ですか?
A はい。720字の2題は、字数が多いため最低でも2段落に分けることが必要です(標準は4段落)。そのため、段落を変えたい場所で改行し、次の段落では1文字空けて書き始めます。なお、冒頭も1文字下げて書き始めます。
150字以内の文章は、段落不要です。よって改行は行わず、冒頭での1文字下げも必要ありません。(1文字下げは、段落の先頭の目印ですので、1段落しかない場合、やや不自然です。ただし、減点は行われない可能性も高く、合否への影響はないと考えます)

Q 慶応通信の志望理由書では、「だ・である調」「です・ます調」のどちらが良いですか?
A 「だ・である調」は学問を扱っているイメージが強くなる半面、内容が伴わないと、やや偉そうに感じさせる欠点があります。高3生が書く志望理由書は、まだ内容が伴わないことも多く、丁寧な印象となる「です・ます調」が推奨されますが、慶應通信制では、「だ・である調」がおすすめです。その理由として、レポートや卒論の執筆能力を測る狙いがありそうなこと、書類2( 自分の学びたい学問領域に関わる書籍 )は評論のため、「です・ます調」とやや合わず、3つの書類を統一するなら「だ・である調」がふさわしいからです。
※すでに「です・ます調」で提出された方は、減点にはならないのでご安心ください。

【書き方】2.自分の学びたい学問領域に関わる書籍(720字以内)

2.自分の学びたい学問領域に関わる書籍を一冊選び、概要を簡単にまとめた上で、自身の視点から詳しく評論しなさい。(720字以内)

構成例は以下の通りです。概要(事実)と論評(考え)は、絶対に混ぜずに段落を変えることがポイントです。なお、書名の示し方など、大学側からの指示があった場合は、それに従ってください。

概要や評論内の項目(著者紹介、全体の構成等)は、一例です。この通りに書く必要はありませんので、ご自身が書きやすいように構成してください。

【書き方】 3.なぜ慶應義塾大学の通信教育課程を選んだのか述べなさい。(150字以内)

3.なぜ慶應義塾大学の通信教育課程を選んだのか述べなさい。(150字以内)

この書類では、通常の志望理由書に求められる要素(きっかけ、将来像、学びたいこと、ほかの学校にないもの)から、すでに別の書類でクリアしているものを引き算しますので、「ほかの学校にないもの」を書きます。

きっかけについては、慶應義塾卒業生や学問の専門家、高校の先生などからのおすすめなど、ぜひ書きたいことがあれば書きます。

なお、 150字以内の文章は、段落不要です。よって改行は行わず、冒頭での1文字下げも必要ありません。(1文字下げは、段落の先頭の目印ですので、1段落しかない場合、やや不自然です。ただし、減点は行われない可能性も高く、合否への影響はないと考えます)

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