古文助動詞「ぬ」「ね」の識別を、ナ変動詞、ナ行に活用する動詞との区別も含めて説明しています。
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「ぬ」「ね」の識別は、勉強しなくてもいい?
現代では「食べぬ」と言われれば、食べないの意味だと分かりますが、古文の時代では、完了の意味もありました。その識別が問われます。
「ぬ」「ね」の識別は、打消の助動詞「ず」・完了の助動詞「ぬ」の接続や活用表を理解していれば、特段の勉強をしない受験生もいます。まずは、接続や活用表を確認してみましょう。
助動詞の接続は、♪もしもし亀よ~の歌で覚えるのがおすすめです。
[未]む・ず・むーず・じ・しむ・まし・まほしー
□□□も・し・もーし・か・めよ・かめ・さんよー
[未]るー・らる・すー・さす・りー・りー・りー
□□□せー・かい・のー・うちで・おま・えー・ほど-
[用]つ・ぬ・たり・けーり・たし・たし・き・けむー
□□□あ・ゆ・みの・のー□・ろい・もの・は・ないー
[終]らーむ・べーし・まーじ・らし・なーり□・めりー
□□□どー□・しーて・そん□・なに・のろいの・かー
「ず」は未然形接続、「ぬ」は連用形接続でした。
活用表は、「ず」は(本活用のみ)丸暗記(古文文法7位)、「ぬ」はナ変と覚えるのがポイント(古文文法2位)でした。
- 打消の助動詞「ず」の活用表 … ず・ず・ず・ぬ・ね・○
- 完了の助動詞「ぬ」の活用表 … な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね
《まとめ》
①打消「ず」は未然形接続、完了「ぬ」は連用形接続でした。
②打消の助動詞「ず」の活用表 … ず・ず・ず・ぬ・ね・○
③完了の助動詞「ぬ」の活用表 … な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね
例題 下の例文の「ね」を文法的意味を答えなさい。
もし我に後れてその志とげず、この思ひおきつる宿世違はば、海に入りね。
まず接続からチェックします。
入るは、ずをつけると「入ら(a)ず」となり、a段音が出現するため、四段活用。古文文法1位より、四段活用は「あ・い・う・う・え・え」ですので、「入り」は連用形。したがって「ね」は完了の助動詞となります。(ただし正確には、強意または確述です)
「ぬ」「ね」の識別 重要順ランキング
「ぬ」「ね」の識別は、助動詞の接続、活用表を押さえていれば、特別な暗記は不要です。
1位(接続で判断)直前が未然形なら打消の助動詞「ず」、連用形なら完了「ぬ」。
2位(字面で判断)打消なら「ず・ず・ず・ぬ・ね・○」、完了なら「な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね」
==ここから上で入試問題の大半が解ける==
3位 ナ変動詞「死ぬ・往ぬ・去ぬ」の終止形、命令形
4位 ナ行に活用する動詞(寝、寝ぬ、重ぬ)の一部
Q 「つゆもまだひぬ」とあるが、助動詞を終止形で抜き出せ。
「つゆもまだひぬ」と聞くと、きみにいゐひ+るという暗記法が有名な割には出題率がやや低い、下一段動詞「ひる」が出てきます。「い・い・いる・いる・いれ・いよ」は、うろ覚えでも構いませんが、未然形と連用形は同じですので、打消、完了の判定はできません。
『村雨の 露もまだひぬ 槇の葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮れ』
にわか雨が通り過ぎていった後、まだその滴も乾いていない杉や檜の葉の茂りから、霧が白く沸き上がっている秋の夕暮れ時である。
そこで「つゆもまだひぬまきのはに」と、後を見ると、まきのはという名詞(体言の1つ)があります。よって、連体形が「ぬ」になるということは、打消の「ず」となります。(正解は、ず)
Q 「つらぬきとめぬ」とあるが、助動詞を終止形で抜き出せ。
意味から考えると、貫き留めた玉のようにも思われますが、たまは名詞(体言)ですので、「ぬ」は連体形となっています。よって、打消の「ず」となります。(正解は、ず)
『白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬき留めぬ 玉ぞ散りける』
草の葉の上に乗って光っている露の玉に、風がしきりに吹きつける秋の野原は、まるで紐に通して留めていない真珠が、散り乱れて吹き飛んでいるようだったよ。
ページは後半に続きます。
「ぬ」「ね」の識別 すごい例文
「ぬ」「ね」の識別のすごい例文です。4つの識別が、一発で理解できます。
声に出して繰り返し読むことで、頭のなかに古語の「ぬ」「ね」が定着します。法則を暗記しても意外に解けませんが、例文を分析しながらの暗記は、得点力が高いです。
波やまねば、同じ所にあるも、あしたは風も吹きぬべし。いまはいぬべし。
[口語訳]もし波が止まなければ、舟は同じところから動かないのだが、翌朝にはきっとよい風も吹くに違いない。いまは寝ていなさい。
波やまねば … 四段動詞の未然形につくため、打消の助動詞。
風も吹きぬべし … 四段動詞の連用形につくため、完了の助動詞。正確には、強意または確述。
いまはいね … 動詞「寝ぬ」の終止形。なお、ナ変動詞「往ぬ・去ぬ」では、文脈的な意味が合わない(船から立ち去ったら、溺れてしまう)。
ちなみに、寝は単に横になること、寝ぬは横になって眠ることを意味します。
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