【速報】2024年共通テスト国語第3問古文 リード文・本文・注釈・設問 文字起こし・解法・現代語訳

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2024年共通テスト国語第3問古文(『草縁集』「車中雪」)のリード文・本文・注釈・設問の文字起こしと現代語訳、解法です(Word版あり)。高校・塾の先生の教材作成や、受験勉強にご活用ください。

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受験ネット代表 加藤詳細
早大卒、予備校講師を経て国家資格キャリアコンサルタント(登録番号20022587登録証)。高校内講演歴10年670回。
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2024年共通テスト第3問古文 リード文・本文・注釈・設問 文字起こし

第3問 次の文章は、「車中雪」という題で創作された作品の一節である(『草縁集』所収)。主人公が従者とともに桂(京都市西 京区の地名)にある別邸(本文では「院」)に向かう場面から始まる。これを読んで、後の問い(問1~4)に答えよ。なお、設問の 都合で本文の上に行数を付してある。(配点50)

桂の院つくりそへ給ふものから、あからさまにも渡り給はざりしを、友待つ雪にもよほされてなむ、ゆくりなく思し立たすめる。かうやうの御歩きには、源少将、藤式部をはじめて、今の世の有職と聞こゆる若人のかぎり、必ずしも召しまつはした ねたりしを、とみのことなりければ、かくとだにもほのめかし給はず、「ただ親しき家司四人五人して」とぞ思しおきて給ふ。

やがて御車引き出でたるに、「空より花の」とうち興じたりしも、めでゆくまにまにいつしかと散りうせぬるは、かくてやみぬとにやあらむ。「さるはいみじき出で消えにこそ」と、人々死に返り妬がるを、「げにあへなく口惜し」と思せど、「さて引き返さむも人目悪かめり。なほ法輪の八講にことよせて」と思しなりて、ひたやりに急がせ給ふほど、またもつつ闇に曇りみちて、ありしよりけに散り乱れたれば、道のほとりに御車たてさせつつ見給ふに、何がしの山、くれがしの河原も、ただ時の間に面変はりせり。

かのしぶしぶなりし人々も、いといたう笑み曲げて、「これや小倉の峰ならまし」 「それこそ梅津の渡りならめ」と、口々に定め あへるものから、松と竹とのけぢめをだに、とりはづしては違へぬべかめり。「あはれ、世に面白しとはかかるをや言ふならむかし。なほここにてを見栄やさまし」とて、やがて下簾かかげ給ひつつ、

ここもまた月の中なる里ならし雪の光もよに似ざりけり

など興ぜさせ給ふほど、 かたちをかしげなる童の水干着たるが、手を吹く吹く御あと尋め来て、榻のもとにうずくまりつつ、「これ御車に」とて差し出でたるは、源少将よりの御消息なりけり。大夫とりつたへて奉るを見給ふに、「いつも後らかし給はぬを、かく、

X 白雪のふり捨てられしあたりには恨みのみこそ千重に積もれれ」

とあるを、ほほ笑み給ひて、畳紙に、

Y 尋め来やとゆきにしあとをつけつつも待つとは人の知らずやありけむ

やがてそこなる松を雪ながら折らせ給ひて、その枝に結びつけてぞたまはせたる。  

やうやう暮れかかるほど、 さばかり天霧らひたりしも、いつしかなごりなく晴れわたりて、名に負ふ里の月影はなやかに差し出でたるに、雪の光もいとどしく映えまさりつつ、天地のかぎり、白銀うちのべたらむがごとくきらめきわたりて、あやにまばゆき夜のさまなり。  

院の預かりも出で来て、「かう渡らせ給ふとも知らざりつれば、とくも迎へ奉らざりしこと」など言ひつつ、頭ももたげで、よろづに追従するあまりに、牛の額の雪かきはらふとては、軛に触れて烏帽子を落とし、御車やるべき道清むとては、あたら雪をも踏みしだきつつ、足手の色を海老になして、風を引き歩く。人々、「いまはとく引き入れてむ。かしこのさまもいとゆかしきを」とて、もろそそきにそそきあへるを、「げにも」とは思すものから、ここもなほ見過ぐしがたうて。

(注)
1友待つ雪 後から降ってくる雪を待つかのように消え残っている雪。
2思し立たす 「す」はここでは尊敬の助動詞。
3家司 邸の事務を担当する者。 後出の「大夫」はその一人。
4空より花の 『古今和歌集』の「冬ながら空より花の散りくるは雲のあなたは春にやあるらむ」という和歌をふまえた表現。
5死に返り とても強く。
6法輪の八講  「法輪」は京都市西京区にある法輪寺。「八講」は『法華経』全八巻を講義して讃える法会。
7つつ闇 まっくら闇。
8小倉の峰 京都市右京区にある小倉山。
9梅津の渡り 京都市右京区の名所。桂川左岸に位置する。
10ここにてを見栄やさまし ここで見て賞美しよう。
11 下簾 牛車の前後の簾(下図参照)の内にかける帳
12榻 牛車から牛をとり放したとき、「軛」を支える台(下図参照)。牛車に乗り降りする際に踏み台ともする。
13天霧らひ 「天霧らふ」は雲や霧などがかかって空が一面に曇るという意。
14院の預かり 桂の院の管理を任された人。
15 海老になして 海老のように赤くして。
16もろそそき 「もろ」は一斉に、「そそく」はそわそわするという意。

問1 傍線部~の解釈として最も適当なものを、次の各群の①~⑤のうちから、それぞれ一つずつ選べ。解答番号は23~25。

ア あからさまにも
①昼のうちも
②一人でも
③少しの間も
④完成してからも
⑤紅葉の季節にも

イ とみのこと
①今までになかったこと
②にわかに思いついたこと
③ひそかに楽しみたいこと
④天候に左右されること
⑤とてもぜいたくなこと

ウかたちをかしげなる
①格好が場違いな
②機転がよく利く
③和歌が上手な
④体を斜めに傾けた
⑤見た目が好ましい

問2 波線部a ~eについて、語句と表現に関する説明として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。解答番号は26。

①a「うち興じたりしも」の「し」は強意の副助詞で、雪が降ることに対する主人公の喜びの大きさを表している。
②b「引き返さむも」の「む」は仮定・婉曲の助動詞で、引き返した場合の状況を主人公が考えていることを表している。
③c「面変はりせり」の「せり」は「り」が完了の助動詞で、人々の顔色が寒さで変化してしまったことを表している。
④d「興ぜさせ給ふ」の「させ」は使役の助動詞で、主人公が和歌を詠んで人々を楽しませたことを表している。
⑤e「大夫とりつたへて奉るを見給ふ」の「給ふ」は尊敬の補助動詞で、作者から大夫に対する敬意を表している。

問3 和歌X・Yに関する説明として最も適当なものを、次のうちから一つ選べ。解答番号は27。

①源少将は主人公の誘いを断ったことを気に病み、「白雪」が降り積もるように私への「恨み」が積もっているのでしょう ね、という意味の和歌Xを贈った。
②源少将は和歌Xに「捨てられ」「恨み」という恋の歌によく使われる言葉を用いて主人公への恋情を訴えたため、主人公 は意外な告白に思わず頬を緩めた。
③主人公は和歌Yに「待つ」という言葉を用いたのに合わせて、「待つ」の掛詞としてよく使われる「松」の枝とともに、 源少将が待つ桂の院に返事を届けさせた。
④主人公は「ゆき」に「雪」と「行き」の意を掛けて、「雪に車の跡をつけながら進み、あなたを待っていたのですよ」という 和歌Yを詠んで源少将に贈った。

問4  次に示すのは、「桂」という言葉に注目して本文を解説した文章である。これを読んで、後の~の問いに答えよ。

 本文は江戸時代に書かれた作品だが、「桂」やそれに関連する表現に注目すると、平安時代に成立した『源氏物語』や、 中国の故事がふまえられていることがわかる。以下、順を追って解説していく。
 まず、1行目に「桂の院」とある。 「桂」は都の中心地からやや離れたところにある土地の名前で、『源氏物語』の主人公 である光源氏も「桂の院」という別邸を持っている。 「桂の院」という言葉がはじめに出てくることで、読者は『源氏物語』 の世界を思い浮かべながら本文を読んでいくことになる。
 次に、1行目の和歌に「月の中なる里」とある。実はこれも「桂」に関わる表現である。古語辞典の「桂」の項目には、 「中国の伝説で、月に生えているという木。また、月のこと」という説明がある。すなわち、「月の中なる里」とは「桂の 里」を指す。したがって、 12行目の和歌は、「まだ桂の里に着いていないはずだが、この場所もまた『月の中なる里』だと 思われる。なぜなら、( Ⅰ )」と解釈できる。
 「桂」が「月」を連想させる言葉だとすると、20行目で桂の里が「名に負ふ里」と表現されている意味も理解できる。すな わち、20~22行目は( Ⅱ ) という情景を描いているわけである。
 最後に、25行目に「桂風を引き歩く」とある。 「桂風」は「桂の木の間を吹き抜ける風」のことであるが、「桂風を引き」に は「風邪を引く」という意味も掛けられている。実は『源氏物語』にも「浜風を引き歩く」という似た表現がある。光源氏の 弾く琴の音が素晴らしく、 それを聞いた人々が思わず浜を浮かれ歩き風邪を引くというユーモラスな場面である。『源 氏物語』を意識して読むと、 23~26行目では主人公がどのように描かれているかがよくわかる。すなわち、( Ⅲ )。
 以上のように、本文は「桂の院」に向かう主人公たちの様子を、移り変わる雪と月の情景とともに描き、最後は院の預 かりや人々と対比的に主人公を描いて終わる。作者は『源氏物語』や中国の故事をふまえつつ、「桂」という言葉が有する イメージをいかして、この作品を著したのである。

(ⅰ)空欄 ( Ⅰ )に入る文章として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。解答番号は 2 。

①小倉や梅津とは比較できないくらい月と雪が美しいから
②雪がこの世のものとは思えないほど光り輝いているから
③ひどく降る白い雪によって周囲の見分けがつかないから
④月の光に照らされた雪のおかげで昼のように明るいから

(ⅱ)空欄 ( II ) に入る文章として最も適当なものを、次の1~4のうちから一つ選べ のうちから一つ選べ。解答番号は 20。

①空を覆っていた雲にわずかな隙間が生じ、月を想起させる名を持つ桂の里には、一筋の月の光が鮮やかに差し込ん できて、明るく照らし出された雪の山が、目がくらむほど輝いている。
②空を覆っていた雲がいつの間にかなくなり、月を想起させる名を持つ桂の里にふさわしく、月の光が鮮やかに差し 込み、雪明かりもますます引き立ち、あたり一面が銀色に輝いている。
③空を覆っていた雲が少しずつ薄らぎ、月を想起させる名を持つ桂の里に、月の光が鮮やかに差し込んでいるもの の、今夜降り積もった雪が、その月の光を打ち消して明るく輝いている。
④空を覆っていた雲は跡形もなく消え去り、月を想起させる名を持つ桂の里だけに、月の光が鮮やかに差し込んでき て、空にちりばめられた銀河の星が、見渡す限りまぶしく輝いている。

(ⅲ)空欄( Ⅲ ) に入る文章として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。解答番号は 30。

①「足手の色」を気にして仕事が手につかない院の預かりや、邸の中に入って休息をとろうとする人々とは異なり、 「ここもなほ見過ぐしがたうて」とその場に居続けようとするところに、主人公の律儀な性格が表現されている。
②風邪を引いた院の預かりを放っておいて「かしこのさまもいとゆかしきを」と邸に移ろうとする人々とは異なり、 「『げにも』とは思す」ものの、院の預かりの体調を気遣うところに、主人公の温厚な人柄が表現されている。
③軽率にふるまって「あたら雪をも踏みしだきつつ」主人を迎えようとする院の預かりや、すぐに先を急ごうとする 人々とは異なり、「ここもなほ見過ぐしがたうて」と思っているところに、主人公の風雅な心が表現されている。
④ 「とくも迎へ奉らざりしこと」と言い訳しながら慌てる院の預かりや、都に帰りたくて落ち着かない人々とは異な り、「『げにも』とは思す」ものの、周囲の人を気にかけないところに、主人公の悠々とした姿が表現されている。

第3問古文 古文が苦手な生徒が「読める」ようになる裏ワザ

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よく知られていますように、注釈のない古文は、大学院生や若手の学者でも意味が取れないことがあります。だからと言って「春はあけぼの」のようなレベルを出題する訳にもいきませんので、受験古文では、リード文、注釈、設問のヒントからおおむね理解できるようになっているのが最大の特徴です。実質「現代文」であることを、理解することが最大のカギです。

具体的には、まずリード文を「いつ、どこで、誰が、何を(した)」に線を引きながら(または素早くメモしながら)読みます。続いて注釈を同様に。設問も同様にざっと読みます。

2024年の共通テスト第3問(『草縁集』「車中雪」)であれば、次のようなヒントが取れます。下は本文を読む前のメモ書きのため、実際の内容と異なる場合があります。

リード文
主人公が京都の桂にある別荘に向かう。主人公は別荘を持つので高貴な人。


・雪の日に
・家司(院の預かり)という管理人のような人がいる
・小倉山、梅津の渡りという観光地のような場所が出てくる?
・高貴な人が来る?(牛車)

設問
問3
・源少将という人が出てくる
・主人公は源少将と和歌のやり取りをする?

問4
・桂は月と関係がある→場面は夜?
・(ⅲ)主人公はその場にいるが、付き添いの人などは別荘に入りたがる?

続いて本文は「誰が、どう感じた、なぜ」に焦点を当てて読むと、時間がかからない割には、意味内容も取れます。古文では、物語調の展開が多く、心情を追うことが重要。そして、心情の原因は、主要なできごとやほかの人物の重要なセリフや行動等になりますので、これだけで、展開の根幹は押さえれます。

なお、評論が出題された場合でも、古文の評論は随想調のため、「どう感じた」(どう判断した)で十分に解釈できます。

次のページにこの解法は分かりやすく説明しました。
「古文が読めない」を20分で解決! 共通テストで裏ワザ解説

この前提として、文法や敬語を押さえておくことは必要です。単語は、古今同義語も多く、意味内容を押さえるうえでは意外に効きません(英単語に比し、時間対効果が悪い)ので、まず苦手意識をなくすなら文法・敬語を押さえた方が早いです。
[助動詞・識別]古文重要文法ベスト40

2024年共通テスト第3問古文 現代語訳(速報版)

※やや意訳になっていますのでご注意ください。教材ご利用の場合、念のためミスがないかご確認ください。

京都の桂(地図)にある別荘を建て増しなさるというのに、少しも様子を見にお出かけにならなかったのだが、後から降る雪を待つという「友待つ雪」に誘われて、急に思い立ちなさるようだ。こうしたお出かけには、源少将・藤式部を初めとして、現在、風流に長けていると評判になる若者達をみな、必ず連れなさっていたが、にわかに思いついたことだったので、このように出かけるということさえほのめかしなさらず、「ただ親しい家の従者を四人、五人連れて」とお決めになる。
(ヒント)京都の別荘なら景色が良い場所にあり、違いが分かる若者(格付けのGACKTのような人)を数多く連れて行くはずなのだが、今回はお忍びで少人数。

間もなく牛車を引いて出発し、「空より花の」と和歌を引っ張ってきて面白がっていたのだが、愛でているうちにいつの間にか雪が散り失せたのは、こうして雪がやんでしまうということであろうか。「それは景色がひどく見劣りがするだろう」と、人々は大変嫌がるのを、「本当に拍子抜けで残念だ」とお思いになるけれど、「そうだからといって引き返すようなのも、人目に悪いようだ。やはり法輪寺の八講の法会にかこつけて先へ」という考えになりなさって、ひたすらに急がせなさるとき、またも真っ暗に辺りが曇って、先ほどよりも雪が散り乱れたので、道のほとりに牛車を立てさせながらご覧になると、何がしの山やくわがしの河原も、ただほんのちょっとの間に見た目が変わっている。
(ヒント)せっかくの雪がやんでしまったが、また降り始めた。

例の(雪がやんでしまって)渋々同行した人たちも、とてもよく笑って「これは小倉の峰であろうか」「それは梅津の渡りであろう」と、口々に定め合っているのだが、松と竹の区別ですらも(雪の舞うなか)誤解してきっと違うはずのようだ。「あぁ、世の中に風流とはこういうのを言うのであろうよ。やはりここで見て鑑賞しよう」と言って、そのまま下簾をかかげなさりながら、

 ここもまた月の中にある里であるらしい 雪がこの世のものとは思えないほど光り輝いている

などと面白がりなさるとき、見た目が好ましい童で水干(男子の平安装束の一つ)を着ている者が、寒さで手をさすりながら後ろを追ってきて、牛車の榻(しじ、支え・踏み台)のところにうずくまって、「これを牛車に」と差し出したのは、源少将からのお手紙であった。大夫が取って受け渡して差し出すのを(主人公が)ご覧になると、手紙に「いつも置いていきなさらないのに、今回は

白雪が降るのふるではないが、振り捨てられた私の辺りでは、白雪ではなく恨みばかりが千重に積もっている」
(ヒント)本家に置いてきた源少将からクレーム届く。昔はLINEなどないので、物理で手紙を届けるしかない。(ということは源少将も近くにいるのだろうか?)ちなみに牛車に榻(しじ)を備え付けてよいのは、相当身分が高い人のみで、主人公はかなり高貴か?

とあるのを、(主人公は)微笑みなさって畳紙に、

「私を探し訪ねて来るだろうかと、道を進めつつ雪に跡をつけながら、あなたを待っていると知らなかったのだろうか」

間髪を入れずそこにある松を雪のまま折らせなさって、その枝に結び付けてお与えになった。

だんだん暮れてくるうちに、先ほどは雲や霧で一面曇っていたのも、気づけば名残なくすっかり晴れ渡って、桂という月ゆかりの名を背負う里の月の光がはなやかに差し出したので、雪の光もいっそう映えて輝きを増しつつ、天地の限り、銀をたたき延ばしているように一面輝いて、むやみにまぶしい夜の様子である。

院の管理役も出てきて、「こんな風にお越しになるとも知らなかったので、早くにお迎え申し上げなかったこと」などと言いながら、頭も上げず万事低姿勢に振る舞うあまりに、牛の額の雪をかき払うと言するといってはもったいなくも新雪を踏み回り、足や手の色を海老のように赤くして桂の木の間を吹き抜ける風のもと風邪を引きながら歩いて回る。人々は「今は早く別荘の中に引っ張り入れてくれよ。あちらの様子もとても見たいので」と言って、一斉にそわそわしているのを、主人公は「確かに」と思いなさるけれど、ここもなお見過ごすことができなくて。
(ヒント)問4の現代文部分に次のようにあった。「桂風」は「桂の木の間を吹き抜ける風」のことであるが、「桂風を引き」に は「風邪を引く」という意味も掛けられている。

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