教育学部を希望している高校生のために、就職状況、将来性、学ぶ内容を説明し、学生の口コミを紹介します。
- 筆者:管理者(加藤)は元予備校講師。現在は東日本の高校で、年に80回の講演活動を行っています。キャリアコンサルタント(国家資格)取得済。
主な内容は、目次にあります。
教育学部は、先生になるための学部?
教育学部は、先生になる人のための学部ですよね??
はい、教育学部といえば、先生になる人のための学部と、一般には考えられています。しかし、国立大学(教員養成系)ですら、先生になる人は約6割しかいません! ほかの4割は、民間企業や公務員の道へ進んでいます。
データ 国立の教員養成大学・学部の教員就職状況(Ⅱ-20)
教育とつかない学部・学科から先生になることも多い
さらに、上の図にあるように、中学・高校の教員免許は、学部名にも学科名にも「教育」とつかない大学で取得する人が、数多くいます。一方、小学校の教員免許は、学部名か学科名に、教育、児童、子どもがつくケースがほとんどです。
ポイント 中学・高校は、教科別の免許となっており、セットで取る形となります(例:中学・高校の数学)。ただし、情報、商業、農業など高校だけの免許もあります。(一覧)
取得したい免許(例えば、中学高校の英語)から、取得できる学校を調べる場合、文部科学省の下のページが便利です。大学のほか、短大、大学院、通信課程でも取得可能です。
小中高の先生以外にも「先生」はいる
このほか、教育学部にはさまざまなケースがあります。
- 養護教諭(=保健室の先生)、栄養教諭(=給食の管理、授業、兼務校の訪問等)、特別支援学校(=障がい者の小中高にあたる)をめざす学科もあります。養護教諭、栄養教諭は人気が高い(倍率8倍前後)ですが、特別支援学校は、3倍前後です。(データ 公立学校教員採用試験における受験者数及び採用者数の推移 Ⅲ-3)
- 幼稚園教諭の免許をめざす学科もあります。
- どの教員免許も取得せず、さまざまな学問を総合的に学ぶことができる学科も。新課程(ゼロ免課程)と呼ばれますが、最近は縮小傾向です。
小学校・中学校・高校の先生につく難易度(競争倍率)
高校の先生から、教員は競争倍率が5倍と聞きました💦 40人のうち8人しか教員になれないって、結構ハードですよね……。だから、先生になる人は、国立でも6割なんですね……。
はい、その通りです。令和元年度、公立学校教員採用選考試験の競争倍率は以下のようになっています。競争倍率の平均は4.2倍です。(令和元年度公立学校教員採用選考試験の実施状況)
・小学校 2.8倍
・中学校 5.7倍
・高等学校 6.9倍
・特別支援学校 3.2倍
・養護教諭 6.3倍
・栄養教諭 8.0倍
競争倍率は高めですが、平成15年には、小学校で約5倍、中高は10倍以上の倍率がありました。以前に比べれば、教員になるのは決して夢ではない、努力すればなれると言えます。
都道府県によって大きく異なる競争倍率
教員採用の競争倍率は、都道府県によって大きく異なります。絶対に教員になる、という方なら、倍率が低い地域を狙うことで、夢の実現の可能性は、大きく上がります。
小学校の教員採用倍率(令和2年度速報値)の分布
- 2倍未満 … 山形、福島、広島、山口、福岡、佐賀、長崎、大分
- 2~3倍台 … (上記、下記以外)
- 4倍以上 … 三重、大阪、京都、奈良、兵庫、鳥取、高知、沖縄
中学校の教員採用倍率(令和2年度速報値)の分布
- 4倍未満 … 宮城、山形、茨城、山梨、広島、山口、佐賀
- 4~5倍台 … (上記、下記以外)
- 6倍以上 … 青森、秋田、神奈川、三重、滋賀、高知、熊本、沖縄
高校の教員採用倍率(令和2年度速報値)の分布
- 5倍未満 … 山形、茨城、千葉、石川
- 5~7倍台 … (上記、下記以外)
- 8倍以上 … 青森、宮城、秋田、福島、山梨、新潟、三重、大阪、京都、奈良、滋賀、兵庫、岡山、高知、佐賀、熊本、大分、鹿児島、沖縄
上は、都道府県別の令和2年度速報値によります。全都道府県のデータや、政令指定都市のデータは、下の令和元年度の一覧をご覧ください。
教育学部のゼミ例
ゼミとは大学で実施される通年のグループ学習です。ゼミの内容を見ることで、上級生の研究内容が分かり、下級生の時間割のイメージもわいてきます。
小学校の先生を目指す人が多い玉川大学のゼミ(一部抜粋)
◎教科の指導法に関連するゼミ
・科学教育ゼミ
主に物理・化学分野を中心に、科学とは何か、科学するとは何か、科学を教えるとは何か、といった科学教育の理論的実践的な研究をしていきます。・教科教育<算数>ゼミ
算数における子どものつまずきの実態を知り、それを改善するため、算数がわかり・でき・考え・楽しむための教材や指導法を考えます。◎教育全般に関連するゼミ
・臨床心理学ゼミ
現代の教育場面や家族関係におけるさまざまな現象、たとえばいじめや不登校、保護者との関係などを臨床心理学的な視点から考えていきます。・学校文化ゼミ
多様化する児童・保護者の文化的背景の理解を深めるとともに現在の学校環境の中で子どもたちが直面している現実を先入観にとらわれず読み取る力を身につけます。出典:玉川大学教育学部ゼミ紹介
小学校の先生を目指す人が少ない早稲田大学教育学部のゼミ(一部抜粋)
・社会の在り様を探るための思考力を身に付ける
・「史料批判」を学ぶと、歴史の「真実」が見えてくる!
・自分の目で見て足で歩いて、自然と人との関わりを知る
・「学校へ」と「学校に」は何が違う? 言葉に深くこだわる
・さまざまな体験を通して、社会に風穴を開ける力をつける
・「第二言語の習得」を、英語で議論しながら学んでいく
教育学部のある主な大学
小学校教諭を目指す場合、各都道府県の国立大が有力です。首都圏の場合、東京学芸大、千葉大、埼玉大、横浜国立大となります。また私立ですが文教大、玉川大は有力です。
中学校教諭は、日大(文理)、文教大、東京学芸大、千葉大、横浜国立大などが強い傾向がありますが、学部学科の定員数にも左右され本人の実力次第と言えます。高校教諭の場合、早大、日大(文理)、明治大、中央大、東京農業大、千葉大、横浜国立大、筑波大、東京学芸大などが強い傾向がありますが、同様に本人の実力次第です。
(まとめ)教育学部とは
・小学校や特別支援学校の教諭の採用試験の倍率は東北、九州の一部を除いて落ち着いてきています。全員が就けるわけではないですが狙う価値があります。
・中学、高校教諭の免許は、科目別ですので文学部で国語、経済学部で社会のような取得が目立ちますが、教育学部に設置している例も多くあります。教育学部以外の場合、教職課程は選択科目となるため忙しい理系ではつらい場合もあります。
・中学、高校教諭の免許に関して、数学、理科、英語の採用試験倍率は落ち着いて来ました。しかし、国語、社会は競争がかなり激しくなっており、民間企業も視野に入れる必要があります(ただし都道府県によっては狙いやすい年もあります)。
教育学部生の口コミ
将来教師になるための指導法や教育の歴史、現在の学校の状態(モンスターペアレント、学級崩壊)などを学ぶ。(東京学芸)
図工・家庭科・音楽・体育など様々な教科を学べる点が楽しい。付属の小学校で実習ができる。(千葉)
国語国文は、教授に石原千秋教授など有名人が多く文学部に負けない教授陣。文学部にプラスアルファの学習が出来、入試難易度もやや低いのでおすすめ。(早稲田―教育)
学芸大と違い数学ⅢCが入試科目にないのはよいが、入ってから学ぶので大変。数学はかなり難しい。(埼玉―教育)
専門的に何か(数学など)を学びたい人には向かない。基本的に広く浅くなので。(東京学芸―教育―中等教員・数学)
一般就職に弱いので、教師になりたくない人には勧められない教育以外に関しては無名大学(笑)。(東京学芸―教育・社会)
進学校の高校教諭志望の人は今学部卒ではほとんど採用してもらえず、院生として2年勉強して修士課程を終えてから教員試験を受けるのが最も効率的とのこと。(早稲田―教育・国語国文)
埼玉県の教員採用に強く、小中高の免許が取れるため一貫校にも挑戦できる。(埼玉)埼玉県の小学校への就職率はとても高い。(文教大)
教職を取ると夜8時過ぎまで授業がある。教職を取りたいなら学芸大などの教育大や教育学部を勧めます。(東京農工大学―工・物理システム工学)
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