キャリアコンサルタント(国家資格)を取得する場合、通常スクールのテキストを使います。しかし予習や補助資料として、参考書・問題集は不可欠ですし、実務経験者は自学自習となります。実際に、筆者が参考書・問題集を選んだプロセスを記録します。
プロフィール(詳細)
受験ネット・加藤は、早大卒。広告代理店(営業職)、予備校の講師・部長職を経て、国家資格キャリアコンサルタント(登録番号20022587|登録証)。営業と教育職、国家資格の3つの視点を生かした、若年層キャリアの講演多数。
スクールのテキストと参考書
キャリコンスクールの大手リカレントの場合、テキストにある程度知識が書き込まれており、参考書なしで、予習・復習とも進められます。しかし、近年のキャリコンの試験は難度が上がっており、深く理解しておいたほうが有利です。そのため、復習用に参考書を持っていると心強いです。この場合、専門性が高い参考書を選びます。
キャリコンスクールでは、通学形式(またはズーム等によるライブ形式)の授業が始まる前に、動画やDVDで基礎知識を習熟するケースも多いです。その場合、テキストでは理解しづらい場合もあり、参考書があると便利です。この場合、分かりやすい入門的な参考書を選びます。
どのキャリコンスクールも、試験の数か月前に講座は終了し、以降は各自試験対策に入ります。リカレントでは、1問1答式の問題をスマホで学べる仕組みとなるため、問題集なしでも対策できます。しかし、ほかのスクールの卒業生に聞くと、各自問題集を購入していたようです。
学校の選び方 【実体験】キャリアコンサルタントの学校の選び方
[通学やライブ講義の復習向けの高度な参考書]キャリアコンサルティング 理論と実際 6訂版
項目 | 説明 |
筆者 | 木村周(日本のキャリアコンサルティングの第1人者。労働省を経て、筑波大学心理学系の教授。厚生労働省キャリア・コンサルタントに係る試験のあり方研究会・座長ほか) |
発売 | 2022年5月 |
口コミ例 | ・この本の文章と、キャリアコンサルタント試験の選択肢が一致するところが多くある。この本を参考に出題されていると思われる。 ・実践や試験には必須な基本の基本だということを実感する1冊。 ・初心者向けで、全体を把握するのに効果的。 |
デメリット | 口コミに「初心者向け」とありますが、初心者向けとは言えません。大学の教科書のイメージで、講義や分かりやすいメイン教材があっての補助資料です。網羅性や正確性、権威性は強いので、学習が軌道に乗ってきた段階では必須ですが、導入となる本ではありません。 |
問題 | 問題は、1問もついていません。 |
中身は?|キャリアコンサルティング 理論と実際
実際の書籍です(ここでは5訂版を紹介します)。大学受験の英文法参考書並みの厚さ(381ページ)があり、常に持ち歩くのは少し大変です。
写真のように、一応図表も採用されています。
しかし、写真のような網羅的な表も多く、初学者が読み通すのは困難です。筆者は、受験前に多少のキャリア関係の仕事の経験がありましたが、それでもかなり難しいと感じました。
一方、資格スクールのリカレントでは、指定参考書となっており、講師による授業中の参照指示も多くあります。通学(またはズーム等でのライブ)授業の復習や、学科試験の直前期には必ず必要となる書籍です。一方、基礎を動画やDVDで学んでいる時期には、よほど深めたい場合を除き、必要ありません。
学校の選び方 【実体験】キャリアコンサルタントの学校の選び方
[動画授業と併用したい入門的な参考書]新版 キャリアの心理学 第2版―キャリア支援への発達的アプローチ―
項目 | 説明 |
筆者 | 渡辺美枝子(明治学院大教授、筑波大教授・名誉教授となり、立教大学特任教授を歴任。専門はカウンセリング心理学、職業心理学。) |
発売 | 2018年7月 |
口コミ例 | ・キャリアコンサルタント学科試験を受けるのであれば、絶対と言っていいほど読んでおいた方がいい本。試験問題(キャリア理論)の選択肢と本書の文章がほぼ一致するところが何カ所もある。 ・この本と並んで『キャリアコンサルティング理論と実際』という本からも同じようにたくさん出題。この2冊は最低でも読んでおかないと合格は厳しい。 |
デメリット | キャリアコンサルタントの知識の領域には、心理カウンセリング(フロイトなど)、キャリアカウンセリング、労働法規、実務などの分野がありますが、当書はキャリアカウンセリングに絞ったものです。そのため、網羅性はありませんが、『キャリアコンサルティング理論と実際』に比べて、非常に分かりやすくなっています。 |
問題 | 問題は、1問もついていません。 |
キャリアコンサルタントの初学者におすすめの参考書です。とくに動画やDVDで基礎を学ぶ時期には、ぜひ持っていたいものです。1度通読してから動画やDVDに臨めば、負担は軽くなります。
『キャリアコンサルティング理論と実際』に比べ、約100ページ少ない(248ページ)のですが、ハードカバーのため、重量感は同じくらいです。しかし、サイズがワンサイズ小さいため、持って歩こうという気になる本です。
女性の編集者ということもあり、いわゆる木村本(『キャリアコンサルティング理論と実際』)と比べ、語り口が身近で分かりやすくなっています。各理論家の紹介も、まずその人の人となりや時代背景の説明があるため、イメージしやすくなっており、自習向けです。
キャリアカウンセリングに絞った内容で、9人の理論家が紹介されています(スーパー、ホランド、サビカス、ジェラット、クランボルツ、シャイン、ホール、シュロスバーグ、ハンセン)。木村本のような網羅性はありませんが、キャリアカウンセリングの理論は、資格を取るうえで山場となる分野ですので、当書から入るのは、有効です。
学校の選び方 【実体験】キャリアコンサルタントの学校の選び方
[興味を深めるための参考書]キャリアコンサルタントのためのカウンセリング入門
項目 | 説明 |
筆者 | 杉原保史(京都大学教授。臨床心理士) |
発売 | 2016年3月 |
口コミ例 | ・キャリアコンサルタント資格を考慮し、心理カウンセリングとは異なる点もあるキャリアカウンセリングに特化しており、ありがたい。 ・キャリコンを目指す人にはうってつけの実用的な内容。 ・難しい内容だが、勉強に役立った。 |
デメリット例 | ・挙げられる事例がやや具体性に欠き、実践的ではない気がする。 |
キャリアコンサルの学習の1つの山場が、スクールのテキストや、上で紹介した『新版 キャリアの心理学 第2版』が扱う、キャリアカウンセリング理論です。スーパー、ホランド、サビカス、ジェラット、クランボルツ、シャイン、ホール、シュロスバーグ、ハンセンの9人の理論家が登場する、キャリコンなら知らない人はいないという理論家が登場します。
当書籍はキャリアカウンセリング理論の基礎となった、フロイトやユングらの心理学を説明しています。ただし、この本の内容を理解していなければ、キャリアカウンセリング理論を理解できないとまでは言えず、初学者は『新版 キャリアの心理学 第2版』から入っても良いと思います。
一方で、上に挙げた9人の理論家は、キャリコンの学習ではボリュームが多くネックとなりやすい領域で、同時に面白さもあります。その意味では、興味がわきそうなら読んでみて、得意分野にする手もあります。
学校の選び方 【実体験】キャリアコンサルタントの学校の選び方
[試験直前向けの問題集]国家資格キャリアコンサルタント学科試験 要点テキスト&一問一答問題集 2024年版
項目 | 説明 |
筆者 | 柴田郁夫(元青森大学准教授。地域、コミュニティ、人材活用の分野で活動。 1級キャリアコンサルティング技能士) |
発売 | 2024年2月 |
口コミ例 | (旧版の口コミ) ・本番とは異なる2択(〇×)方式だが、この問題集だけで過去問はそこそこ解けるようになった。 ・この本だけで第11回キャリコンの合格ラインに届いた。 ・過去問と似た問題が多く、収録問題数も多い。 ・試験前の追い込み時期に、とても参考になった。 ・本当にこれをやっただけだが、過去問をやったら余裕でクリアし、びっくり。 |
デメリット | (旧版の口コミ) ・解説は少な目 |
口コミは旧版のものです。本番の4択とは異なりますが、逆に使いやすい〇×式であり、この本だけで合格ラインに届いたという声が複数ありました。過去問との一致点が多く、作問にも使われている?との口コミもありました。
実践的で、解説は少な目。すでに、スクールの授業や参考書で、理論学習を終えている人向けです。初学者がこの本から始めると、混乱し何も身につかないまま終わるでしょう。経験者や学習が進んできた人のための本です。
旧版の内容(出版社による)
第1章 キャリアコンサルティングの社会的意義 →当サイト#01~#05、または『キャリアコンサルタントのためのカウンセリング入門』(歴史背景の学習のため、最初は当サイトで十分です) 1-1 社会・経済の動向とキャリア形成支援 1-2 キャリアコンサルティングの役割と活動 |
第2章 キャリアコンサルティングの理論 → 『新版 キャリアの心理学 第2版』または当サイト#06~ 2-1 キャリアに関する理論 2-2 ライフ・ステージと発達課題の知識 2-3 人生の転機の知識 2-4 個人の特性の知識 |
第3章 職業能力開発促進法、その他の関連法令→木村本のみ 3-1 職業能力の開発の知識 3-2 人事管理・労務管理の知識 3-3 労働市場の知識 3-4 労働関係法令と社会保障制度の知識 3-5 学校教育制度とキャリア教育の知識 3-6 メンタルヘルスの知識 |
第4章 実務1 – 基本的技能・知識→木村本のみ 4-1 カウンセリングのアプローチ 4-2 カウンセリングの理論 4-3 カウンセリングの技法 4-4 グループアプローチの技能・知識 4-5 キャリア・シートの作成指導・活用の技能・知識 4-6 相談過程全体の進行の管理に関する技能・知識 |
第5章 実務2 – 相談過程における技能・知識→木村本のみ 5-1 相談場面の設定 5-2 自己理解の支援 5-3 仕事理解の支援 5-4 相談実施過程と総括 |
第6章 キャリアコンサルタントの倫理と行動→木村本のみ 6-1 環境への働きかけとネットワーク 6-2 教育・普及活動と自己研鑽 |
[ハイレベルな問題集]【動画付】2024年版 国家資格キャリアコンサルタント・2級技能士 合格のトリセツ 学科試験・実技(論述)試験 速習テキスト&問題集
項目 | 説明 |
筆者 | 東京リーガルマインド LEC総合研究所 |
発売 | 2024年2月 |
口コミ例 | ・過去問の範囲を超えた論点が掲載されており、勉強の幅が広がる。 |
デメリット | ・類書や過去問に比べ難度が高過ぎ、試験対策として不安。 |
難度が高過ぎるという口コミがあり、直前期の学習や、資格取得後の参考書に適しています。問題と解説が見開きとなっており、解説の分量が適切です。
学校の選び方 【実体験】キャリアコンサルタントの学校の選び方
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