経済・経営・商学部を考えている高校生のために、就職率や数学の必要性も踏まえ、どの学部がよいのかを、高校生の進路専門の国家資格・キャリアコンサルタントがお伝えします。
経済・経営・商学部では何を学ぶ?
大学の各学部で学ぶ内容は、難しかったり、逆にシンプル過ぎたりするパンフや進学サイトの「学部説明」よりも、ゼミ(大学でのグループ学習)の内容を調べた方が早いです。
例えば、「経済学部 ゼミ」「経営学部 ゼミ」「商学部 ゼミ」で調べてみましょう。
このように、人気大学(検索数の多い大学)の経済学部のゼミが出てきます。志望校が決まっている場合、例えば「東洋大学 経済学部 ゼミ」のように、大学名を含めて検索します。
上のような検索で出てきたゼミのなかで、代表的なものをピックアップします。
経済学部
- ①マクロ経済(広い経済)とデータ分析 …エクセルを使って、日本経済の景気変動や成長を予想。内閣府「国民所得計算表」からグラフを作成し、統計学を学ぶ。(日本大学)
- ②証券投資、金融データ分析 …株式、債券、為替レート、投資信託、金融派生商品などの資産価格に関して、理論・実証研究を行う。(日本大学)
- ③東アジアの経済と社会 …日本を含む東アジアを対象地域に、既成の学問領域の枠を超えた外国研究ないしは異文化研究を行う。(日本大学)
経済学部では、国や国際社会を単位に、お金の動きを数学や統計を駆使して学ぶことが基本です(①②)。一方で、ミクロ経済学(狭い経済)として、企業や消費者に注目した経済を学ぶこともあり、これは経営学と似ています。さらに、③のように本格的な数学を使わずに、経済学にこだわらない研究も可能です。
基本イメージは、「国や国際社会を単位に、お金の動きを数学や統計を駆使して学ぶ」だけど、経営学部に近いことや、数学を使わない研究も可能ということですね。
経営学部
- 日本における株式所有構造の変遷と企業財務に関する研究(明治大学)
- 高級ホテルの従業員満足・顧客満足、財務業績を向上させる方策(明治大学)
- 心理学を活かしたマーケティングやリーダーシップ研究など(明治大学)
経営学部では、その名の通り企業に注目することが特徴です。また、商学部と共通した学生の人気分野がマーケティング(市場調査、分析、商品開発、宣伝など一連の流れの研究)です。全体として、国家や国際間よりも、企業に注目してお金の流れや、その改善方法を学ぶ学問です。
基本イメージは、「企業を視点に、お金の動きを基本的な数学や統計を利用して学ぶ」ですね。商学部とは共通点が多く、一部経済学やほかの学問(心理学など)も学ぶこともあります。
商学部
商学部では、その名の通り商品に注目するのが特徴です。同時に「会計」の文字があるように、簿記(企業の収益、経費、資産等を記録)の考え方を使うことも多く、日商簿記資格を取得し、就活に生かす学生も多いです。また、学生に人気のあるマーケティング(市場調査、分析、商品開発、宣伝の流れを研究)は、経営学部にもありますが、商品がテーマの商学部が本拠地です。
基本イメージは、「商品を視点に、その開発や企業経営を、簿記を使って学ぶ」ですね。商学部とは共通点が多いです。また、簿記は商業高校の優秀な生徒なら日商簿記2・1級に合格することがあり、数学としては基礎的です(ただし数字嫌いは不可)。
以上をまとめると、「経済」は国や国際視点、「経営」はその名の取り企業視点、「商学」もその名の通り商品視点で、お金の動き(経済)を学ぶのが基本です。
経済学では、難関大や一部の講義・ゼミでは、やや高度な数学を使うことがあります。経営学は、マーケティングなど、一部商学のジャンルを取り込んでいます。商学は、簿記を取得する学生が多いのが特徴です(ただし、経営学部や経済学部の学生も取得は可能です)。
経済・経営・商学部の就職率は?
経済・経営・商学部は、専門学校や教員養成、医療系の学部などとは異なり、学んだことを直接生かす学部ではありません。そのため、就職状況に互いに大きな差はありません。
確かに、経営・商学部の学生は、学生時代に学んだ「マーケティングの知識」を生かしたいといった売り込みで、就活をするケースが多いです。
しかし、企業側としては、1~2年座学で学んだ知識をすぐに生かせることはない、うちの業界・うちの企業のやり方を覚えてほしいのように考え、同意しつつも、内定の決定打にはなっていないケースが多いようです。
全く関係のない学部の学生よりは、お金儲けや企業の考え方にアレルギーはないだろうと、多少の加点を行うことはあるかも知れません。しかし、ほかの学部で好きな研究に打ち込み卒業論文で大きな成果を上げ、もともと興味があった商売の世界へ入りたいという学生も、十分高い評価を受けることはでき、決定打にはならないと考えられます。
もし歴史学が好きなら、就職を意識して無理に経済、経営、商学部に進んで勉強に打ち込めないなら、歴史を存分に勉強した方が、就活時の企業受けは良いと言えますね。
結論として、経済・経営・商学部が特段に企業就職に有利とは言えず、また経済・経営・商学部の間の差も少ないです。
ただし、例えば、圧倒的に数字を扱う機会が多い銀行業界などでは、数学を使ってきた学生を重視するといった、業界差はあります。また、なかには学生の気質(お金儲けへの考え方や、キャリア設計への考え方の違い)から、経済・経営・商学部を重視している企業が存在する可能性はあります。
経済系の学部で目指すことのできる資格の例
①特に有力な資格
・公認会計士 …持っていれば生計が成り立つことも多い資格ですが、難度が高いためよく調べることが必要です。一概には言えませんが、筆者の予備校講師時代の経験からは「MARCHクラスの大学」以上に合格できるような学力や学習習慣があれば可能性があります。
・国家公務員、地方公務員 …主に夕方以降、大学内や民間の講座で学ぶ人が多く、経済系の学部でなくても構いません。一般に、法・政治・経済系の学部では、勉強仲間が得やすい可能性はあります。一概には言えませんが、筆者の予備校講師時代の経験からは「日東駒専クラスの大学」以上に合格できるような学力や学習習慣があれば可能性があります。なお、消防官、警察官はそれより易しい大学でも狙いやすいです。
・中学校教諭1種(社会) …以前に比べ、教員採用は広き門となっています。
・高等学校教諭1種(公民/商業/地理歴史/情報) …同上
・国税専門官 …税務署の職員になるために必要な資格です。試験申込者のなかで最終的に採用されるのは1割程度となります。
②武器として持っていたい資格
・日商簿記1~3級 …業界が限定されない資格で、TOEICと並び就活では大きな武器となります。
・情報処理技術者 …経済産業省が主催する情報処理(パソコン、ネットワーク技術)のなかでも重要な資格です。商業高校の高校生にも合格者がおり、ぜひ大学入学前から勉強を始めたい資格です。
・ファイナンシャル・プランニング技能士
・証券アナリスト …社会人の取得が目立ちますが、学生で取得しておけば証券会社からの評価は高くなります。
・税理士 …税の専門家。国がある限り税の仕事がなくなることはありませんが、会計ソフトの進化という環境の変化があります。
・社会保険労務士 …ほぼ全ての会社員が加入する「社会保険」の専門家
・宅地建物取引主任者 …不動産取引の専門家
・行政書士 …役所関係の書類の専門家
・通関士 … 輸出入に際して法律上問題がないか、税金はどうかなどを見極める資格。
・中小企業診断士 …企業コンサルタント希望者のひとつの武器でやや社会人向けです。
経済・経営・商学部で数学は必要?
経済学部では、講義やゼミによっては、高度な数学を利用します。とくに微分、積分、微分方程式、行列、統計が必要となります。難関大では、数学を利用する頻度はやや高いようです。
東大なら数学ができなければついていけない、早慶なら数学を使う人と使わない人にはひとつの壁がある、MARCH以下は英数国での受験が減り数学は使えなくても大丈夫というのが相場のようです。早慶の経済系の学部は、かつては受験生全員に数学を課していましたし、近年早大政経の一般選抜は、数学が必須となりました。
経営、商学部では、基本的な数学、統計と考えてよく、数字アレルギーがなければ問題はないでしょう。
(研究テーマの例)コンビニエンスストアの設計
例えばあなたが、写真のような服屋さんの前を通りかかります。興味はありますが、今お金を持っていないし、買う予定もないとします。あなたはこのお店に入りますか?
多くの人は遠慮するはずです。
・現在お客はゼロのため、入店すれば店員と1:1になり目立つので声をかけられてしまうと予想する。
・レジスペースがはっきりしておらず、知らない間に店員が自分のそばまで寄ってきそうな気がする。
・お金も買うつもりもないので、店側に迷惑かも知れないし、店員と話が持たないと考える。
一方、コンビニエンスストアは「買うつもりがない人」でも気軽に入れる設計になっています。買うつもりがなくても見て回るうちに気が変わるかもしれませんし、何も買わなくてもお店への親しみ(信頼)が増すからです。
コンビニエンスストアは以下のような工夫をしています。
・本や雑誌を通り側に置き、立ち読みしている人が外から見える。
・店員が囲われたレジ内におり、そこから原則として動かない(品物の補充の場合も作業に専念する)。
・買い物をしない客にもトイレを貸し出す。
この結果、とくに買う予定もないお客も、先客が多数いるため店員に観察されることがないと思い、かつ店員が定位置にいる安心感から気軽に入店します。
上のような研究は、経営、商学部がメインですが、経済学部にも、経営や商学を取り込んだ大学があり、学ぶことができる場合もあります。また、経済学部でも専門の教授がいれば学べますし、経営、商学部でも教授次第では学べない場合があります。
経済、経営、商学部は重なりあった部分があり、大学によってもカリキュラムや教授陣に差がありますので、最終的には大学研究が重要です。
経済・経営・商学部生の口コミ
※口コミは古いものもあり、状況に変化が生じている可能性もあります。
数学が出来た方が良いが、出来なくても卒業は出来る。税に詳しくなれる。経済は教科「公民」のイメージが近く、経営は会社経営の要素が強い(学習院)
数学が使えないとほとんどの授業が分からない。(東大―経済)
思っていたよりも忙しくなく、自分のペースで学べた。卒論は書かなくても良い。所属していたゼミでは、様々な企業の株価がどのように形成されるかの分析を行った。(法政)
政治や経済を中心に様々な科目を学ぶことが出来る。学科によっても違うが、経済へ進むなら数学の知識はあった方が良い。直接就職して生かせる内容でないので自ら様々なことを勉強していく必要がある。(早稲田―政経)
他学部と比べて自由な時間が多い。楽に単位が取れる授業も少なくなく、授業にしばられる学生生活ではない。ただ、それは学生たちに「何をしたいのか。何になりたいのか」を厳しく問いかけるものであり、自ら道を切り開いていかなければ何もしないで学生生活を終えることもありうる。何に力を注ぐか(サークル、バイト、学業、Wスクールなど)を決めておくべきです。(早稲田―政経)
初めは抽象的で分かりにくい理論とかを学ぶので、難しくてつまらないです。しかしそのうち専門的なものを扱っていくのでだんだん楽しくなって行きます。(青山学院―経済)
それほど就職難だとは思いません。ゼミを考えて選び就職活動をしっかりした人はちゃんと就職できています。(早稲田―商)
就職試験対策の授業があり単位も取れる。(武蔵―経済)
大学の規模から、開講科目が豊富で様々な学問や先生の意見に刺激を受けることができます。いわゆる実学と言われるマーケティングや経営学、会計学などが花型ですが、論理学や宗教学、文化人類学、社会学といった総合科目として配置される学問を土台としていることがあり、これらの学問的価値観をhow toの学問に活かす機会を見出すことができます。悪い点は著しく学生が多いために履修抽選や講義妨害などが多発することです。しかし、一般的な日大へのイメージより就職状況は良好で80%程度だと思う。(日本―商)
心理学をメインとしたゼミに入ることもできます。特に、経営学やマーケティングは心理学と相関している面もあり、市場調査や学内調査(サンプリング・アンケートなど)を行っているゼミがあります。(日本―商)
有名企業のかたを授業に招いて、製品開発や宣伝などについて講義してもらえる。(青山学院―経営・マーケティング)
厳しい授業が比較的少ないので、自由な時間がおおく、それを何に使うかで大学生活が決まってくると思います。(青山学院―経営)
学べる分野が結構広い。中間考査があるのでイメージよりも勉強が大変。(早稲田―商)
商学部設置科目が一学期につき、20単位しかとれない(オープン科目や他学部設置科目はいくらでもとれる)。三年で4つのコースに別れるまでは、色んな分野を学べるから、経済経営金融系に広く興味ある人には、良いところ。1年は、必修で2つの外国語、基礎数学(=数ⅢC)、基礎経済学、基礎会計学があり、さらにゼミ形式のプロゼミという授業がとれる(分野は限られる)。セメスター制だから、外国語とゼミ以外のほぼ全ての授業が学期単位で終わる。就職希望者の就職内定率はかなり良い(95%越えてたよ、たしか)が、4人に1人が留年する(早稲田―商)
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