高校英語や大学受験英語の勉強をこれから本格化させてゆく方のために、単語、文法、長文など、どれをどんな単元順で学ぶと効率が良いのかをわかりやすくお伝えします。
Q 大学受験の英語をゼロから始めたいのですが、勉強の順番、単元の順番はどうしたらいいですか?
A はい。まずは中学単語のもれを確認し覚え直します。その次に、高校範囲の英単語を学びます。優先順位をつけると、動詞と名詞は特に重要です。動詞・名詞は、SVO(SVC)を形づくることが多く、意味の理解に不可欠だからです。
次の順番が文法ですが、単元は5文型から始めます。前述のようにSVO(SVC)は文の要点となるからです。次の単元は、動詞を名詞に化けさせる動名詞や不定詞。続いて、重要な時をつかさどる時制や分詞(現在分詞、過去分詞)の単元と進みます。
ここまでで文の骨格部分をマスターできていますので、ほかのSVをつなぎ合わせる関係詞、節、格の単元へと進みます。(以上が基礎)
次に標準レベルの前半戦として、半ページ程度の長さの長文を、すべて日本語に直し、日を変えて30回以上音読します(これを当ページでは「超音読」と呼んでいます)。焦って速読(英語のままよむ)に進まず、一見遠回りに見えても和訳と音読を重ねてゆくと、その長文全体が頭に入ります。これが王道です。
英語は「配点が高いから重要」というのは本当?
高校や塾で、受験は英語が重要ということは、聞いたことがあると思います。そのとき、よく配点が高いからと説明されますが、それは必ずしも正しくはありません。
重要なのは、英語は、ほかの教科と比べて、伸びる人と伸びない人の差が激しいということです。
筆者が予備校講師時代に感じたのは、高4の4月に英語の偏差値が55以上の生徒は、順調に伸びることが多いということ。一方、偏差値55未満の生徒は、かなりコンスタントに勉強量を積んでも、偏差値を維持したまま終わるケースが多いことです。
偏差値50前後の生徒は、MARCH(関関同立)を志望することも多いのですが、結果は、良くて日東駒専、実際は、もっと下のランクの大学にしか合格できないケースが少なくないです。
これには、「英語は唯一の真の積み重ね科目」という理由があります。例えば、日本史なら、小学校で1度学び、中学ではリセットして縄文時代から学び、高校でもリセットして縄文時代から学びます。そのため、高校から努力をしても伸びる可能性がある教科です。
一方英語は、中学、高1時代の基礎に抜けがあれば、まず伸びない教科です。例えば高校入試のときに、5教科のうち4番目か5番目に得意だったという人は、残念ながら逆転はまず許されない科目です。このことは、英語の成績を上げるうえで、いちばん重要な大前提です。
STEP1 まず英単語から。目標は3000語。
英語の勉強の正しい順番の1番目は、ありきたりと感じるかも知れませんが、やはり単語が最優先です。
日本語を覚えた順番を考えても、最初に、「ママ」「あれ」「お花」といった単語から覚えたはずです。
例えば、偏差値45~55の方が最大目標に置くことが多い、MARCH(関関同立)クラスの大学を受験するなら、小中学校で習う英単語に加え、約3000語が必要です。これは、英単語ターゲット1900なら、1500語のレベルが目安となります(単語集は、読解を左右する単語に絞ってあるため)
では、3000語の英単語は、どのように覚えれば良いのでしょうか?
英単語のよい覚え方は、人それぞれ異なるのが実際です。とはいえ、覚え方が無数にある訳ではなく、3つの方法(1:1対応型暗記、例文型暗記、長文型暗記)のなかに、あなたに合った正解があるはずです。
1:1暗記法とは、例えば、「suggest:を提案する」、を暗示するのように、英単語1つを、意味1組と対応して覚える方法です。中学生では、この覚え方がメインかと思います。
英単語の覚え方は、下のリンク先を確認頂き、自分に合った方法でというのが結論となります。ただし、単純記憶(1:1暗記)の能力的なピークは、小学生の年代とも言われ、高校生の場合、やや合わなくなっている人も多いはずです。特に、偏差値45~55の方場合、1:1対応型暗記で行き詰まっているが、長文型暗記はまだ早いので、例文型が合うという方が多い傾向はあります。
英単語は、動詞・名詞は特に入念に!
英単語は、形容詞・副詞などに対し、特に動詞・名詞は丁寧に学習します。
He plays soccer every afternoon.
(簡単ですが)上の文は、名詞2つと動詞1つを含みます。英文においては、とくにSVOやSVCの位置にある動詞と名詞は、中心の意味を理解するために非常に重要です。
また、動詞は「次にどんな形(品詞)が来るのかという型」を意識することが重要です。play(する)なら、~をにあたる名詞が来ます。wear(着る)も、~をにあたる名詞が来ます。
Don’t worry, I’m wearing.
上は、とにかく明るい安村さんが、海外で「安心してください、はいてますよ」を英訳して使ったフレーズです。英語圏の人は、動詞が来た瞬間に「次にどんな形(品詞)が来るのかという型」をイメージしますので、wearなら、~をにあたる名詞が来るとイメージされています。そのため、審査員は(この後パンツと言うのだな思い込んで)Pants!を連呼していました。
これが日本人と、英語圏の人々の考え方の差です。英語では「動詞と次の形」をイメージして学ぶことがとても重要です。
Because he wasvery late with an expression of innocence, I got utterly astonished.
例えば、上の文は、少し厄介な単語を含む例文です。
しかし、英語が得意になってくると、動詞であるwasやgotが作る型に注目し、he=late,I=astonishedという関係性を素早く見抜けるようになります。
そうなると、he=late → I=astonishedの関係がイメージでき、astonishedは、「遅刻されて起きる感情」と想像しやすくなります。
英語が得意な生徒は、動詞の型(get~:~を得る《第3文型》、get~:~になる《第2文型》、get on:乗る・進む)などを覚えており、自然に先を読むクセがあります。
動詞の役割 重要な単語だけをつなぐ連結器のようなもの。前後の内容を予想できる。
こうして、長文も圧倒的に速く読めるようになります。
Because he was very late with an expression of innocence, I got utterly astonished.
(訳)彼は悪びれた様子もなく大遅刻したので、私は非常にあきれた
英語が得意な人は、動詞を軸に長文を読んでいます。動詞に出会ったら、必ず①意味、②型(第2文型、第3文型など)、③用法(どのような前置詞と組むか)を覚えてゆくという勉強が必要です。動詞を制する者は、単語を制すると覚えてください。
STEP2 英文法は2冊を何度も回す
赤ちゃんは最初に、「ママ」「あれ」「お花」といった単語を覚えます。次に、あれはお花(英語でいう第2文型)、ママはお花が好き(第3文型)のように文法を覚えます。
したがって、単語のつぎには、文法を学ぶという順番がおすすめです。具体的に言えば、自分のレベルの合った文法書と問題集を1冊ずつ探し、何度もくり返し学ぶ(受験生は何周もすると言う)ことがポイントです。
※高校指定の文法書や問題集があれば、それを使っても構いません。
このとき注意したいのは、偏差値45~55の方場合、高校受験時代から、勉強法が浅くなっていることが良くあります。英語で逆転するためにも、深い学びへのチェンジが必要です。
文法書 | 問題集 | |
浅い学び方 | ・初めから読む ・線を引く | ・初めから解く ・誤ったところを見直す |
深い学び方 | ・問題集で間違えたときに、その部分を読む。 ・大きめのポストイットに要点をまとめたり、自分好みの例文を書いたりする。 | ・初めから解き、誤った問題はチェックし、翌日、1週間後など解き直す。 ・参考書を併用し、理解したうえで正解で切るようにする。 ・問題集全体のどの問題が出ても正解できるまでくり返す。 ・高校の授業などで扱った単元を解く。 |
このように、成績が良い人は、どの科目も深く学んでいることが大半です。「高校の授業」「参考書」「問題集」「自作のまとめ」「自分で調べた例文」などが、有機的に結びついていることが特徴。参考書の言葉をうのみにせず、自分ならこう考える、自分や友達が登場する例文を自作するなど、自分ごと化されているのも特徴です。
偏差値45~55の方場合、まずは、有機的に結びつく、自分ごと化された勉強にシフトするのも、受験必勝法の1つです。
しかし、眺めるだけ、線を引くだけ、1度解くだけの勉強法に比べ、時間がかかるのも事実です。そのため、文法は、単元によってメリハリをつけるのがポイント。
文法は、長文読解力につながる、以下の重要単元を優先して深く学びます。高校や予備校の授業で出てきた単元で構いませんが、基礎から学ぶ場合は下の順番がおすすめです。
- 5文型(動詞と直後の形を意識)
- 動名詞、不定詞
- 時制
- 現在分詞、過去分詞、分詞構文
- 関係代名詞、関係副詞
- 名詞節、形容詞節、副詞節、同格
実際の入試問題から
Our life is part of the life of the Earth, and we draw our ①nourishment from it just as the plants and animals do.
①nourishment ア 慈悲 イ 物資 ウ 食料 エ 活動源
法政大学は、上のような、単語の意味を聞く問題を出したことがあります。nourishmentは、難単語ですが、なかには「食料」の意味で覚えている受験生もいるかも知れません。
andのあとに注目します。まず動詞に目をつけると、we draw nourishment(SVOの第3文型)と抜き出せ、我々はnourishmentを引き出しているという意味になります。
ここで副詞節という英文法を理解している方は、just as the plants and animals doが副詞句だと分かりますので、「植物や動物が(地球から)引き出すのと同様」となります。植物は地球から「食料」を引き出していることはありませんので、エが正解となります。
このように、英単語の意味を聞いているようで、文法を聞くこともよくありますし、長文を読み、問題を解くベースに、英文法があります。
- 5文型(動詞と直後の形を意識) … カードゲームのUNOに「ドロー2」があるように、drawは「引く」という動詞です。英語学習では真っ先に動詞と「その直後の形」を意識します。drawは直後に名詞が来て、(~が)~を引くという第3文型(SVO)を作ります。
- 動名詞、不定詞 …5文型の要素のなかでは、Vを除いて名詞が来ることが多いです。そのため、動名詞(動詞を名詞に化けさせる)の役割は重要で、不定詞の名詞的用法も重要です。
- 時制 …現在進行形や過去完了形は、日本語ではあまり意識しませんのでしっかり学びます。英語らしい表現が、豊かになってゆきます。
- 現在分詞、過去分詞、分詞構文 …現在進行形や過去完了形を作るのが、現在分詞、過去分詞です。
- 関係代名詞、関係副詞 …複数のSVを合体させる、重要な道具です。なお、副詞は動詞を修飾(説明)すると覚えているとつまずきます。名詞以外のすべてを修飾(説明)できる便利な語です。
- 名詞節、形容詞節、副詞節、同格 …複数のSVを合体させる、重要な道具です。動詞を「くぎ」のようなものだとすると、この段階でカラフルな「家」が出来上がってきます。
英文法の重要単元を学ぶための参考書
目安として偏差値が50以下の方は、中学時代の復習から入った方が、結果的には速く進みます。また偏差値に関わらず、参考書とスタディサプリ(動画)を併用すると、より効果が高まります。
中学英文法 | 『Mr. Evineの中学英文法を修了するドリル』(参考書・問題集が合体) ※このドリルは2もありますが、2は英会話学習者(大人)向けです。 スタディサプリ中学講座(参考書と併用) |
参考書 | 『総合英語 Evergreen』 スタディサプリ高校講座(参考書と併用) |
問題集 | 基礎 『アップグレード UPGRADE英文法・語法問題』(1261問) 応用 『Next Stage 英文法・語法問題』(1474問) |
STEP3 英語長文は、中文和訳からが鉄則!
長文学習は、単語と文法が終わったあとに行います。英語のまま読む、速読というのは後回し。和訳から入るのが、成功の近道です。
英語の長文学習は、いつ開始するのが良いのでしょうか?
おすすめは、単語学習が軌道に乗り始め、重要な文法事項(5文型、時制、関係詞、不定詞、分詞、節)を学び終わったあとです。単語学習が全て終わるまで待つ必要はありませんが、重要な文法事項は、終わらせてからの方が、ずっと効率が良いです。
長文学習の正しい順番は、短文(センテンス)、中文(半ページ程度)、長文の順に勉強することです。短文、中文の段階では、必ず全訳を取り入れます。
- 短文〜中文の学習 … 必ず全文の日本語訳(英文解釈)を行います。全訳の過程を飛ばすと、英語の偏差値は伸びません。
- 長文学習 …自分のレベルに合った長文が基本ですが、英語が好きになってきた場合、あえて難度の高い長文を選ぶと、爆発的に伸びることがあります。
短文学習では必ずしも音読は必要ありませんが、中文学習をしたあとは、必ず音読を入れます。目安として、当日10回、翌日10回、1週間後に10回です。その後は、覚えた単語や表現等をキープするために、ときどき音読します。
おすすめの問題集は、以下の通りです。
レベル | 問題集 |
短文学習 | 『入門英文解釈の技術70』(70問) →『基礎英文解釈の技術100』(100問) |
中文学習 | 『イチから鍛える英語長文Basic』(15問)→ 『イチから鍛える英語長文300』(15問)→『イチから鍛える英語長文500』(15問)→『イチから鍛える英語長文700』(15問) ※各巻とも中文としては長めとなるため、後半2段落のみ全文和訳で構いません。 |
(注)『英文解釈の技術100』(入門、基礎がつかないもの)は、早慶レベルですので、後回しで構いません。
英文解釈の技術シリーズは、長く評価を維持している定番の参考書です。
イチから鍛える英語長文シリーズは、2015年に発売された問題集ですが、これまでの問題集を研究し尽くした感がある内容です。メリットは、以下の通りです。
- 入試頻出テーマが強く意識された、具体性が高く印象に残る長文が多い。
- 長文中に出現した英単語を、覚えるための別冊ページがある。
- 音読型の学習を前提とし、方法も明記。別冊として長文+全文和訳のページがあり、書込みなしの音読が可能。音声(CD)つきである。
- 速読に不可欠なスラッシュリーディングのページがある。
- 本文解説、問題解説とも詳しいが、持ち運びに適したサイズ感。
なお、『イチから鍛える英語長文300』のように、末尾につく300、500、700は長文のワード数であり、問題は各冊子とも15問です。
最後に、英語が得意な方向けの情報を少し。英語長文の読み方ですが、早慶レベルに近づくほど、「スラッシュリーディング」が定番化しているのはご存知でしょうか?
通常の和訳は、日本語として正しい語順となるように、和訳します。
“Some students insist that their hair is natural even though it is dyed,” one teacher told Asahi Simbun. “We ask their parents to confirm these claims as their responsibility.”
(通常の和訳)ある1人の教師が「たとえ染めていても、自分の頭髪は自毛だと言い張る生徒もいる」と朝日新聞社に話した。「われわれ教師は、保護者に、責任を持って子の(自毛だとの)主張を確認するように依頼している」と言うのだ。
一方、スラッシュリーディングの場合、読む速さを優先し、なるべく英語の語順のまま、次のように訳します。
“Some students insist/ that their hair is natural/ even though it is dyed,” / one teacher told Asahi Simbun. // “We ask their parents/ to confirm these claims as their responsibility.” //
一部の生徒は言い張る/(どんなふうに?)自分の頭髪は自毛だと/ たとえ染めていても/ ある1人の教師が朝日新聞に話した。// われわれ教師は、保護者に依頼している/ (何を?)彼らの主張が正しいか、親の責任で確認して欲しいと。//
スラッシュリーディングをマスターすれば、驚くほど早く読めるようになります。ただし、スラッシュリーディングには、動詞の知識(意味、型、用法)、基本的な文法事項(5文型、時制、関係詞、不定詞、分詞)が必須です。
これをマスターする前には、どこにスラッシュを入れて良いのか分かりませんが、マスター後は、直感的につかめるようになります。細かい決まりはなく、その人が区切りが良いと感じるところに入れれば良いものです(日本語の読点に近いです)。
大量の勉強が大逆転のカギ
例えば、現代文は、読書経験や背景知識によって、短時間で伸びることがあります。古文は、効率の良い学習ルートが存在します。一方で英語は、勉強の手順も重要ですが、純粋に勉強量が成果に直結しやすい科目です。
入試では英語の得点比重が高めに設定されていますが、なぜでしょうか?
これは、英語がセンスや経験値に左右されず、努力そのものを問うことができる科目だからです。努力の目安とは、土日に10時間以上の勉強をし、平日は5時間以上の勉強をすることです。文系生が、偏差値45~55からスタートする場合、初めのうちは、勉強時間の7割を英語に割いても構いません(理系は5割)。
英語は、一定の勉強時間を超えると、正解率が跳ね上がり面白くなる、中毒性のある科目ですので、得意な人は100%英語が好きと答える特徴があります。まずは、200時間の集中学習をクリアし、もしかしたら嫌いではないかも?というところまで持っていってください。
中文和訳 練習問題
中文とは1ページの半分程度の文章です。下は法政大の出題の長文の一部で、やや難度が高いため、このような場合は短めでも構いません。和訳をされたかたは、コメント欄まで投稿いただければ、「日本語としての分かりやすさ」を中心に一言アドバイスをいたします。
Whatever we may wish to think, we are creatures of Earth; our life is part of the life of the Earth, and we draw our ①nourishment from it just as the plants and animals do. The rhythm of Earth life is slow; autumn and winter are as essential to it as spring and summer, and rest is as essential as motion. To the child, even more than to the man, it is necessary to preserve some contact with the ebb and flow of life on Earth. The human body has been adapted through the ages to this rhythm, and religion has ②embodied something of it in the festival of Easter.
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