百人一首で学ぶ古典の世界 「光る君へ」から古文の授業まで

受験ネット
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大河ドラマ「光る君へ」で改めて注目されている、古典の世界。古典の世界を学ぶには百人一首がおすすめです。なかでも下に選定した10句は、特に学びが深いものでおすすめです。

一 花の色は移りにけりないたずらに わが身世にふるながめせし間に

古文の世界では、花と言えば桜。上の和歌では、「長雨による桜の散り際」の絵が描かれています。和歌のほとんどが、「絵」とそれが示唆する「思い」のワンセット。和歌は、一言添えた写メール、あるいは旅先からの絵はがきのような構造をとっています。上の和歌では、作者のどのような「思い」が添えられているのでしょうか?

女性である作者(小野小町)の老いに対する諦念のような思いが込められています。

(訳)桜の色は、むなしく衰え色あせてしまった、春の長雨が降っている間に。同じように私の見た目も衰えてしまった、恋や世間のもろもろのことに思い悩んでいるうちに。

二 これやこの行くも帰るも別れては 知るも知らぬもあふ坂の関

現在では訪ねる人も少ない逢坂の関。京都と、越前方面などへつながる琵琶湖を結ぶ関です。越前守(現在で言う知事職)に任官する父とともに、越前へ向かった紫式部もここを通っています。

和歌は、文字で書かれますが、読み上げられる機会も多く、音の響きに気が配られることもあります。和歌では、漢詩や現代音楽のようにな「韻」はあまり発達しませんでしたが、一部そういった事例もあります。上の和歌では、韻を踏んでいるように感じませんか?

「こ」れや「こ」の行くも帰るも別れては 「知」るも「知」らぬもあふ坂の関
この和歌は、音のリズムに注意して詠まれており、多くの人が、中学で習い気づかぬうちに暗記している和歌となっています。

(訳)これがあの、京から出て行く人も帰る人も、知り合いも知らない他人も、皆ここで別れ、そしてここで出会うと言う有名な逢坂の関なのだなあ。

三 陸奥みちのくのしのぶもぢずり誰ゆゑに 乱れそめにし我ならなくに

「しのぶもぢずり」が厄介な和歌ですが、「誰ゆゑに 乱れそめにし」が「思い」を歌っているのでは?と想像できれば、一で確認したように、和歌は写メールのようなものですので、何かの絵、それも乱れを表す絵が描かれているはずです。どのような絵が想像できますか?

実際には、「しのぶもぢずり」は乱れ模様の染め物なのですが、もし調べて頭に入れるのが面倒に感じたら、現代に置き換えて頂いて構いません。例えば、今にも雨が降りそうな曇り空などが想定できます。

(この曇り空は)誰ゆゑに 乱れそめにし我ならなくに

なお、「陸奥のしのぶもぢずり」のように、写メールの「写真」にあたる部分がきれいに切り離せる場合、それを序詞じょことばと呼びます。正確には、意味や音のつながりから語句の前におかれる修飾語句であり、機能は枕詞に似るが、序詞は通常2句以上と定義されます。

(訳)陸奥で織られる「しのぶもじずり」の模様のように、乱れる私の心は、いったい誰のせいでしょう? 断じて私のせいではなくあなたのせいなのですよ。

四 立ち別れいなばの山の峰に生ふる まつとし聞かば今帰り来む

和歌は、写メール(写真+メール)あるいは絵はがきのようなものと説明してきました。この和歌は、まさに絵はがきです。和歌(立ち別れいなばの山の峰に生ふる まつとし聞かば今帰り来む)から、「絵」にあたる部分を抜き出すことができますか?

「いなばの山の峰に生ふるまつ」が正解です。「松」の写真を送り、あなたが「待つ」と聞いたなら今すぐ戻るつもりですよと気持ちを伝えています。稲葉山は鳥取県ですので、京まで帰るのは簡単ではありませんが、それでも京への思いが強いということです。

なお、「まつ」という言葉は、写メールや絵はがきの「写真(絵)」と「文章(気持ち)」を結び付ける接着剤のような役割を果たしています。これは掛詞かけことばと呼ぶことはご存知の方が多いと思いますが、掛詞は、絵と気持ちを結び付ける働きをすることがよくあります。例えば、恋人に飽きられることへの不安は、秋風などを添えることが多く、どちらにもとれるように「あき」と平仮名で書かれます。

古文テスト対策問題100題 「光る君へ」関連回も掲載

以下は、学びの深い百人一首を挙げておきます。解説は追って書き添えます。

五 住の江の岸による波よるさへや 夢の通ひ路人目よくらむ

六 難波潟短き蘆のふしの間も 逢はでこの世を過ぐしてよとや

七 名にし負はばあふ坂山のさねかづら 人に知られでくるよしもがな

八 みかの原わきて流るるいづみ川 いつみきとてか恋しかるらむ

九 山里は冬ぞさびしさまさりける 人目も草もかれぬと思へば

十 心あてに折らばや折らむ初霜の 置きまどはせる白菊の花

古文テスト対策問題100題 「光る君へ」関連回も掲載

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