古文単語集ゴロゴの著者で、東進ハイスクールの板尾博行先生が逮捕されました。代表作の古文単語ゴロゴは、そもそも入試で使えるのでしょうか?
東進ハイスクールの板尾博行先生が逮捕されたと、読売新聞などが報じました。詳しくは、こちらをご覧ください。
筆者:元予備校国語科
古文単語集のゴロゴとは?
古文単語集のゴロゴは、語呂合わせで古文単語を覚える仕組みです。
あさまし(形) | 「朝」目覚「まし」に【驚きあきれる】 |
あてなり(形動) | 「あて」だっせ、【身分が高い】のは |
あそび(名) | 「遊び」欲【しいか】、【缶】蹴り【ゲン】コ (意味)詩歌、管弦 |
あく(動) | 「悪」魔【満ち足りる】が、やがて【嫌になる】。 |
ゴロゴは入試に使えるのか?
予備校の古文の講師のなかには、ゴロゴの使用を勧めない人もいます。古文の語感を正しく把握できず、正確に解釈ができなくなる、などの理由があるようです。
しかし、筆者(元予備校国語科)の意見は異なります。
- 名詞、動詞 … ゴロゴを使っても良い
- 形容詞、形容動詞 … 例文を複数使い、単語のイメージを覚えた方が良い。
名詞、動詞はゴロゴを使っても良い
月のおもしろきに、夜更くるまであそびをぞし給ふなる(源氏物語 桐壺)
古文単語のなかで、名詞、動詞は丸暗記に向いています。
例えば上の文(の一部)が入試問題に出題され、「あそび」に傍線が引かれたとします。正解は、管弦(=管楽器と弦楽器の演奏)なのですが、選択肢を作るとして、管弦の言葉の使用は避けにくくなります。
つまり、名詞や動詞は、意味(訳語)の丸暗記に向いていると言えます。いいかえれば、名詞や動詞は、訳語の範囲が狭く定まることが多く、丸暗記向けです(例文を使わず、ガツガツ覚えた方が早い)。
形容詞、形容動詞はゴロゴを使わない方が良い
二年が間、世の中飢渇して、あさましきこと侍りき(方丈記)
① 驚きあきれることがあった ②とても酷いことがございました
一方、例えば、形容詞のあさましは、良い、悪いの両方の意味を持つうえに、意味(訳語)が多数あり、意味に広がりがあります。そのため、【驚きあきれる】を丸暗記している受験生を引っかけるのは簡単です。
まず、【驚きあきれる】以外の意味を問うことは、正解率を落とす手段の1つです。
また、上の例文(文の一部)のように、【驚きあきれる】の意味の文脈でも、傍線部を長めに引き、選択肢の【驚きあきれる】以外の部分に誤りをひそませておき、別の選択肢を正解とすることもできます。
上の例文では、敬語の侍りがあるため、②が正解となり、ゴロゴで学んだ受験生は引っかかりやすいと言えます。
形容詞、形容動詞はイメージで頭に刷り込む
また、それ以前の問題として、形容詞・形容動詞は意味の広がりが大きくなっています。例文学習を重ね、イメージで頭に刷り込んだ方が、文脈に沿って脳が自動翻訳するため、早く読むことができます。
例えば、センター試験の古文のように、解く時間に対して文章が長い入試問題では、ゴロゴの学習では、時間オーバーになる可能性もあります。
逆に言えば、中堅以下の大学など、軽めの古文が選ばれる大学で、①古文に苦手意識が強い、②時間がない、という受験生なら、形容詞、形容動詞もゴロゴで片づける手はあります。
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