キャリアコンサルタントをめざすなら、企業の人事管理・労務管理の内容を理解しておくことは重要です。クライエント側の悩みが、人事や労務管理(賃金)に関わることも多いからです! 社会人基礎力、組織人4能力も、キャリアを考えてもらう上で重要です。
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労働市場3大情報(労働経済白書・能力開発基本調査・職業能力開発基本計画)と職業訓練、教育訓練給付金|キャリコン基礎理論対策 #10 | 人事労務管理、社会人基礎力と組織人4能力|キャリコン基礎理論対策#11 | 学校のキャリア教育を分かりやすく(キャリアコンサルタントのために) #12 |
- 人事・労務管理とは、モノ・カネを除いたヒトの管理です。会社側は、採用、就業条件、報酬の管理に目が行きがちです。木村周は、ほかにどのような管理を挙げていますか?(ヒント:ホーソン実験)
- 3つの社会人基礎力は、チームワーク、シンキングのほか、もう1つは何ですか?
👉人間関係管理、アクション
- 組織人としての4つの能力は、〇〇設定能力、職務遂行能力(知識、技能、経験、判断力、企画力など)、〇〇能力、問題解決能力です。
- 人事評価には、客観性、公平性、透明性、加点主義が必要です。ハロー効果、〇〇的誤差(営業マンは、明るくあるべきなど恣意的論理の適用)、〇〇誤差(自分がモノサシ)などに注意が必要です。
👉課題設定能力、対人能力、論理的誤差、対比誤差
筆者のキャリコン対策のノートを活字化したものです。折見て修正をしておりますが、誤りや不十分な内容があるかと思いますが、最終的には完成させたいと考えています。
人事・労務管理
人事・労務管理とは、採用から退職まで、人材に関わる一連の管理をさします。経営の全体像のなかで、ヒトに特化したものです。
- 経営管理 … ヒト、モノ、カネ、情報
- 人事・労務管理 … ヒト( 雇用管理、労働条件管理、人間関係管理、労使管理 )
会社側から見た人事労務管理
雇用管理 | 就業条件管理 | 報酬管理 |
採用、配置・異動、能力開発、雇用調整・退職 | 労働時間・安全衛生 | 賃金・昇進・福利厚生 |
上の3つの管理は、人事評価との関連が深く、社員区分制度(雇用形態)、社員格付け制度という基盤システムに支えられています。
社員格付け制度は、能力・職務・役割の3つを軸に、社員を格付けする制度です。下のように分類されます。日本では、職能資格制度、職務等級制度、役割等級制度が主流(ハイブリッドも多い)。
頻出 職能資格制度 | (階段を上がるイメージ) ・終身雇用、年功序列時代の日本で主流。職能等級と役職が連動しない。 ・給与は、職能等級で決まるので、ジョブローテーションが行いやすい(新しい領域のため役職は下げるが、職務等級は変わらないので、給与が落ちないなど)。 ・職能等級は、筆記試験等で判断。ポストが開かなくても、能力を高めれば職能等級と給与が上がるので、転職を抑止できる。人件費がふくらむ。 |
職務等級制度 | (成果主義のイメージ) ・アメリカで主流。バブル後の日本で成果主義とともに導入。 ・従事している仕事の重要度で社員を格付け。例えば、営業課長は、経理部長と同じ給与に設定するなど。 ・専門性が高まるが、ジョブローテーションは難しくなる。無駄がなくなり、人件費が抑えられる。 |
役割等級制度 | ・日本型成果主義。やや抽象的な「役割」(部下をまとめる等)で等級を決める。 ・ジョブローテーションしやすい。 |
木村周による人事・労務管理
木村周は、人事・労務管理の内容を、次のように説明しています。
雇用管理 | 労働条件管理 | 人間関係管理 | 労使管理 |
採用、配置、教育・訓練、異動・昇進、退職 | 賃金管理、労働時間管理、安全・衛生管理(=健康)、労働条件管理 | ホーソン実験(人間関係が生産性に大きな影響)が有名 | 労使関係 |
人事管理の構成
人事管理は、次のような要素から構成されています。
- 採用管理 … 重要。採用計画(部署要請の積み上げ式|全社の採用可能数設定)、募集(男女雇用機会均等法などを遵守)、選考、雇用契約(労働基準法などを遵守)まで。ミスマッチを防ぐことが肝心で、インターンシップ、紹介予定派遣などが普及。(注)参照。
- 配置・異動の管理
- 人材開発の管理
- 就業条件の管理
- 人事評価の管理
- 昇進の管理
- 報酬の管理
- 雇用調整、退職の管理
(注)雇用区分
無期雇用 | ①新卒採用 ②中途採用 … 経験者、未経験者 |
有期雇用 | ①派遣社員 ②契約社員・パート |
日本の採用の特徴
日本の人事採用には、2つの特徴があります。
- 新卒中心の正社員採用
- 学歴別採用管理 … 高卒、大卒、専門卒などを分けて採用
しかし現在は、若年の労働力供給の不足から、 中途採用・非正規が拡大しています。今後は、高齢者、外国人労働者の活用が課題となります。
配置と異動に関する用語
前提
- 外部労働市場 … 社会が労働者を配分
- 内部労働市場 … 企業内で労働者を配分
配置と異動の仕組み
配置と異動は、会社が発案するものだけではありません。
- 会社主導 … ジョブローテーション(さまざまな経験を積ませる。または透明性の担保として)
- 会社主導を補完 … 自己申告制度、社内公募制度
配置と異動には、次のような概念があります。
- 地域限定正社員制度 … 新しい仕組み
- 出向 … 、社員の身分を維持したまま、他者の指揮命令の下で業務に従事する異動。関連会社支援型、能力開発型、排出型( 中高年齢者を企業外に排出 )。
- 転籍 … 元の会社に籍を残さないもの
人材開発の管理について
企業内の人材開発には、次の3種類があります。OJTが中心で、OFF-JTや自己啓発は、補完するものとなります。
- OJT … 上司や先輩が指導する、社内での訓練。時間的、コスト的にも効果的であり、また実践的な知識や技能を習得できるというメリットがあります。
- OFF-JT … 英会話学校など外部での訓練。コストが高くなる、従業員の能力や適性などに応じた個別的な教育が難しいというデメリットもあります。
- 自己啓発
企業における人材育成の中心はOJTであり、Off-JTと自己啓発はそれを補完するものとされます。
CDP(キャリアデベロップメントプログラム) … 教育研修だけでなく、個人の希望や適性を考慮しながら、育成的な人事異動やOJT、社外での自己啓発を含めた多様な実践と組み合わせて、総合的に能力・職務開発を進める。会社が、個々の長期的なキャリア開発を進める仕組み(正社員向け)。
組織人としての4つの能力
人材開発は、例えば、次の4つの能力の育成を目標とします。新入社員からベテラン社員まで、誰もが育てるべき能力のリストです。
- 課題設定能力
- 職務遂行能力
- 対人能力
- 問題解決能力
3つの社会人基礎力
新入社員に対しては、例えば、次の3つの能力の育成を目標とします。
- アクション … 前に踏み出す力
- シンキング
- チームワーク
経営戦略に沿った能力
- 創造的能力
- 専門的能力
教育訓練制度
教育訓練制度 … 企業内で行うもの。対象者(階層別、専門別、課題別)、内容、方法(OJT、OFF-JT、自己啓発)、実施主体で分類される。OJTを重視する企業が多い。
人材◯◯◯◯助成金 … 職業訓練制度や人材育成制度を導入した事業主に助成する制度。雇用保険の受給者(必ずしも正規雇用でなくてもよい)に対する取り組み。
キャリア◯◯◯助成金 … 非正規雇用者に対する取り組みに対し、事業主に助成する制度。
👉人材開発支援助成金、キャリアアップ助成金
- 労働者側が利用できる制度 … ◯◯◯◯◯◯は、個人がキャリアをプランニングし、職業能力を証明するために利用できる。
- 主に雇用保険を受給している求職者が利用できる … ◯◯◯訓練
- 障害者が利用できる制度 … 障害者職業能力開発校
👉ジョブカード、離職者
就業条件の管理
労働時間や職場の作業環境など、賃金以外の管理。
労働時間管理
労働基準法 … 原則として1日8時間、1週間40時間を超えて労働させてはならない。
労働基準法については、8、40のほか、100、720の数字も大切だよ。詳しくは、労働基準法を見てください!
現在の課題 … 労働時間の短縮(有給休暇の取得促進、時間外労働短縮)、労働時間制度の弾力化(フレックス・タイム制、変形労働時間制、みなし労働時間制)。
フレックスタイム制
フレックスタイム制(コアタイムとフレキシブルタイム)を設ける場合、就業規則、労使協定が必要です。清算期間を1ヶ月より長くする場合、労働基準監督署長に届け出が必要です。(厚労省|フレックスタイム制のわかりやすい解説)
変形労働時間制
変型労働制は、例えば月末の忙しい時に多めの労働時間を設定し、そのほかを短くし、月単位で帳尻を合わせる制度です。1ヶ月〜1年以内の任意の期間を設定できます。小規模な接客業では、1週間単位でも設定できます。
人事評価の管理
社員の能力や仕事ぶりを評価し、賃金・昇進・能力開発などに反映すること。
- 人事考査 … 上司による
- 人材アセスメント … 専門家による
- 多面評価(360度評価) … 上司、部下、同僚、顧客による
(参考)目標管理制度(MBO) … 個別またはグループごとに従業員が主体的に目標を設定し、その達成度を評価する評価制度。
評価の基準
- 能力評価
- 〇〇評価 … 姿勢、意欲、態度。新入社員に適応されることが多い(日本)。
- 業績評価 … あらかじめ目標の設定を行う
👉情意評価
評価の原則
- 客観性 … 考課者訓練
- 公平性
- 透明性
- 加点主義 … できている部分を積極的に評価してゆく
(正誤問題)評価の公平性とは、人事評価の基準、過程、結果などの詳細を公開することで、被評価者の納得感を高めるものである。
ヒント:公平性と透明性の混同に注意。上の記述は、公開の文字があるため、透明性。答えは、誤り。
評価の過誤
イラストを見て、どのような評価の過誤か考えてみましょう。分からない場合、下のヒントを見ます。
※ハロー効果 … 部分の印象で、ほかも評価してしまうこと。ハローは後光。 ※論理的誤差 … 独立した項目を、評価者が論理的に関連づけ、プラス(またはマイナス)の評価をしてしまう現象のこと。 ※寛大化傾向 … 甘くつける。嫌われてしまうかもれない、など。 ※中心化傾向 … 標準レベルに評価点が集中。日本人に多いと言われる。 ※対比誤差 … 客観的基準でなく、自分自身を基準にしてしまう。 ・厳格化傾向 … 辛くつける。部下の成長のために、など。 ・遠近効果(=近接誤差) … 最近のことを過大に、以前のことは過少に。 ・逆算化効果 … 結論ありきの評価。 (注)人事専門家の太田隆次は、※印がとくに重要とします。 |
昇進管理
昇進管理の方針
- 内部昇進制
- 社員区分別昇進管理
- 年功別昇進管理 … 管理職ポストの不足
報酬の管理
報酬は、労働費用(コスト)の1つとなりますが、労働者の意欲等を左右するので、バランスが重要です。
労働費用
- 現金給与 … ①毎月決まって支給する給与(所定外給与=残業代を含む)、②賞与と期末手当
- 現金給与以外 … ①退職金、②法定福利(=厚生年金、健康保険など)、③法定外福利(=社宅、保養所など)、④その他の費用
賃金管理
- 賃金=基本給+業績給(インセンティブ給、短期級)
※基本給=生活給(属人給、年齢や勤続によるもの)+職能給
賃金管理の目的
- 賃金コストを適正に維持
- 社員を確保する
- 労働意欲を上げる
- 労使関係を安定化する
賃金管理の分野
- 総額賃金管理 … 今後の見込みなど。企業経営に関係する。
- 個別賃金管理
賃金の配分ルール
- 内部公平性の原則
- 外部競争性の原則 … 業界の相場(社会的相場水準)との関係。
労働基準法(24条) … 賃金は
- その国の通貨で
- 直接労働者に
- その全額を
- 毎月1回以上
- 一定の期日を決めて
支払う
雇用調整・退職管理
方法
- 賃金調整策 … 賃金の削減
- 数量調整策 … 労働時間数(所定外労働時間の削減、ワークシェアリング)、労働者数を削減(※)
※労働者数の調整政策
- 入口政策 … 採用の抑制
- 出口政策
- 非正社員を多く雇用
- 内部調整政策 … 配置転換、出向、転籍など
手順
- 労働時間数の削減
- 自然減を待つ
- 内部調整
- 有期契約社員の雇止め
- (4段階までを経たうえで)人員削減 ①希望退職募集、②整理解雇(指名)
※雇用調整助成金
備考
・障害者雇用率は2.2%が必要(法定雇用率)。
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