助動詞「る・れ」の識別の区別を、動詞や動詞以外の活用語尾を含めて、わかりやすく説明します。
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助動詞「る」「れ」の識別 重要順ランキング
助動詞「る」「れ」の識別の重要順ランキングです。
1位 e段+らりるれ の「ら」「り」「る」「れ」は 完了
2位 1位以外の助動詞が、自発・可能・受身・尊敬の「る」「れ」
(a段+「る」「れ」と覚えてもよい)
==ここまで押さえれば、得点力はかなりつく==
3位 完了の助動詞「り」は、存続(~ている)の用法もある。
4位 助動詞「る」「らる」の意味は、文脈判断でよい。ただし「可能」は、平安期は打消しを伴いやすい、「自発」は感情に関連する動詞につきやすい、この2点は押さえておくと便利。
5位 「る」「れ」は動詞やその他の品詞の一部であることもある
ただし、前提として、下の知識があると応用が効きます。
古文文法第9位 語尾が む り し(じ) の助動詞
語尾が「り」の助動詞はラ変(断定の「なり」を除く)
古文文法第8位 下二段型に活用する助動詞
る・らる・す・さす・しむ・つ は下二段。
Q 助動詞を抜き出し、活用形(終止形等)を答えなさい。
e段+らりるれ の「ら」「り」「る」「れ」は 完了より、のこれるの「る」が完了の助動詞です。終止形は「り」となり、ラ変型ですので、「る」は連体形です(「ぞ」の結びと考えてもよい)。
なお、有明の月を目の前に見ている和歌と取れますので、厳密には存続の助動詞となります。
『ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば ただ有明の 月ぞ残れる』
ホトトギスが鳴いた方を眺めやれば、ホトトギスの姿は見えず、ただ明け方の月が淡く空に残っているばかりだった。
「る」「れ」の識別 すごい例文
いと思ひのほかなる人のいへれば、人々あやしがるに、みな都しのばる。
(口語訳)まったく思いがけない人が(船旅の終わりを喜ぶ上手な和歌を)言ったので、人々は不思議がるが、みな自然と都が思い出される。
ほかなる人 … 体言のあとのため、断定の助動詞「なり」の連体形が候補ですが、ここでは存在の意味となります。
いへれば … e段+らりるれ に当てはまるため、完了の助動詞「り」の已然形です。
人々あやしがるに … 動詞「あやしがる」の一部です
都しのばる … e段+らりるれ に当てはまらない助動詞のため、自発・可能・受身・尊敬の「る」ですが、ここでは自発です。
1位 e段+らりるれ の「ら」「り」「る」「れ」は 完了
上の法則から、完了の助動詞「り」はラ変、自発・可能・受身・尊敬の助動詞「る」は下二段です。
未然 | 連用 | 終止 | 連体 | 已然 | 命令 | |
り | ら | り | り | る | れ | れ |
る | れ | れ | る | るる | るれ | れよ |
活用表を並べてみると、「る」「れ」が紛らわしくなります。そのため、「る」「れ」の識別という入試問題が出てきます。
接続 | 未然 | 連用 | 終止 | 連体 | 已然 | 命令 | |
り | e段音 | ら | り | り | る | れ | れ |
る | a段音 | れ | れ | る | るる | るれ | れよ |
分かりやすく言うと、「り」の接続はe段音、「る」の接続はa段音です。
このことで、e段+らりるれ の「ら」「り」「る」「れ」は 完了 の法則がすんなり飲み込めればそれでOKです。例題の前まで、読み飛ばしてください。
古文が好きな方や、国文学へ進まれる方は、もう少し掘り下げて理解しても構いません。
接続(詳細) | 接続 | 未然 | 連用 | 終止 | 連体 | 已然 | 命令 | |
り | サ変未然形、四段已然形 ※さみしいリカちゃんと覚える (近年の研究で、四段命令形説もあり) | e段音 | ら | り | り | る | れ | れ |
る | 四段、ラ変、ナ変の未然形 | a段音 | れ | れ | る | るる | るれ | れよ |
サ変未然形、四段已然形は、「せ」または「え・け・せ・て・ね……」ですので、つまりe段音です。四段、ラ変、ナ変の未然形は、必ずa段音になります。
あまり複雑に考えなくても、①e段+らりるれ の「ら」「り」「る」「れ」は完了、②それ以外の助動詞が、自発・可能・受身・尊敬の「る」「れ」となると押さえておけば、大半の問題が解けます。
※暗記が苦手でなければ、②は、a段+「る」「れ」と覚えてもよいです。
例題 完了の助動詞「り」を抜き出せ。
うらうらに照れる春日に雲雀上がり心悲しも独りし思へば
正解 e段+らりるれ の「ら」「り」「る」「れ」は完了より、照れるの「る」が正解です。完了の助動詞「り」の連体形とまずは押さえますが、入試では「存続」の意味まで求めることがあります。
なお、「上がる」は1語の動詞、「独り」は1語の名詞です。
2位 e段+らりるれ 以外の助動詞が、自発・可能・受身・尊敬の「る」「れ」となる(a段+「る」「れ」と覚えてもよい)
接続 | 未然 | 連用 | 終止 | 連体 | 已然 | 命令 | |
り | e段音 | ら | り | り | る | れ | れ |
る | a段音 | れ | れ | る | るる | るれ | れよ |
上の表を見て、下の①か②が、すんなり飲み込めればそれでOKです。
① e段+らりるれ に当てはまらない助動詞が、自発・可能・受身・尊敬の「る」「れ」
② a段+「る」「れ」は、自発・可能・受身・尊敬の助動詞
かの大納言、いづれの船にか乗らるべき。
(口語訳) あの大納言は、どの船にお乗りになるのだろうか。(尊敬)
「る」「れ」はa段音を好みますが、「弓矢して射+れ+じ」(弓矢で射ることもできないだろう)のように、直前がa段にならないことがあり、その場合「らる」が登場します。「ら」が仲人役を果たすということです。
弓矢して射られじ
(口語訳)弓矢で射ることもできないだろう。(可能)
覚えられた。深掘りは不要!という方は、例題の前まで、読み飛ばしてください。
古文が好きな方や、国文学へ進まれる方は、もう少し掘り下げて理解しても構いません。
接続(詳細) | 接続 | 未然 | 連用 | 終止 | 連体 | 已然 | 命令 | |
り | サ変未然形、四段已然形 ※さみしいリカちゃんと覚える (近年の研究で、四段命令形説もあり) | e段音 | ら | り | り | る | れ | れ |
る | 四段、ラ変、ナ変の未然形 | a段音 | れ | れ | る | るる | るれ | れよ |
らる | 上一段・上二段・下一段・下二段・カ変・サ変の未然形 | a段音以外 | られ | られ | らる | らるる | らるれ | られよ |
例題 助動詞「る」「らる」を全て抜き出せ
いらへもせでゐたるを、「などいらへもせぬ」といへば、「涙のこぼるるに目も見えず、ものもいはれず」といふ。
正解 a段+「る」「れ」から、言はれずの「れ」(可能)が抜きだせます。「ゐたる」は、動詞「ゐ」+存続の助動詞「たり」、こぼるるは、動詞「こぼる」の連体形です。
間違えた方は、「ゐた」「こぼ」は動詞の活用形として不自然であることに、目をつけてください。a段+「る」「れ」とは、a段音で終わる動詞+「る」「れ」という意味です。
- 「ゐた」「こぼ」… 動詞の活用形(変化した形)ではない
- 「いは」…動詞の活用形(「いふ」の未然形)
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3位 完了の助動詞「り」は、存続(~ている)の用法もある。
e段+らりるれ の「ら」「り」「る」「れ」は 完了、と覚えますが、この「完了」は広い意味であることに注意してください。
広い意味 | 詳細な意味 | |
つ・ぬ | 完了 | 完了・強意(確述) |
たり・り | 完了 | 完了・存続 |
過去は「き・けり」、完了は「つ・ぬ・たり・り」、推量系は「む・むず・じ・まし/らむ・べし・まじ・らし・なり・めり」のように、おおまかに把握すると学習に便利なためです。
例文 うらうらに照れる春日(はるび)に雲雀(ひばり)上がり心悲しも独りし思へば
照った(完了)の訳では不自然で、照っている(存続)の訳がしっくりくるはずです。
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