【簡単古文】過去の助動詞き・けり 意味の違い

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古文の過去の助動詞「き・けり」の違いについて説明したページです。重要な知識とマニアックな知識をはっきりわけ、無駄のない学習につながるように配慮しました。

過去の助動詞き・けりの重要度、基礎知識

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過去の助動詞「き・けり」の違いに関する知識は、重要度が41位以下です。時間をかけて学習する必要性は高くありません。ただし、他の語と関連して問われやすい活用表や接続は非常に重要です。

[助動詞・識別]古文文法 重要ベスト40|覚えられないを速攻解決!

入試上覚えておくべきことは、和歌中の「けり」はほぼ全て詠嘆。次に重要なのは、会話文中や「なりけり」「べかりけり」に表れる「けり」は詠嘆が多いということです。

教科書で重視されるき=直接体験、けり=間接体験(伝聞)過去の違いを活用する入試問題は、やや高度で、出題頻度は低くなります。

【基本】前提の知識を確認しておこう

古文文法第2位 ラ変型動詞の活用
(ラ変)ら・り・り・る・れ・れ

古文文法第5位  連用形接続の助動詞
(連用形接続) つ・ぬ・たり・けり・たし・たし・・けむ

古文文法第7位  助動詞「き」の活用表
(き)せ・○・き・し・しか・○

古文文法第9位 語尾が「り」助動詞は原則ラ変
断定の助動詞「なり」が例外

Q 過去の助動詞をそのまま抜き出しなさい。

ちはやふる(5) (BE LOVE KC) コミック – 2009/6/12 末次 由紀 (著)

「し」が正解です(ちぎりおきし)。露にかかるため、連体形(せ・○・き・・しか・○)となります。

ちぎりおきし させもが露を 命にて あはれ今年の 秋もぬめり
お約束してくださいました、よもぎ草の露のようなありがたい言葉を頼みにしておりましたのに、ああ、今年の秋もむなしく過ぎていくようです。

【重要】和歌中のけりは詠嘆 「なりけり」「べかりけり」に表れる「けり」は詠嘆が多い

花の色は移りにけりないたずらに わが身世にふるながめせし間に

この和歌では、(自らの美しさにも見立てて)桜の花の色は色あせてしまったなあ、と「詠嘆」の気持ちを表現しています。詠嘆とは深い感動という意味です。

「ただこの西面にしも、仏据ゑたてまつりて行ふ、尼なりけり

光源氏(=嵐の櫻井翔のイメージを持つとよいです)が病気になり、山奥の寺で加持祈祷をしてもらったときのことです(今なら病院ですが、昔は加持祈祷が普通)。

夕方に暇つぶしに近所の立派な家をのぞくのですが、予想に反して尼さんがいたため驚いているところです。(訳)仏道修行する尼であったのだなあ。

助動詞「けり」には、間接体験過去(伝聞過去)と詠嘆がありますが、これは現代語の「け」に近いものです。

「これ去年海の家に行って夕日見た時の写真だよ」「そんなこともあった……」

これは友人から聞いて(伝聞して)、いま久しぶりに思い出し深い感動(詠嘆)を覚えている表現です。このように「けり」には、(1)他人から聞いた過去の話、(2)感動したの片方または両方を備えています。

一方、「去年海の家に行って夕日を見た」の「た」は、直接体験の過去ですから古文では「夕日(夕陽)見き」と書きます。

Q 次の「けり」は、間接体験過去か詠嘆か答えよ。

ちはやふる(8) (BELOVEKC) コミック – 2010/3/12 末次 由紀 (著)

和歌のなかにあるため、詠嘆が正解です。

『逢ひ見ての のちの心に くらぶれば 昔はものを 思はざりけり』
恋しい人とついに逢瀬を遂げてみた後の恋しい気持ちに比べたら、昔の想いなど、無いに等しいほどのものだったのだなあ。

「けり」=①間接体験(伝聞)過去 ②詠嘆、「き」=直接体験の知識はいつ使うの?

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「けり」=①間接体験(伝聞)過去 ②詠嘆、「き」=直接体験
難関大ではこの知識で主体(主語)判別などをさせることが、まれにあります。

主人公が全国各地でナンパをする武勇伝である伊勢物語は、「昔、男ありけり」で始まることで知られます。作者は「男(通称昔男)」と直接会ったことはないとわかります。

昔男(イケメン)は、何と伊勢神宮でお勤め中の皇族女性(斎宮)をナンパします。「二日といふ夜、男われてあはむといふ」とあります。わずか2日目で、今夜そっちに行ってもいいだろ?と無理強いします。今でいうと壁ドンでごり押しする雰囲気です。夜、斎宮の方から昔男の部屋に訪れますが、古文では女性が動くのは珍しいことです。

ページは後半に続きますが、後半は参考の知識です。

(参考)「けり」や「き」は死語になったのですか?

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「けり」や「き」は死語になったのですか?

過去の助動詞き・けり、完了の助動詞つ・ぬ・たり・り は、現代語では全て助動詞「た」に集約されてしまいました。

昨日食べた(過去)、今知った(完了)、ブレイクした芸人(存続)。

過去の助動詞「けり」は、現代語の「け」に似た要素があります。

「これ去年海の家に行って夕日見た時の写真だよ」「そんなこともあった……」 間接体験(伝聞)かつ詠嘆の意味を持つわかりやすい事例です。助動詞「き」があくまで過去に視点を持つのに対し、助動詞「けり」は現在に視点を持つことが特徴です。

「あおげば尊(とうと)し」に出てくる、「♪互いに睦み 日頃の恩」は過去の助動詞「き」の連体形です。「あり日の面影をしのぶ」も同様。現代語に痕跡が残っています。

※謡曲や浄瑠璃は「そもそもこれは……」で始まり、「……の浦に着きにけり」などで締めることが多くなります。このことから終わらせることを現代語で「けりをつける」と言います。

(入試でほぼ問われませんが)わが身世にふる ながめせしまに…の「せ」って何?

花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめしまに

ながめせしの「し」は過去の助動詞 き の連体形です。接続は連用形。しかしながめせしの「せ」はサ変動詞「す」の未然形のようです。なぜなのでしょう?

「き」の接続は正確には次の通りです。入試上はほぼ不要の知識です。

連用形接続。ただしサ変、カ変には未然形につく場合がある。

世の中に たえて桜の なかりば 春の心は のどけからまし

なかりせばの「せ」は過去の助動詞「き」の未然形ですが、過去というよりも反実仮想(英語の仮定法)の用法と言えます。入試上はほぼ不要の知識です。

桜のなかりば(=桜がもしなかったとすれば)、という反実仮想の用法は、英語ならIf it were not for “Sakura”(a cherry tree), となります。日本語、英語の壁を越えて事実に反する過程には過去形を使うことが分かります。

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