ポートフォリオとは「運べる書類」という意味です。総合型選抜で大々的に導入されるはずでしたが、運営団体の許可が取り消され、大きく縮小しています。現在その精神は、活動報告書に受け継がれています。
ポートフォリオは、大学入試では芸術系を除き縮小
ポートフォリオとは「運べる書類」という意味です。簡単に言えば、これまでの活動を記録した書類です。2021年度入学生から開始される総合型選抜(旧AO入試)で大々的に導入されるはずでしたが、運営団体の許可が取り消され、大きく縮小しています。
2021年度入学生から開始された大学の新入試では、知識や技能だけでなく、「思考力・判断力・表現力」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を重視することとなりました。この幅広い学力を図るモノサシとして、小学校から記録し続け、大学入試を経て、就活まで使えるようなポートフォリオの構想がありました。
しかし、大学入試で採用予定だった「JAPAN e-Portfolio(ジャパン・イー・ポートフォリオ)」の運営団体が財政難となり、早くも2020年8月に文科省が許可を取り消しました(日本経済新聞)。一方で小学校から高校までのポートフォリオである「キャリア・パスポート」は引き続き、学校教育で採用されています(文科省)。
もともとの制度設計では、分厚いキャリア・パスポートを、イー・ポートフォリオに要約し、大学に提出するイメージでした。
大学入試では、美大を除くと中部大学、都留文科大学で、イー・ポートフォリオに限らず、ポートフォリオを採用した入試が実施されていましたが、中部大学の建築学科(公式サイト)に残存しているほかは、美大や芸術系での採用が多いようです(東京造形大、武蔵野美術大、桜美林大ー芸術文化学群、日本大学ー芸術学部)。
美大や芸術系学部のポートフォリオは、作品ポートフォリオに分類され幅広い学力を示すものと、主旨が異なります。
ただし、日大芸術学部では、「探究活動、生徒会・委員会、学校行事、部活動、学校以外の活動、留学・海外経験、表彰・顕彰、資格・検定の8項目から、自身の学びのテーマに関連する項目を選択し、あなた自身をプレゼンテーションできるポートフォリオを制作」という『学びのポートフォリオ』も残されており、これは幅広い学力を書き記すものです。
参考 キャリア・パスポート以外のポートフォリオ
Classi(ベネッセ、ソフトバンク)、マナビジョン(ベネッセ)、スタディサプリ(リクルート)、Feelnote。甲南中学・高等学校での活用例。
ポートフォリオの趣旨は、現在の大学入試ではどう反映されているの?
幅広い学力を評価するはずのポートフォリオが縮小してしまい、大学に受験生の経験値をどう伝えればいいのでしょうか?
はい。調査書と活動報告書がその代わりを務めます。
新入試にあわせて導入された、新しい調査書には、「総合的な探究の時間の評価」欄に加え、「指導上参考になる諸事項」の欄が各学年ごとに6つ作られます。
しかし、各項目は、縦3cm、横5cm程度と限られるため、大学側がより詳しく知りたい場合、活動報告書の提出を求めたり、面接で詳しく掘り下げたりすることが想定されます。
ポートフォリオや活動報告書は、幅広い学力を意識して書く
ポートフォリオや活動報告書には、高校生活で頑張ったことを書けばよいのでしょうか?
はい。旧入試の考え方なら「人物」として幅広い活動を記載すればよいのですが、新入試では「思考力・判断力・表現力」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」といった幅広い学力が重視されています。そのため、幅広い学力を意識しつつ取捨選択を行うことが重要です。
部活動、係、委員会、生徒会などもポートフォリオには書けますが、勉強、とくに自分でテーマを決めて調査し、まとめて発表する活動が評価されます。これは、グループ学習でも構いません。
高校では、総合的な探求の時間(旧・総合的な学習の時間)や、理数探究、古典探究など探究のつく授業で、各自またはグループごとに取り組んだ内容のほか、夏休みなどを使って、自主的に取り組んだことでも構いません。
「JAPAN e-Portfolio」は廃止になりましたが、もともと文科省の指定を受けたポートフォリオです。そこに採用されていた8項目は、文科省のお墨付きともいえ、参考になります。
- 探究活動
- 学校行事
- 学校以外の活動
- 部活動
- 表彰・顕彰
- 留学・海外経験
- 生徒会・委員会
- 資格・検定
参考として、Classi(ベネッセ、ソフトバンク)が採用した項目も掲載しておきます。
- 進路・キャリア
- 学習
- 探究活動
- 生徒会・委員会
- 学校行事
- 部活動
- 学校以外の活動
- 留学・海外経験
- 表彰・顕彰
コメント