共通テストや模試の古文の文章、全く意味が分からずマジで読めないんですが? あれを読めたり、時間内に解けたりする方法はあるのですか?
はい。20分で解決できます。本文を読まないといったリスクの高い方法ではなく、予備校生が実際に入試で取り組み成果を出せた方法です。理系の方も、かんたんにマスターできます。
結論ファースト
知識は模試の前日くらいでも準備OK
- 単語は後回しでよい(古今異義語が大半であるため)
- 現代語と大きく変わったのは「助動詞」。頻出1位〜12位を押さえれば苦手意識が飛ぶ。
- 「現代の人間関係に置きかえる意識」だけで理解は3倍速に。人間関係を抑えるため敬語は3項目程度は必要(頻出23〜25位)。
読み方はカンタン
- リード文、設問、注では「いつ、どこで、誰が、何を」の場面情報を効率よく盗む。
- 本文では「心情→誰が・なぜ」の公式を使う(小説を読む公式だが、教えているのは中学受験の四谷大塚くらい)。
古文が読めない! 速く読む方法はあるの?
共通テストの古文の過去問、意味が分からなくて、何度も読んで、結局時間不足でした。
はい。実は、専門的に研究している学者の中でも、古文をノ―ヒントで読める人は少ないと言われます。
そのため受験生は、読む前にヒントを得る必要があります。リード文、注、設問を読めばよいのですが、普通に読んでは時間不足になります。これは裏ワザがあります。「いつ、どこで、誰が、何を」の場面情報に絞って抜き取ればいいのです。
また、古文単語を暗記すれば読めるというのは、大きな誤解です(実際に筆者が教えていた生徒でも、単語の知識は豊富で本文は読めない人は多くいました)。実は、古文には現古同義語が、圧倒的に多いのです。例えば下の和歌のアンダーラインは、おおむね古今同義語です。
花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに
現代との違いが大きいのは実は助動詞。苦手意識の源泉である助動詞の基本(下の青マーカー)を押さえた方が、読むときの引っかかりは減ります。
花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに
文法事項は頻出1位〜12位のみ押さえればOKです。読めるようになり興味がわいてきたら、文系の方は単語学習もやってみましょう。
基礎文法・場面情報→いよいよ本文 裏ワザはあるの?
事前に文法の基本を頭に入れ、場面情報を、リード文、注、設問(要するに本文以外)からさっと抜き取ればいいんですね? その後本文を読むときの裏ワザはありますか?
はい。例えば外国人が、芸能界の「ジャニーズ騒動」を描いた日本語の文章を読むとします。
この時に、ジャニー喜多川氏、ジャニーズタレント、カウアン・オカモト氏(問題を告発した元ジャニーズタレント)が出てくるとしてそれぞれの「身分」や「人間関係」を知らないまま読むのは、難しいです。タレントはジャニー喜多川氏に逆らうことができない立場(身分)だったということです。
古文では、身分と、そのヒントになる敬語は、要所だけをさっと押さえます。
- 敬語は3項目だけ(頻出24〜26位)押さえる。古文常識は役人の身分の基本(古文常識で重要な「身分関係」がかんたんに分かる)だけで良い。
- やや難しい身分関係は、リード文、注、設問に「場面情報」として書かれていることが多い。
古文のなかにもジャニーズ騒動のような権力が関わる話は、多く出てきます。逆に言うと、古文を読むときに、この話今のジャニーズの話だよね?のように、現代に置きかえるクセをつけると、一気に理解が進み、苦手意識が半分になります。
筆者が教えていた生徒には、この裏ワザを知っただけで、苦手意識(古文文法の暗記が嫌で、脳が古文自体を拒否していたとのこと)が取れた、受験生もいます。
実際の入試問題から 場面情報の盗み方
①リード文
次の文章は、『栄花物語』の一節である。藤原長家(本文では「中納言殿」の妻)が亡くなり、親族らが亡骸をゆかりの寺(法住寺)に移す場面から始まっている。これを読んで、後の問い(問1~5)に答えよ。
リード文からは、「いつ、どこで、誰が、何を」の場面情報を読み取ります。例えば友達が「あれ、おいしいみたい」とだけLINEで言って来たら、いつどこで誰が何を食べたの?と気になって仕方がないはず。人は場面情報がないと、人は頭がパニックになる性質を持っています。
中納言(かなり偉い人)の妻が死ぬ でかい家で
上は、ある受験生が実際に取ったメモです。でかい家という情報はリード文にはありませんが、中納言は現代なら内閣の大臣にあたりますので、家は大きいと見てよいです。
②設問
設問では、よく出てくる語句に注意します。「おくやみの手紙」「返事」とありますが、中納言(現在で言えば内閣の大臣)のように偉い人なら、そういった手紙が殺到したのもよく分かります。
「妻の描いた絵」が複数回出てきます。亡くなった妻は、上手に絵を描いていたのかも知れません(ヒントを得るだけで、決めつけないように注意します)。
悲しみ、涙といったよく出てくる語をチェックしますが、後半の設問では、少しだけ時間をかけます。リード文、設問、注では場面情報(いつ、どこで、誰が、何を)の抜き出しが目的。ある受験生はこの設問では、「誰が」に着目し、注も見つつ人物を確認したとのことです。
注を見ると、「大北の方」は妻の母、「僧都の君」は妻のおじでお坊さんと分かります。この辺りが存命ということは、中納言(長家)の妻は、若くして亡くなったのかも知れません。下は、ある受験生が実際に取ったメモです。
場面情報
・中納言(かなり偉い人)の妻が死ぬ でかい家で
・偉い人なのでおくやみが殺到
・妻は絵が上手い? 若くして死んだ??
・大北の方は妻の母 僧都の君は妻のおじ(坊さん)
・進内侍=誰?
「進内侍」は、家系図に出ていませんので、仕えていた人(お手伝いさん)かも知れません。
③注
はい。高校入試や、やさしめの現代文では、注は飛ばしても損がないことがありますが、古文では、かなりの大損。必ずチェックしてください。いつ、どこで、誰が、何をの「場面情報」を抜き取ります。
場面情報
・中納言(かなり偉い人)の妻が死ぬ でかい家で
・偉い人なのでおくやみが殺到
・妻は絵が上手い? 若くして死んだ??
・大北の方は妻の母 僧都の君は妻のおじ(坊さん)
・進内侍=誰?
・火事があった(絵が燃えた??)
いつ、どこで、誰が、何をの「場面情報」をまとめると、起きたかもしれないこと(絵が燃えた??)が想像できることがあります。この想像は、当たらないこともあるのですは、脳が準備運動をした形になるため、本文の理解のスピードは相当速くなります。
本文では、事前に盗んだ場面情報の正解を確認しつつ、「心情→誰が・なぜ」の公式で効率よく
ようやく本文! 訳しながら読めばいいですか?
はい。共通テストで古文を解く人は、現代文も解きますので、最低3問。すると、持ち時間は26分程度となり、訳しながらでは厳しいです。古文のまま読むのがおすすめです。ただし、
- 冒頭は、場面情報の確認に重要なため、訳しながらでよい。
- 途中、話がまったく理解できなくなったら、その少し前から訳してみてもよい。
- メインは、「心情→誰が・なぜ」の公式で効率よく。
このような、スタンスがおすすめです。「心情→誰が・なぜ」の公式は、クルマや自転車で言えば速いギアにあたり、訳しながらは遅いギアにあたります。
大北の方も、この殿ばらも、またおしかへし臥しまろばせたまふ。これをだに悲しくゆゆしきことにいはでは。また何事かはと見えたり。さて御車の後に、大納言殿、中納言殿、さるべき人々は歩ませたまふ。いへばおろかにて、えまねびやらず。
場面情報の確認
・大北の方(妻の母親)が、子を早くになくし、ふしている。
おもに冒頭で、場面情報の答え合わせをしたら、あとは「心情→誰が・なぜ」の公式で効率よく抑えてゆきます。なお、説明文・評論に近い古文の場合は、誰が=筆者となり、心情は、筆者の意見や判断、原因は判断の根拠となります。
中納言殿の御返し、
起き臥しの契りはたえて尽きせねば枕を浮くる涙なりけり
「心情→誰が・なぜ」の公式
・悲しい(涙) →中納言が、妻が早くに亡くなったので
人の心情は直接表現されることもありますが、表情(涙など)、セリフ、行動で暗示されることが大半です。このことは、共通テストや入試問題の作成者は試したがります。下は、セリフに注意が必要な、難しい部分です。
内裏うちわたりの女房も、さまざま御消息、聞こゆれども、よろしきほどは、「今みづから」とばかり、書かせたまふ。
「心情→誰が・なぜ」の公式
・悲しく返事を書く余裕がない(今みずから=そのうちに) →中納言が、妻が早くに亡くなったので
妻が早くに亡くなり、非常に悲しい気持ちに包まれているため、中納言(長家)は「そのうちに自分から」とだけ返事を書いたと考えられます。
すると問2は解けてしまいます。
問2 傍線部A「『今みづから』とばかり、書かせたまふ」とあるが、長家がそのような対応をしたのはなぜか。その理由として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。回答番号は[ 25 ]。
① 並一通りの関りしかない人からのおくやみの手紙に対してまで、丁寧な返事をする心の余裕がなかったから。
④ 見舞客の対応で忙しかったが、いくらかの時間ができた時には、ほんの一言ならば返事を書くことができたから。
悲しく返事を書く余裕がない心情は、①の丁寧な返事をする心の余裕がなかったがよいでしょう。④は、見舞客の対応で忙しかったに絞っており、悲しさを含んでいません。
このように、入試問題自体が「心情→誰が・なぜ」をつかむの法則を駆使して作られていますので、この法則は、読解だけでなく正答にもつながります。
この公式は、説明的な文章では「判断→筆者が・なぜ」と応用できます。つまり国語とは、「心情→誰が・なぜ」をつかむ訓練に徹した科目とも言えます。評論、小説、古文(物語調、評論調)、漢文(物語調、評論調)とすべてに貫く公式です。
漢文にも応用できる
漢文も全く同じ仕組みで、読めるようになります。
- リード文、設問、注では、いつ、どこで、誰が、何をの「場面情報」を抜き取る。
- 本文では、場面情報の正解を確認しつつ、「心情→誰が・なぜ」を中心につかむ。
漢文に多い評論調の文章では、リード文、設問、注では場面情報の代わりに「テーマ」をつかみ、本文では「判断→筆者が・なぜ」を中心に素早く読みます。
なお、漢文では返り点を追って返り読みすることで、脳のリソースを消費してしまい、話を理解する余裕がなくなることがあります。
返り点(レ点、二点)は、目的語(訳すと「を・に」等がつく)と助動詞につくことを理解したうえで、一見難度が高いように見えますが白文に慣れるのが超裏ワザです。
(例)尽人事 待天命
上の漢文では、目的語の人事(を)、天命(を)に返り点が付きますが、2文字以上返るため、二点を付けます。
返り点があるのだから活用すればよいと思うかもしれませんが、「返り点(レ点、二点)は、目的語と助動詞につく」ことを理解しているだけで、返り点(一、二など)に気を取られなくなるため、苦手意識は減り、場面情報(またはテーマ)、「心情→誰が・なぜ」「判断→筆者が・なぜ」に意識を向けられるため、かなり読解が楽になります。
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