古文常識で重要な「身分関係」がかんたんに分かる

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古文の話の筋が全くに近いほど分からないです。身分関係の把握が大事だと聞いたことがあるのですが、何を理解しておけばいいでしょうか?

受験ネット代表 加藤詳細
早大卒、予備校講師を経て国家資格キャリアコンサルタント(登録番号20022587登録証)。高校内講演歴10年670回。
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Q 古文の話の筋が全くに近いほど分からないです。身分関係の把握が大事だと聞いたことがあるのですが、何を理解しておけばいいでしょうか?

A はい。古文のなかで特に意味を取りづらいのは、物語や、物語調の随想です。いずれも登場人物や作者が、身分関係を強く意識して行動しますので、身分把握は必須です。

大前提として、物語・随想に多く登場する貴族は、現代で言えば、政治家や役人ような人たちと理解しておきます。ただし政治の一環として華やかな儀式も多く「華やかに暮らす、政治家や偉い役人(官僚)たち」と見て良いです。

貴族の身分はシンプルで、重要なのは1~6位となっています。

位階主な呼称役割のイメージ高校なら
権力者天皇・摂政・関白首相・官房長官校長・教頭
1~3位(20人前後?)大臣おとど・大納言・中納言内閣の各大臣(=意思決定)生徒会
4~6位(800人前後?)参議・中将・蔵人官僚(=実務)各委員会
5~6位かみ(県知事のイメージ)役人学級委員(級長)
※会社なら、上から「社長」「部長」「課長・係長」「主任」のイメージです。

1~3位は内閣にあたり、話し合いや議決が主な仕事。上達部かんだちめと呼ばれますが、4位の参議も例外的に上達部に含みます。

天皇のそばで実務を行うことができるのは、6位の蔵人までとなり、殿上人と呼ばれます。同じ6位でも守や介(副知事のイメージ)は、天皇のそばに上がることができませんでた。

権力者 天皇・摂政・関白の仕事は?

位階主な呼称役割のイメージ高校なら
権力者天皇・摂政・関白首相・官房長官校長・教頭
※会社なら「社長」のイメージ
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摂政や関白は、天皇を支える形で政治を動かすと、日本史で習いました!

はい。その通りです。幼少の天皇につくのが摂政、成人なら関白と呼ばれます。関白とは、天皇に集まる情報すべてに関わるというのが語源です。

摂政・関白は、藤原家が独占しましたが、多くの場合次期天皇(皇太子)と、自分の娘を結婚させることで義理の父になり、摂政や関白の地位を得る方法が取られました。天皇としても、自分の妻の父親が自分を補佐してくれるのは、自然なことかと思います。

内閣 大臣(おとど)・大納言・中納言の仕事は?

位階主な呼称役割のイメージ高校なら
1~3位(20人前後?)大臣おとど・大納言・中納言内閣の各大臣(=意思決定)生徒会
※会社なら「部長」のイメージ
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大臣はおとどで、読み方は違いますが、いまの内閣の大臣だいじんと似ていますね。

引用 内閣官房広報室

はい。その通りです。現在でも政治家は内閣に入り大臣を務めることが大目標ですが、平安期でも1位の太政だいじゃう大臣、2位の左大臣、右大臣、内大臣は大目標であり、古文によく出てくるのは、左大臣、右大臣、内大臣です。

ちなみに序列は、左→右→内ですが、大河ドラマの「光る君へ」でライバルを追い越して関白に近い役目を得ますが、就任時の地位は右大臣のままでした。

※正確には漢字で一位、二位、三位のように書き、三位は「さんみ」と読みます。

官僚 参議・中将・蔵人の仕事は?

位階主な呼称役割のイメージ高校なら
4~6位(800人前後?)参議・中将・蔵人官僚(=実務)各委員会
※会社なら「課長・係長」のイメージです。
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参議・中将・蔵人は、現代で言えば、上級の国家公務員である「官僚」なんですね。国会中継で大臣が困ったときに、代打で出てくる人ですよね?

首相や大臣は、実務に詳しい秘書官や官僚のアドバイスを受けることも多い(引用 日本経済新聞)

はい。その通りです。意思決定を担う大臣に対し、官僚は実務(実際の具体的な仕事)を担当するため、細かい運用や情報に強い特徴を持っています。古文の世界では、3~4位に該当する、参議・中将・蔵人などが、これに当たります。

高校で言えば、大臣・大中納言は生徒会(=意思決定)、参議・中将・蔵人は委員会(=実務)に当たります。例えば生徒会が「美化週間」を決めたとして、実際に校内の清掃を担当するのは美化委員のメンバーです。

県知事 守の仕事は?

位階主な呼称役割のイメージ高校なら
5~6位かみ(県知事のイメージ)役人学級委員(級長)
※会社なら「主任」のイメージです。
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守は県知事にあたり、参議・中将・蔵人といった官僚より下なんですね。ちょっと意外でした。

はい。現在は官僚出身の県知事も多く、官僚が目指す役職の1つですが、古文の世界で守は、主に中小の貴族が就く役職で、地下ちげと呼ばれ天皇の居所に入ることは許可されていませんでした。

中将・蔵人は殿上人と呼ばれ、天皇の指示を受けたり、そばで仕事をしたりしていましたし、参議は大臣や大中納言と同様、上達部かんだちめと呼ばれ天皇とディスカッションする立場でしたので、かなりの差があります。

それでも守を任命されれば、現在の年収に直すと約680万円とも言われ、生活に困るようなことはなかかったと考えられます。

まとめ

位階主な呼称役割のイメージ高校なら
権力者天皇・摂政・関白首相・官房長官校長・教頭
1~3位(20人前後?)大臣おとど・大納言・中納言内閣の各大臣(=意思決定)生徒会
4~6位(800人前後?)参議・中将・蔵人官僚(=実務)各委員会
5~6位かみ(県知事のイメージ)役人学級委員(級長)
※会社なら、上から「社長」「部長」「課長・係長」「主任」のイメージです。

大河ドラマ「光る君へ」の重要人物、藤原道長は、わずか16歳で官僚にあたる5位に昇進。22歳で3位、24歳で中納言、30歳でライバルを追い越し右大臣、さらに31歳で左大臣に昇進しています。

このとき実質摂政に近い役割を果たしていましたが、摂政の役職をもらったのは政界引退の近い、51歳でのことでした。

※年齢は数え年。生まれた年を1歳とし以降正月に更新。誕生日の前か後かを意識しなくてもよく、年表でよく用いられる。

恵まれた家柄で、いきなり中納言でも良いようにも思えますが、やはり実務担当の経験があってこそ、政治の適切な意思決定ができますし、参議・中将・蔵人をまとめることもできます。家柄の影響を受けていたとはいえ、理にかなった身分制度だったとも言えます。

※会社員になぞらえた図も置いておきます。

位階主な呼称役割のイメージ会社なら
権力者天皇・摂政・関白首相・官房長官社長・役員
1~3位(20人前後?)大臣おとど・大納言・中納言内閣の各大臣(=意思決定)部長
4~6位(800人前後?)参議・中将・蔵人官僚(=実務)課長・係長
5~6位かみ(県知事のイメージ)役人主任
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