古文の識別問題でとくに頻出となる「に」の識別。このページでは、「にき・にけり」と「に・・・あり」を中心に、複雑な「に」の識別を、分かりやすく説明します。予備校講師経験者が担当します。
「に」の識別 重要順ランキング
「に」の識別は複雑に見えますが、にき・にけり・にあり の攻略で、半分以上は制覇できます。
1位 にき・にけり の「に」は完了の助動詞「ぬ」連用形
2位 に…あり の「に」は断定の助動詞「なり」連用形
↑ ここから上がとくに重要。深く学ぶ必要あり ↑
3位 形容動詞(ナリ活用)の連用形の活用語尾 …状態・性質を表す語(例「あはれに」)
4位 格助詞の「に」 …「山に向かいて」のように、英語の前置詞のイメージ。
5位 接続助詞の「に」 …「神仏にいのるに、」のように、読点の前が基本。
↑ 重要だがシンプル。まずは書いてあることを押さえる。 ↑
6位 ナ変動詞 死ぬ・往ぬ・去ぬの連用形の活用語尾 …見て動詞と分かり誤答しにくい
7位 副詞の一部(さらに、まさに、げに、だに) …重要な副詞の暗記がカギ
↑6位は誤答しにくいし、7位はさっと副詞を見直せばよい↑
ただし、ナ変型、形容動詞型の活用に慣れていることが、前提となります。
「に」の識別 すごい例文
「に」の識別のすごい例文🔥です。7つの識別が、一発で理解できます。声に出して繰り返し読むことで、頭のなかに古語の「に」が定着します。
法則を暗記しても意外に解けませんが、例文を分析しながらの暗記は、得点力が高いです。
あるやしろにすずろにゆきいたりにけり。霊験たしかなるにこそ、神仏にいのるに、まさに死にゆかむ。
(口語訳)ある神社にあてもなく行きついたのだった。ご利益は確かなようであるが、神様に祈るのものの、いまにも死にそうである。
- あるやしろに …「やしろに行く」(go to やしろ)のように前置詞のイメージのため格助詞です。
- すずろに …すずろは「制御外・想定外」という状態を表します。形容動詞の活用語尾です。
- ゆきいたりにけり。…にき・にけりの「に」は完了より、完了の助動詞です。
- 霊験たしかなるにこそ、…にこそあらめの省略。にありの「に」は断定より、断定の助動詞です。
- 神仏に …「神仏に」(pray to 神仏)のように前置詞のイメージのため格助詞です。
- いのるに、…読点の前であることをヒントに、接続助詞と判断します。読点は省略可能ですので、「読点を打てる場所」と覚えておくと、なお心強いです。
- まさに …副詞であることを知らなくても、まさなり、まさに……は変ですので副詞の一部です。
- 死にゆかむ …死ぬ・往ぬ・去ぬはナ変ですので、ナ変動詞の活用語尾です。
Q 「花の色は」の和歌の中の「に」の品詞を、かんたんに説明せよ。
- 「うつりにけりな」 …にき・にけりの「に」は完了より、完了の助動詞です。
- 「いたづらに」 …いたづらは「むなしい」という状態を表します。形容動詞の活用語尾です。
- 「世に」 …「世に」(live in 世)のように前置詞のイメージのため格助詞です。
- 「ながめせしまに」 …「間に」(on 間)のように前置詞のイメージのため格助詞です。
1位 にき・にけりの「に」は完了
にき・にけりの「に」は完了? それだけ?
はい。にき・にけりの「に」は完了(の助動詞)。これを覚えておくだけでOKです。易しい割には頻出しますので、お得な知識と言えます。
例文 花の色はうつりにけりないたづらに わが身世にふるながめせしまに
「うつりにけり」とありますが、助動詞「けり」は連用形接続です(文法頻出5位)。そのため、「に」は、完了の助動詞「ぬ」の連用形か、断定の助動詞「なり」の連用形か、すぐには判断がつきません。
しかし、完了の助動詞「ぬ」の連用形は、き・けり・たり・けむにしかつかず、断定の助動詞「なり」の連用形はそれらには絶対につかないため、「にき・にけりの『に』は完了」と覚えるのが正解です。にたり、にけむは、頻度が少ないため、割愛しています。
確認 にき・にけりの「に」は完了
テスト① あるやしろにすずろにゆきいたりにけり。霊験たしかなるにこそ、神仏にいのるに、まさに死にゆかむ。
(ア)断定の助動詞「なり」の連用形
(イ)完了の助動詞「ぬ」の連用形
(ウ)動詞「似る」の一部
テスト② 花の色はうつりにけりないたづらに わが身世にふるながめせしまに
(ア)形容動詞の一部
(イ)断定の助動詞「なり」の連用形
(ウ)完了の助動詞「ぬ」の連用形
※次のパターンを覚えさせる場合もありますが、すぐに覚え込む必要はありません。
- 「にたり・にけむ」
- 「にき・にし・にしか」
2位 に…ありの「に」は断定
に…ありの「に」は断定! これは、シンプルだけど、「にこそ」「にや」みたいな、ファミリーがいますよね。
はい。シンプルですが、ファミリーが多いのが、に…ありの「に」は断定の法則です。断定の助動詞「なり」は、形容動詞型の活用でした(古文文法14位)。
未然 | 連用 | 終止 | 連体 | 已然 | 命令 |
なら | なり | なり | なる | なれ | なれ |
に |
連用形の「に」は、実は下の形でしか用いません(応用部分ですので、深く意識する必要はありません)。
体言・連体形 + に + 助詞 + 補助動詞
例文 男、異心(=浮気心)ありて、かかるに や あらむと思ひ疑ひて、
[口語訳]男には、浮気心があって、このように(私を機嫌よく送り出)しているのではないか。
補助動詞(あり等)の存在がポイントとなりますので、に…ありの「に」は断定、と覚えるのは、理にかなっています。ただし、省略形や応用した形がいくつかあります。
にありファミリーですね!
かかる に や あら む
かかる に あらむ(助詞「や」の省略)
かかる に や(補助動詞「あり」省略)
かかる に や はべらむ(「あり」に似た意味の補助動詞)
に…ありの「に」は断定 がベースですが、その他の3パターンは、ファミリーだと押さえてください。
ちょっと混乱がある人は、つぎの3つを知っていればOKですよ!
① に…ありの「に」は断定
② にや・にか・にこそ の「に」も断定
③ に…おはす、侍り、候ふ の「に」も断定
【3】形容動詞の活用語尾は、よく問われますので、多少意識します。状態・様子+に がパターンです。
(例)あはれに、静かに
【4】このほかの「に」は、特に記号問題では見た目から判断ができますので、後回しで構いません。次の例文を、軽く押さえておきます。
神仏(かみほとけ)にいのるに、まさに死にゆくべし。
- (識別)神仏に【格助詞】いのるに【接続助詞】、まさに【副詞の一部】死に【ナ変動詞の活用語尾】ゆくべし。
「に」の識別 ここまで分かれば応用講義も分かる
「に」の識別は、入試古文の大きな山場の1つ。ここが分かったと言い切れれば、点数になりますし、古文全体への理解度も上がります。「に」の識別に関しては、映像授業の併用もおすすめです。
スタディサプリ古文の、高3 古文<文法編> – 第11講 「なむ」の識別 / 「ばや」の識別 / 「に」の識別 のチャプター3が役立ちます。
このページとの違いは、さらに応用に踏み込むことです。このページを、しっかり理解したうえで講義に臨めば、1発で理解できるはずです。
- 高3 古文<文法編> – 第11講 「なむ」の識別 / 「ばや」の識別 / 「に」の識別 のチャプター3
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