古文助動詞「なり」の識別を、形容動詞、動詞との区別も含めて説明しています。
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「なり」の識別 重要順ランキング
「なり」の識別は、伝聞推定と断定の助動詞を押さえれば、ほとんど終わったも同然です。あとは、形容動詞をさっと押さえます。動詞は感覚でも処理しやすいです。
1位 伝聞推定の助動詞 … 終止形 + なり
2位 断定の助動詞 連体形(体言)+ なり
3位 形容動詞の活用語尾 … 状態・性質+なり
==ここから上で入試問題の大半が解ける==
4位 動詞「なる」の連用形 … 日本語の意味の感覚で処理できる。
ただし、前提として、終止形接続の助動詞の知識は必須です。終止形接続の助動詞は、推量系の助動詞のリストも兼ねていますので、絶対に押さえます。ラ変、形容動詞の活用は、さらっと押さえればよいです。
文法第2位(ラ変)ら・り・り・る・れ・れ
文法第14位(形容動詞型) なら・なり/に・なり・なる・なれ・なれ
先に押さえておきたい、2つのこと
現代語の「なり」を考える
現代語には、助動詞「なり」は残っていませんが、まんがの「我輩はコロ助なり!」にその姿が残っています。
意味は、我輩(私)はコロ助だ!ですので、断定の助動詞と分かります。コロ助は名詞ですので、断定の助動詞は、体言や連体形に接続することがわかります。
伝聞・推定の「なり」は、現代語では「らしい」にまとまっていますのが、「あのキノコは食べると死ぬらしい」のように、やはり終止形に接続しています。
終止形接続の助動詞を覚えていれば、一生間違えない
助動詞の接続を押さえないまま、「なり」の識別を勉強している方はいませんか?「なり」の識別は、終止形接続の助動詞をマスターすれば、終わったも同然です。
終止形接続の助動詞は、いまここで覚えてください。終止形接続とは、上に動詞などが来た場合、終止形にするという意味です。
(終止形接続) らむ・べし・まじ・らし・なり・めり
「うさぎとかめ」の歌の、「どうしてそんなにのろいのか」で覚えます。「どう して そん なに のろい のかー」(歌で覚える)
「らむ・べし・まじ・らし・なり・めり」が終止形接続であることを覚えました。では、この「なり」は伝聞推定でしょうか? それとも断定でしょうか?
らむ・べし・まじ・らし・なり・めり
ヒントは、周りのメンツです。「らし」は、現代語のらしいに残っていますから、推量系と分かります。したがって、終止形接続の「なり」は伝聞・推定(~そうだ、~ようだ)です。この導き方を覚えていれば、試験会場で、思い出せなくなることがありません。
助動詞「なり」の識別 すごい例文
「なり」の識別のすごい例文です。4つの識別が、一発で理解できます。
声に出して繰り返し読むことで、頭のなかに古語の「なり」が定着します。法則を暗記しても意外に解けませんが、例文を分析しながらの暗記は、得点力が高いです。
笛吹きすまし過ぎぬなるは、いとをかしげなり。すずろに過ぎぬるなりけりとて、みな人寝ずなりぬ。
[口語訳](姿は見えないが男が)笛を澄んだ音色で吹き、過ぎ去ったようなのは、とても趣深い。「期待もむなしく、過ぎ去ってしまったことだなあ」と、みな眠れなくなってしまった。
過ぎぬなる … 完了の助動詞「ぬ」の終止形につくため、伝聞・推定の助動詞。
をかしげなり … 状態・性質+なり のため、形容動詞活用語尾。
過ぎぬるなり … 完了の助動詞「ぬ」の連体形につくため、断定の助動詞。
寝ずなりぬ … 寝なくなるの意味から、動詞。ず+なる は、やや引っかかりやすい。
1位 「終止形 + なり」は伝聞推定
「終止形 + なり」は、伝聞・推定です。「らむ・べし・まじ・らし・なり・めり」は、終止形接続かつ、推量系の助動詞であることを思い出せれば、一目瞭然です。
もし、忘れてしまった場合、現代語では「らしい」に集約されており、「死ぬらしい」のように終止形接続であることも、ヒントになります。
例文 笛吹きすまし過ぎぬなるは、いとをかしげなり。
上の例文では、完了の助動詞「ぬ」の終止形のあとに「なり」が来ていますので、伝聞・推定です。入試では、伝聞(~そうだ)、推定(~ようだ)の区別も問われることがあります。
ここでは、「笛を澄んだ音色で吹き、過ぎ去ったようなのは、とても趣深い」となり、推定の助動詞となります。
例文 いまだ過ぎぬなり。
「なり」の直前の「ぬ」は文脈から打消と分かります。活用は「ず・ず・ず・ぬ・ね・〇」です。すると「ぬ」は連体形となります。この「なり」は断定の助動詞です。
例文 夜明けぬなりと、思さるるほどに
「なり」の直前の「ぬ」は文脈から完了と分かります。活用は「な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね」ですので終止形となります。この「なり」は伝聞・推定の助動詞です。
[口語訳](人の声あるいは物音から)夜が明けたようだと自然とお思いになられるうちに
2位 「連体形(体言) + なり」は伝聞推定
「連体形(体言) + なり」は、断定の助動詞です。現代にも残る「我輩はコロ助なり」を思い出すと、体言や連体形につくことがわかります。
例文 すずろに過ぎぬるなりけりとて、みな人寝ずなりぬ。
上の例文では、完了の助動詞「ぬ」の連体形のあとに「なり」が来ていますので、断定です。口語訳は、「期待もむなしく、過ぎ去ってしまったことだなあ」と、みな眠れなくなってしまった。
3位「状態・性質 + なり」は、形容動詞の活用語尾
2位までの基本をマスターしたあと、3番目に「状態+なり は形容動詞」も押さえてください。あはれなり、きよげなり、つれづれなり などがあります。
4位「成る」と訳せれば、動詞「なる」の連用形
3位まででも十分ですが、動詞「なる」の連用形も、ときどき聞かれます。通常の日本語の感覚で区別できることが多いので必死に覚え込む必要はないでしょう。
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