経営難でつぶれる大学はどこ? 見分け方と実名一覧

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読売新聞は、私立大学と短大のうち、2割弱が経営難(将来的な破綻が懸念)と報じています(2017、2021年)。具体的にどの大学がつぶれそうと言えるのか、探ってみました。

受験ネット代表加藤(詳細
早大卒、予備校講師を経て国家資格キャリアコンサルタント(登録番号20022587登録証)。高校内講演歴10年670回。
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経営難でつぶれる大学はどこ?指定校、一般選抜にはリスク?

2割弱の私大・短大が経営難と「読売」が報道

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読売新聞が2017年、私立大学・短大のうち、約17%にあたる112法人が経営難と報じ、話題となりました。

さらに、2021年にも、18.4%にあたる121法人の経営難を報じています(2017年紙面2021年読売新聞オンラインバックアップ)。いずれも大学名は非公表でした。

「地方の中小規模」「都市部の小規模」がつぶれやすいとされたが、難関大の定員厳格化で一時的に延命

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2017年、読売新聞は、私大や短大の経営難を報じたさいに、本私立学校振興・共済事業団の見解として、具体的につぶれる可能性がある大学・短大の見分け方を挙げています。

それは、「地方の中小規模大学」「都市部の小規模大学」が特に厳しい、という内容でした。例えば2023年3月に、募集停止を発表した恵泉女学園大学は、都市部の小規模大学にあたります。これに続くように、いくつかの大学や短大が、2023年3~4月に募集停止を発表しました。さらに2024年には、創価女子短大が募集停止を発表しています。

募集停止を発表した大学や短大所在地入学定員立地規模
創価女子短期大学
(2024年5月発表)
八王子市150名画像都市小規模
上智大学短期大学部
(2023年4月発表)
神奈川県秦野市250名画像地方小規模
神戸海星女子学院大学
(2023年4月発表)
神戸市95名画像1画像2都市小規模
岐阜聖徳学園大学短期大学部
(2023年3月発表)
岐阜市150名画像地方小規模
恵泉女学園大学
(2023年3月発表)
東京都多摩市302名画像都市小規模
自治体の人口が100万人を超える場合、都市部としました(八王子市、多摩市は、周辺人口を加味し都市部としました)。入学定員は、データの年度が古い場合があります。

一方、2016年から、入学定員厳格化が3年間かけ段階的に開始されました。これは人気大学への影響が大きく、玉突きにより、地方・都市部を問わず中堅大学の人気上昇の傾向が見られています。例えば、東京富士大学の場合、2016年には入試倍率1.0倍でしたが、2019年以降、2.9倍、4.4倍、3.4倍と高い水準で推移しています。

結果的に、都市部の難関大の入学者数の影響を受けやすい、「都市部の小規模大学」の経営難の危機は、いったんは落ち着きました。

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定員厳格化は、経営が苦しくなってきた大学への、救済措置の側面もあった?

はい。立て直しの猶予期間を意図的に設けたのかも知れません。具体的に、難関大に影響が大きかった定員厳格化(2016年から3年かけ段階的に実施。以降継続し、2023~2024年度は一時的に緩和)により、志願者が大きく増えた大学(言いかえれば、定員厳格化までは人気が低迷していた大学)は、以下が事例です。

東京富士大学、多摩大学、東洋学園大学、帝京科学大学、デジタルハリウッド大学、東京未来大学、日本文化大学、駿河台大学、東京国際大学、江戸川大学、千葉経済大学、中央学院大学、淑徳大学、千葉商科大学、麗澤大学、横浜商科大学、桐蔭横浜大学、鶴見大学大谷大学、京都先端科学大学、追手門学院大学、大阪学院大学、大阪国際大学、相愛大学、大手前大学、神戸国際大学など。

(2010年に対し、2019年の志願者の増加が著しい、首都圏・関西圏の大学)

上記の大学は、定員厳格化の影響もあり、短期的には経営状態が良くなっていると考えられますが、今後も少子化は進むため、大きな改革がないと経営は厳しくなるものと予想されます。

実際に先に挙げた、東京富士大学は、2022年度の入試倍率は1.5倍に下がり、元の水準に近づいています。現在、実務IQ(仕事の現場において高いパフォーマンスを発揮しうる知性の質)育成に力を入れ、好立地も生かした巻き返しを図っています。

一方で、東京富士大学と同じく、定員厳格化の追い風を受けた帝京科学大は、2019年度以降、3.4倍、3.0倍、3.6倍と高い入試倍率を維持してきましたが、2022年度も2.2倍となり、踏みとどまっていると言えます。

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2010年に便利な北千住キャンパスを開設しているし、動物系の学部は、高校生人気が高く、独自性が高いですね。ほかに、医療系も設置しています。

はい。このように、経営基盤を強化している大学は生き残る可能性が高く、各大学の施策(①都心部へのキャンパス展開、②理系、看護医療系学部の設置、③高校生人気、高い就職率、競合が少なく独自性が高い学部の設置)も確認する必要があると考えられます。

一方、「地方の中小規模大学」は、新型コロナウイルス感染症による地方回帰の追い風を受けたと思われます。今後、都心部へのキャンパス展開という施策は、一部を除いて難しく、上記②③の学部改編や、公立大学化などで、経営基盤を強化してゆくと考えられます。

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2010年~2022年に廃校・募集停止となった私立大学一覧

募集停止年大学名
学部
立地
規模
入学定員
理系、看護医療系高校生人気、高い就職率、独自性を満たす学部
2010年福岡医療福祉大学
(人間社会福祉)
地方
中小
なし✖ 福祉は(介護福祉も含めれば)就職率こそ高いが、競合が多い。独自性に課題。
2012年東京女学館大学
(国際教養)
都市

115名
なし✖ 国際系は競合が多い。コミュニケーション力などを打ち出すが、独自性に欠いた。
2013年創造学園大学
(ソーシャルワーク、想像芸術)
地方

280名
なし✖ ソーシャルワークは福祉系。介護福祉も含めれば就職率こそ高いが、競合が多い。独自性に課題。
2014年福岡国際大学
(国際コミュニケーション)
地方

120名
なし✖ 国際コミュニケーションは、一時期流行ったが、やや人気が落ちている。
2014年神戸夙川学院大学
(観光文化)
都市部
なし観光は人気学部だが、理事長の投機の失敗が大きいか(産経画像)。大学運営が近代的かどうかも見るべき。
2019年広島国際学院大学
(工、情報文化)
都市部

約250
広島電機大学から発展した大学で、珍しい、工学部を持つ大学の募集停止。広島市の人口は多いが、周辺人口に限界がある、経営環境の厳しさか。
2019年保険医療経営大学
(保険医療経営)
地方

約80名
なし✖ 医療と付くものの、医療系の国家資格と関係のない経営系の学部だった。
2020年上野学園大学(音楽)都市部
なし✖ 歴史が長い大学が多く、経営体力はあるとも言われた「音大」だが、近年は募集難となっており、業界が地盤沈下か。
自治体の人口が100万人を超える場合、都市部としました(八王子市、多摩市は、周辺人口を加味し都市部としました)。入学定員は、データがそろいづらいため、正確な資料作りの場合はリンク先を精査してください。

都市部×小規模でも人気の高い大学も

例えば、聖路加国際大学は、入学定員が100名しかなく、経営の難しさが報じられた「都市部の小規模大学」にあたります。しかし、同大学は、看護系の大学では、昔からの名門であり、慶應義塾に次ぐレベルの人気を誇っており、経営破綻の可能性は少ないでしょう。聖路加国際大学の偏差値は、60.0前後と高く、偏差値も1つの指標になりそうです。。

大規模大学、中規模大学、小規模大学の定義は?

大規模大学、中規模大学、小規模大学の定義については、調査した範囲でははっきりしませんでしたが、旺文社が次のような定義を用いています。

  • 小規模大学 …入学定員800人未満
  • 中規模大学 …入学定員800人以上3000人未満
  • 大規模大学 …入学定員3000人以上

専門学校化も生き残るカギ? 教員が支持する「日本文化大学」 

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東京都八王子市にある日本文化大は、募集定員は200人、偏差値は37.5と表示されます(2024年6月現在)。しかも、東京都心から離れた八王子地区にある単科大学です。

入試資料を見ると、2022年度の志願倍率は1.87倍に下がっており、やや苦戦しています。

しかし、少子化を見越し、公務員の1つである警察官に合格しやすい大学を打ち出しており、この地区の高校教員のなかでは、一定の評価を得ています。定員充足率は、立地、規模、知名度を考えると堅調と言えそうです。

公務員に狙いを定める。この方針は、高校の進路に詳しい人から見ると、テレビCMでも名前を聞く、大原学園や東京法律専門学校と同じフィールドで勝負するように見えます。するとイメージ上ネックとなる低い偏差値は、実は無関係となります(専門学校は偏差値に換算すれば非常に低く、また専門学校を受験する層は余り偏差値を気にしない)。

すると、公務員を目指しながら大卒資格を得られるという訴求が可能になります。このように、ある意味で専門学校化してゆくことも、生き残りの1つの手段となります。すでに短期大学は、看護、保育、幼児教育、栄養などの領域が目立つようになり、先行して専門学校化したとも言えます。

生き残りのポイント
①都心部へのキャンパス展開
②理系、看護医療系学部の設置
③高校生人気、高い就職率、競合が少なく独自性が高い学部の設置
④専門学校化
※「地方の中小規模大学」「都市部の小規模大学」は、大学にもよるが苦戦しやすい。

年度志願者数備考
2022374人
2021412人
2020620人
2019731人
2018418人
2017269名日本文化大では新校舎完成。
2016238名全国で入学定員厳格化開始(とくに難関大で合格者減)
2015249名

『危ない大学 消える大学』によれば

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現在、プレミアつきの書籍となっている『危ない大学 消える大学』は、偏差値や定員充足率から、危ない大学・消える大学の候補校として以下を挙げているようです。

(この章はインターネットからの転載です。恐れ入りますが正規のデータは、必ず書籍をご覧ください)。

札幌大学、札幌大谷大学、札幌学院大学、札幌国際大学、星槎道都大学、苫小牧駒澤大学、函館大学、稚内北星学園大学、青森大学、八戸工業大学、弘前学院大学、富士大学、石巻専修大学、東北生活文化大学、東北文化学園大学、ノースアジア大学、郡山女子大学、東日本国際大学、福島学院大学、筑波学院大学、足利大学、宇都宮共和大学、関東学園大学、浦和大学、武蔵野学院大学、愛国学園大学、川村学園女子大学、聖徳大学、千葉科学大学、嘉悦大学、恵泉女学園大学、杉野服飾大学、東京純心大学、東京富士大学、松蔭大学、新潟経営大学、新潟工科大学、高岡法科大学、北陸大学、山梨英和大学、清泉女学院大学、岐阜女子大学、東海学院大学、静岡英和学院大学、浜松学院大学、愛知学泉大学、愛知工科大学、愛知文教大学、岡崎女子大学、星城大学、名古屋産業大学、人間環境大学、京都ノートルダム女子大学、平安女学院大学、大阪観光大学、大阪人間科学大学、帝塚山学院大学、東大阪大学、甲子園大学、神戸医療福祉大学、神戸山手大学、姫路獨協大学、兵庫大学、岡山学院大学、吉備国際大学、山陽学園大学、中国学園大学、広島都市学園大学、広島文教大学、至誠館大学、東亜大学、徳島文理大学、四国学院大学、九州情報大学、日本経済大学、長崎ウエスレヤン大学、九州保健福祉大学、宮崎国際大学、第一工業大学

上記は1つのデータに過ぎませんので、そのまま信じ込むことはせず、「大学の今後の見通し チェックポイント」も参考にして頂き、データや評判をチェックしてみてください。大学の満足度は、その高校生がその大学を生かし、優良な企業や組織への就職を成功させることで決まります。

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上に名前が挙がった大学も、状況の変化で人気を回復した大学もあり、就活に成功した卒業生も多くいます。決めつけずに、多面的に判断することが重要です。

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専門学校の経営状況は?

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受験する大学の経営に不安がある場合、専門学校と比べたいという方もいるかも知れません。

専門学校は、大学・短大に比べ、国のバックアップは限られますが、学科やコースの新設や改編が容易で、社会の変化に対応しやすいという利点もあります。入試の状況(志願倍率)が公表されておらず、大学・短大に比べ経営状況は推し量りにくいですが、次の要素をチェックしてい見てください。

安心できる専門学校の目安

就職率が100%に近い分野×中程度以上の経営体力 …看護、理学療法、介護福祉、情報技術、自動車整備、美容、保育・幼稚園教諭など、就職率が100%に近い分野の専門学校は、比較的安心できます。ただし、同じ分野内での競合はあり、知名度・人気・広報力などが低い場合油断はできません。特に小規模な学校の場合、看護・医療系など特に就職に恵まれた分野以外は、広報力の面で苦戦することがあります。なお、就職率の高さは離職率に支えられている場合もあり、業界の初任給や休暇などの調査は必要です。

校舎の設備更新がひんぱんである …就職率が100%に近い分野以外は、専門学校どうしで経営体力に差が出ます。入試の状況(定員充足率、入学締め切り時期)は非公表のため、実態はつかみにくいですが、人気がある専門学校ほど校舎の設備更新がひんぱんです。校舎のエントランスや教室が新しく清潔で、機材がよく更新されている学校(例 日本工学院専門学校)は、経営状態が良いと推察できます。

日本工学院専門学校はやばい? 調べてみた

一方、進路としての推奨度は低くなりますが、声優など就職率が低い分野の場合は、経営体力が図抜けている学校がおすすめです。就職率の高さから黙っていて生徒が集まる状況ではないためです。校舎数が多い、設備更新のひんぱんさなどがヒントとなります。

AO入試(総合型選抜)における早期の合格確約や強い勧誘がない …専門学校の経営は、3月末までに定員が充足し募集を締め切るのが理想であり、そうでなくても、いかに定員充足率を高めるかがポイントです。定員充足率や入学締め切り時期は非公表ですが、それを探る重要な指標が、早期入試(AO入試、総合型選抜)での勧誘姿勢です。秋の合格結果の発表までは、内定のような形で合格を匂わせることは本来はNGです。その姿勢が強すぎる専門学校や、早期受験の割引額が大きすぎる専門学校は、経営的な面で焦りが見られるとも言えます。ただし、経営が順調な学校でも、営業の数値目標が厳しいといった事例もあるようで、一概には言えない部分もあります。

在籍(卒業)高校の進路指導室に尋ねる …高校の進路指導部では、専門学校の経営状況を把握していることがあります。高校の進路室を訪ね、担当の先生に尋ねてみることも有効です。

コメント

  1. たにやん より:

    聖路加国際大学は看護の名門です。立地とか偏差値とか以前の問題です。読むに値しない記事だと思いました。。

    • 受験ネット 加藤 より:

      コメントありがとうございます。
      聖路加は、筆者の塾講師時代にも合格者がおり、サイト立ち上げ以前より名門と了承しています。ただ、全国的に知名度が高い訳ではなく、単科大学であることが、経営の良し悪しに結びつく訳ではないという事例として掲載しています。
      しかしながら、都内では病院自体の知名度が高く、都内の方が読んだ場合に、事例として相応しくない(ピンとくる事例でない)可能性もあり、次回改訂時には差し替えも検討します。
      同時に、安易に「経営が盤石な単科大学」を指名したとして、そこに何かあった場合の責任も大きいため、絶対安全圏と思える聖路加を事例に取っている部分もご理解ください。
      ※その意味では日本文化大を例示している点も改訂の余地はありますが、こちらは一貫して「募集状況が盤石ではない」という表現を入れています。
      また、現時点で「昔からの名門であり、」の注釈を追加しました。これは当然のことであり、筆者の側でも書き漏らしのようになっておりました。また、偏差値については、偏差値から聖路加を見積もった訳ではなく、人気があるから偏差値が高く、偏差値も目安にはなるという考え方に基づいたものです。

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