信頼関係の構築から、方策の実行に至る「システマティックアプローチ」は、キャリアコンサルティングの中心となるテクニック。実技試験でも根幹となります。
※発達理論、独自の諸理論も扱っています。
15ページで分かるキャリアコンサルタント(筆者プロフィール)
キャリコンの学習サイトは、分量が多過ぎたり、単純な暗記を促したりするものが多いようです。受験ネットでは、過不足のない、具体的でわかりやすい内容をめざしています。
①キャリコンの概要#01(準備中)
②キャリアコンサルタントの倫理とあるべき姿|キャリコン対策#02
③ロジャーズとは?(来談者中心療法、内的準拠枠)|キャリコン対策#03
④認知行動療法をわかりやすく|キャリコン対策#04
⑤システマティックアプローチとは?|キャリコン対策#05
⑥スーパー(職業的適合性・アーチモデル)、ホランド|キャリコン対策#06
⑦クランボルツの意思決定・偶発性と、シャイン|キャリコン対策 #07
⑧ホールと、サビカスのキャリアアダプタビリティ|キャリコン基礎理論対策 #08
コンサルティング全体の流れ#09|労働経済白書と職業訓練、教育訓練給付金#10|人事労務管理、社会人基礎力#11| 学校のキャリア理論#12|労働関係の法律#13|社会保障制度・メンタルヘルス#14|学科試験・実技試験(論述・面接)対策#15|
システマティックアプローチ(包括的アプローチ)とは?
システマティックアプローチとは、何なのでしょうか?
はい。システマティックアプローチとは、キャリアコンサルタントが、コンサルティング(キャリア相談)で使っているテクニックの「中心部」です。信頼関係の構築、問題の把握、具体的展開(目標設定と方策の実行)の3段階に分かれます。
システマティックアプローチは、マイクロカウンセリング(カウンセリング幅広い知見を、1つ1つの小さな段階に分割した体系)や、ヘルピング、コーヒーカップモデルなどのカウンセリング理論にも、必ず組み込まれています。
ヒント マイクロカウンセリングは、キャリコンがよく用います。ヘルピングやコーヒーカップモデルは、資格未取得者にも使用しやすい、シンプルな体系です。
少し複雑になりますが、マイクロカウンセリングでは、かかわり技法、基本的傾聴の連鎖のあとに、システマティックアプローチを学ぶ体系ですので、下のように教える先生もいます。
上から順に進めてゆきます。色つきの部分が、システマティックアプローチです。マイクロカウンセンリングは、下の図にとどまらない体系です。
かかわり行動
(視線、身体言語、声の調子)
基本的傾聴の連鎖
(開かれた質問・閉ざされた質問、クライエント観察技法、はげまし・言い換え・要約、感情の反映)
信頼関係構築
問題の把握
具体的展開(目標設定と方策の実行)
思い切った言い方をすると、ロジャーズ(来談者中心療法、内的準拠枠)を理解したうえで、上の5つの段階を理解してしまえば、見た目の上では、キャリアコンサルタントに近い動きができるかも知れませんね!
もし、イメージしづらい場合は、洋服店などの接客に当てはめると、理解できます。
かかわり行動
(視線、身体言語、声の調子)
店員としての基本的マナー
基本的傾聴の連鎖
(開かれた質問・閉ざされた質問、クライエント観察技法、はげまし・言い換え・要約、感情の反映)
接客の基本技術、ノウハウ。
信頼関係構築
常にお客の立場に立つことを理解してもらう。
問題の把握
お客さんが服を通じて実現したい要望を明らかにする。
具体的展開(目標設定と方策の実行)
お客さんの要望をかなえる服を提案。
かかわり行動
かかわり行動は、一般に、普段から行われていることですね! でも、男性なんかは、無頓着な人もいそうですね(笑)
はい、そうですね。余談ですが、キャリアコンサルタントの資格を取って旦那が変わり、夫婦仲が良くなったという例はよく聞きます(笑)
かかわり行動は、第1印象にあたる最も基本的なものです。コンサルティングの終了まで貫かれます。
- 視線 基本は目を合わせる(日本人の場合)
- 身体言語 例えば体を前に傾けて、傾聴を示す。
- 声の調子 低い声で信頼性を演出したり、相手にトーンを合わせたり。
先生、学部が決まらないんです……。
おー!よく来てくれたね!(声の調子)その椅子で大丈夫かな? あと暑かったら遠慮なく言ってね。
基本的傾聴の連鎖(かかわり技法と呼ぶこともあります)
基本的傾聴の連鎖は、良い意味でのおうむ返し(くり返し)など、一般に知られているものありますが、だいぶレベルが上がりますね。
はい。基本的傾聴の連鎖(かかわり技法と呼ぶこともあります)は、意識してできている人は、少ないはずです。
・くり返し
・観察技法 言語を正確に理解するために、表情や声の調子を観察したり、くり返しの多さなどに注視したりなど、非言語情報を統合してゆく。また、態度と応答の矛盾点に気づくこと。
・開かれた質問(5W1H式、話が発展しやすいが疲れを招く)と、閉ざされた質問 (Yes・No式、要点が明確になる)を使い分ける。
・励まし 一般的な意味でなく、うなづきや相づちなどで話を引き出すこと。
・言い換え (例)ざわざわするんです→落ち着かないのですね。言い換えは、ミスすることもあるので慎重に行う。
・要約 話の要点をまとめる。ミスすることも多く、私はこう捉えたのですがのような、アイ(I)メッセージとする手もある。
・感情の反映 クライエントの言語化されない感情を注意深く観察して明確化することで、気づきを促す。
・意味の反映 クライエントが自身の感情、思考、行動に隠された意味を見出すことができるように支援すること。
先生、志望理由が書けないんです……。
おー!よく来てくれたね!(声の調子)その椅子で大丈夫かな? あと暑かったら遠慮なく言ってね。
それで、志望理由が書けないんだよね(くり返し)。今年は入試だし、ちょっと焦っちゃうかもね(まだ「焦り」は見立て=仮説に過ぎない)。いつ頃から、書けてないのかな?(開かれた質問)
一応経営学部志望だけど、何となく就職がいいから決めちゃって。
うん、そうだったのか。よく話してくれたね(励まし)。「何となく決めちゃって」(くり返し)ってことは、もしかして、少し焦って決めたのかな?(言い換え、閉ざされた質問)。
そう……でもないかも。結構前から決めてたことは、決めてたのだけど……。
うん。ちょっと言いにくい話もありそうだね(観察技法)。ここでの話は、どこにも漏れることはないから、よかったら、決めたときのことを詳しく聞かせてほしいな。
信頼関係の構築
基本的傾聴の連鎖(かかわり技法と呼ぶこともあります)をしっかり行うことで、信頼関係はおのずと構築されますよね!
はい。その通りです。ほかに、環境づくりや守秘義務に触れることも、信頼関係の構築に役立ちます。
先生、志望理由が書けないんです……。
おー!よく来てくれたね!(声の調子)その椅子で大丈夫かな? あと暑かったら遠慮なく言ってね。
それで、志望理由が書けないんだよね(くり返し)。今年は入試だし、ちょっと焦っちゃうね。いつ頃から、書けてないのかな?(開かれた質問)
一応経営学部志望だけど、何となく就職がいいから決めちゃって。
うん、そうだったのか。よく話してくれたね(励まし)。「何となく決めちゃって」(くり返し)ってことは、もしかして、少し焦って決めたのかな?(言い換え、閉ざされた質問)。
そう……でもないかも。結構前から決めてたことは、決めてたのだけど……。
うん。ちょっと言いにくい話もありそうだね(観察技法)。ここでの話は、どこにも漏れることはないから、よかったら、決めたときのことを詳しく聞かせてほしいな。
問題の把握
いよいよ、カウンセリングの核心部ですね! どんな悩みも原因を突き止めないと! あと、忘れちゃいけないのは、ロジャースが言っていた「問題解決の方法は当人がいちばんよく知っている。そのため、自分の心に真に触れる機会があれば良い」の言葉ですね!
はい。まさにその通りです。コンサルタント側が意見や知識を披露する場ではなく、また先入観(内的準拠枠)を差しはさまないことが大切です。
なお、クライエント側が認識する問題は、主訴と呼びます。カウンセラー側にしか認識できない「潜在的な問題」こそが、ここでいう「問題」です。自己理解、職業理解に「問題」の原点があることが多くなります。
一応経営学部志望だけど、何となく就職がいいから決めちゃって。
うん、そうだったのか。よく話してくれたね(励まし)。「何となく決めちゃって」(くり返し)ってことは、もしかして、少し焦って決めたのかな?(言い換え、閉ざされた質問)。
そう……でもないかも。結構前から決めてたことは、決めてたのだけど……。
うん。ちょっと言いにくい話もありそうだね(観察技法)。ここでの話は、どこにも漏れることはないから、よかったら、決めたときのことを詳しく聞かせてほしいな。
……うん。実は兄のことなんです。大学に行ったけど、就職できなくて。それで自分は、兄のようになるまいと、資格が取れる経営学部にしたんだけど、でも勉強したいことなんて、特にないし、そもそも大学って何をしているのかわからないんです。
具体的展開(目標設定と方策の実行)
カウンセリングをさらに進め、次の目標を設定します。方策はクライエントの考え方や実情に合わせ柔軟に提案し、複数のなかから選んでもらうとよいです。
(中略)
なるほど、お兄さんのことは、良くも悪くも1つのきっかけだった割り切るしかなくて、実のところ、経営学部について、よく分かっていなかったと気づいたんだね。すると次の目標は?
うん。ちょっと遅れたけど、経営学部のことを調べてみます。でも調べ方が……。
なるほど。それなら、いい方法があるから2つ紹介するね。1つは、……。
ヒント 結果の評価とキャリアカウンセリングの終了 結果の評価は、キャリアコンサルタントとクライエントが共同で行う。
以上が、かかわり技法、基本的傾聴の連鎖、システマティックアプローチ(信頼関係構築、問題の把握、具体的展開)の流れの再現です。
ヒント 木村周『キャリアコンサルティングの理論と実際』p285~p306のダイジェスト
- 目標は変更可能である目標は具体的な小さなステップとして決める
- クライエントとカウンセラーは相互に自分の意志やできることを表明する
- 人によっては契約書を用意する
- 方策の実行はシステマティックアプローチなかでも中核で時間がかかる
- 可能性のある方策をいくつか並べメリット・デメリットを検討する
- 何を捨てるかは何を選ぶかと同様に重要
- 意思決定には不確実性が伴うので完璧性は求めない
- 達成すべき目標の利点を確認する
- プロセス・行動については、メリット・デメリットの双方を確認する
- クライエントの同意を得てカウンセリングを終了する
- それぞれ自分自身のために評価を行う
- クライエントの成長を評価するが、行動の変容の事実に焦点を置く
- 終了後延々とカウンセリング関係を続けることを避ける
- ケース(記録)は保存する
(抜き出しでなく要旨となります)
マイクロカウンセリングの応用編
上から順に進めてゆきます。色つきの部分が、システマティックアプローチです。マイクロカウンセンリングは、下の図にとどまらない体系です。
かかわり行動
(視線、身体言語、声の調子)
基本的傾聴の連鎖
(開かれた質問・閉ざされた質問、クライエント観察技法、はげまし・言い換え・要約、感情の反映)
信頼関係構築
問題の把握
具体的展開(目標設定と方策の実行)
マイクロカウンセリングの応用編(積極技法、技法の統合)
積極技法
とくに積極的な関わり。
- 指示 取るべき行動を明確に示す(例 毎日、2時間、資格勉強の時間を取ることができますか?)。来談者中心療法に反する部分があり、慎重に行う。
- 論理的帰結 2つの選択肢の結末を予測してもらい、どちらかを選んでもらう方法。
- 解釈
- フィードバック 本人は気づいていないが周りは気づいている「事実」を伝える(解釈ではなく事実の伝達)。
- コンサルタントの自己開示 クライエントの自己開示を促す。または、コンサルタントが良いモデルになることもある。
- 焦点の当て方 他人、環境ではなく、本人に焦点をシフトさせる。
- 矛盾、不一致 前向きな意味での話の変化を指摘など。(JCDAの論述によく出てきます)
ヒント キャリコンは、すべての行動や技法に意図性が求められます。ただ漫然と発話や行動を行うのではなく、狙い(意図)を持たせることが非常に重要です。
技法の統合
異なった技法を統合する。
(正誤問題)マイクロカウンセリングのかかわり行動には、開かれた質問、観察技法、意味の反映などがある。
ヒント:単純なひっかけでも、正しく覚えていないと間違うことがあります。かかわり行動、かかわり技法を区別します。答え:誤り。
ヘルピングの技法 無資格でも使用できるカウンセリング理論の1つ
カーカフによる。人間関係を通じて、自己探索への道を切り開く技法です。一般の人も使えるように、カウンセラーの呼称を用いません。
(用語)カウンセリング=ヘルピング、カウンセラー=ヘルパー、クライエント=ヘルピー。
ヘルピングのプロセスは、4段階。簡易化されているため、例えば、会社員の部下との面談などにも利用できます。
事前段階 かかわり技法 | 信頼関係(ラポール)を形成する(「参入」が起きる)。具体的には、自己開示、傾聴、親身に自分のこととして関わる。 ヒント 「自己開示」は、共感的理解を強調するロジャーズとは、異なる面です。マイクロカウンセリングでは、かかわり行動ですが、ヘルピングでは、かかわり技法です。 |
第1段階 応答技法 | 対話(事柄への応答、感情への応答、意味への応答)をくり返すことで、ヘルピーの現在地を明確にし、自己探索を促す。(ヘルパーの意見を伝える場ではないことに、注意します。) ヒント マイクロカウンセリングでは、基本的傾聴の連鎖(かかわり行動)にあたるところです。 |
第2段階 意識化技法 | 意味・問題・目標・感情の意識化を経て、自己理解を促す。 |
第3段階 手ほどき技法 | 目標に向かって計画を立て、行動を促す。 ヒント ロジャーズ(来談者中心主義、非指示的)に対し、アイビイ(マイクロカウンセリング )の積極技法、カーカフの手ほどき技法は、前段階を踏んだ後は、やや積極的に指示してゆく面があります。 |
「ヘルピング。毎日助かる、フカフカのふとん」という覚え方はどうでしょうか? フカフカから、カーカフを連想します。
國分康隆のコーヒーカップモデル カウンセリング理論の1つ
矢印は、自己理解の深さを表します。
リレーションを作る | 受容、いいかえ、明確化、支持、質問 ※「支持」はクライエントの考え方を、肯定的にジャッジすることです。ロジャーズにはない、積極的、自己開示的な要素です。 |
問題把握 | |
問題解決 | ロジャーズ(来談者中心主義)に比べ積極的な技法です。 関連 カーカフの手ほどき技法、アイビイの積極技法。 |
なお、國分康隆は、論理療法のイラショナル・ビリーフとして、以下を挙げています。これらは、出題歴があります。
- ねばならぬビリーフ
- 非観的ビリーフ
- 非難、卑下的ビリーフ
- 欲求不満低耐性ビリーフ
グループアプローチ
グループ・アプローチは、共通の目標と類似の問題を有するクライエントを集め、リーダーが助言します。各自に役割が設定されますが、各自が自分自身の問題解決のために行動して構わないものです。
なお、共通の目標は、メンバーが決めてもリーダー(=キャリコン)が決めても、どちらでも構いません。
- ベーシック・エンカウンター・グループ ロジャーズが発案。合宿形式など、長い時間をかけ、専門的な指導者が必要。
- 構成的グループ・エンカウンター 短時間、基本的な知識を持つ指導者で可能。リーダーは、とくに自己開示を活用し、私的な部分でも交流を深めるよう努力。エクササイズとシェアリング(リーダーは、解釈・分析・批判は行わない)からなり、シェアリングは省略できない。
リーダーは、ルールからの逸脱など、必要最低限の介入を行います。
発達理論7つ
カウンセリングと発達を関連づけようという試みが、1952年に米国で始まりました。クライエントを発達という観点から理解したり、年齢・世代に共通のつまづきを発見したりできるからです。
決めつけてはいけないけど、世代ごとの特徴も、問題把握の1つの糸口になりますよね?
子ども ピアジェの発達理論(15歳まで、均衡化が特徴)
ピアジェは、自身の3人の子どもを観察することで、認知の発達を研究しました。なお、成長=量的な変化、発達=機能がより高度化することです。キャリコンの筆記試験で問われたことは、まだありません(3~7回を調査)。
- 感覚運動期(2歳まで)…触れるものは、目に見えなくてもそこにあることを理解。
- 前操作期 (7歳まで)…表象機能が発達し、ごっこあそびが可能。記憶による延滞模倣も可能に。
- 具体的操作期(11歳まで)…具体的な物を論理的に操作できる。例えば12個のチョコレートを並び替えても、12個だと分かる。
- 形式的操作期(15歳まで)…抽象的な事柄でも論理的に操作できる。 例えば、AはBより身長が高く、BはCより身長が高い、いちばん高い人はの質問に即答できる。
ピアジェは、 を経て均衡化に至る過程が成長だとします。
同化
(例)ある子は、主食は米だと思っていましたが、親類の家でパスタをふるまわれます。そのとき、親類にご飯を求めます(=同化の要求)。しかし、たまたま準備がなく、パスタもご飯(主食)の1つだと説明を受けて、同化を行います。この、環境との均衡化へ向かう調節の課程を、発達と考えます。
青年 エリクソンの発達理論(生涯を通じ、 危機に着目)
エリクソンは、ある土台に次の段階が加わってゆくという漸成的発達理論を提唱。世代ごとに存在する危機の克服に、その特徴があります。発達段階を8つに分けています。
キャリコンの試験直前には、エリクソンといえばアイデンティティ。段階は「8つ」と出てこなければいけません!
発達段階 | 発達課題 | 危機 |
乳児期(2歳まで) | 信頼感(=特に母親に対する) | 不信 |
幼児期前期(4歳まで) | 自律感(自分で起きて着替えもする時期) | 恥・疑惑 |
幼児期後期(7歳まで) | 自発性(行動力があり余る時期) | 罪悪感 |
児童期(12歳まで) | 勤勉性 | 劣等感 |
青年期(22歳まで) | 同一性(頻出 の確立) | 同一性拡散 |
成人期前期(34歳まで) | 親密性(=人を愛すること) | 孤立・孤独 |
成人期後期(60歳まで) | 世代性(=家族・社会・次世代への関心) | 停滞 |
老年期(61歳以上) | 総合感(人生の達成感) | 絶望 |
アイデンティティ
アイデンティティに関わる青年の課題は、社会問題となることがあります。
- 高度経済成長期(〜1973年) … 青年の自殺多発、非行第2のピーク
- 低成長期 …荒れる学校、非行第3のピーク
難問 (正誤問題)マーシャ( Marcia,J.E.)は、青年期前期の脱構成化、青年期中期の探求と再構成化、青年期後期の強化という3 つの段階をアイデンティティ形成において想定している。
ヒント:過去に出題されたレアな思想家。答え:正しい。
難問 (正誤問題)レヴィン(Lewin,K.)は、青年を大人としても子どもとしても社会で安定的立場をもたない存在として、「周辺人」 「境界人」 (marginal man)と呼んだ。
ヒント:過去に出題されたレアな思想家。答え:正しい。
中年 レヴィンソンの発達理論(中年の危機で知られる)
レヴィンソン(レビンソン)の理論は、発達は、安定期と過渡期の繰り返しとするのが特徴です。とくに頻出 中年の危機(人生半ばの過渡期)が強調されており、キャリコンの試験では問われる可能性が高いです。
- 児童・青年期(0~25歳)
- 過渡期 成人への過渡期 … 課題にはアパシー(興味や意欲の減退)、離人感がある。
- 成人前期(20~45歳)
- 過渡期 30歳の過渡期 … 成人期に築いた最初の生活行動を壊し、第2の生活行動を築く。課題には、焦燥感、さまよい、無力感がある。(混同注意 成人への過渡期と混同しない)。
- 過渡期 人生なかばの過渡期(40~45歳)… 本当の自分らしさの模索・葛藤を通じて真の自己との折り合いをつける時期。40年間守ってきたものが、守れなくなるような恐怖を無意識に感じる時期。
- 中年期(45~60歳)
- 過渡期 老年への過渡期 … 愛するものとの別れが生じ、社会から葬られるのではないかという恐怖感と役割の喪失感から孤立化が進み、過去へのひきこもりも。
- 老年期(60歳~)
エリクソン、レヴィンソンは混同に注意です。青年期(アイデンティティ)の危機をキーワードとするのがエリクソン、中年の危機をキーワードとするのが、レヴィンソンです。
難問 あまり出ませんが、レヴィン(Lewin,K.)は、青年を、大人としても子どもとしても社会で安定的立場をもたない存在として、「周辺人」 「境界人」 (marginal man)と呼びました。
青年 ギンズバーグ
ギンズバーグは、職業的発達として、①空想期・児童期(0歳~11歳)②試行期・青年期(11歳~17歳)③現実期・青年期(17歳~20歳前半)に分けています。10年に渡る青年期(非可逆的だが、生涯のプロセスで後戻りも可能)が特徴です。なお、「空想期」「試行期」「現実期」と記されることもあります。
職業発達理論(職業選択理論)
- 理論訂正前 試行期・青年期(11~17歳)を中心にキャリアは決まってゆく。
- 理論訂正後 生涯を通じて変わる(アメリカ社会の変化が背景)
難問 あまり出ませんが、マーシャ( Marcia,J.E.)は、青年期前期の脱構成化、青年期中期の探求と再構成化、青年期後期の強化という3 つの段階をアイデンティティ形成において想定しています。
ハヴィガースト
ハヴィガーストは、発達段階として、①乳・幼児期②児童期③青年期④壮年期⑤中年期⑥老年期の6つに分け、各段階の発達課題を、ふさわしい時期に解決しないことで、問題が生じると主張しています。
乳・幼児期 | |
児童期 | |
青年期 | 経済的独立に関する自信の確立、職業の選択および準備 |
壮年期 | 注意 仕事に就く、適切な社会集団の選択 (注)壮年期(血気盛んな世代という意味)のワードに注意してください。ほかは、言葉(青年、中年、老年等)一般的なイメージを持っていれば、選択肢問題はクリアーできます。 |
中年期 | 大人としての市民的社会的責任の達成、一定の経済的生活水準の確立と維持、大人の余暇活動を充実させること |
老年期 | 肉体の変化と健康の衰退に適応すること、引退と減少した収入に適応すること、満足のいく住宅の確保 |
- 発達・転機の理論家として、ピアジェ、エリクソン、レヴィンソン、ギンズバーグ、ハヴィガーストを押さえましょう。
- ピアジェは子どもに焦点、エリクソンはとくに青年が有名、レヴィンソンは中年が有名です。ギンズバーグは、子どもから青年、ハヴィガーストは全世代が焦点です。
覚え方は、ピップエレキバン貼ったです。( )は、理論家の特徴で、エリクソン、レヴィンソンは、幅広い世代を論じています。
- ピップ:ピアジェ(子ども)👉出題可能性低め。
- エ:エリクソン(アイデンティティ、8段階)
- レ:レヴィンソン(中年、段階数は複雑)
- キ:ギンズバーグ(青年)👉ハーズバーグと紛らわしい
- バン:ハヴィガースト(壮年期含む、6段階)
- 貼った:発達
(注)ハーズバーグは、職場の動機付け要因・衛生要因。
スーパー、シャインも入れる場合、「ピップエレキバン貼ったらスーパー社員」ではどうでしょうか?
段階数はよく問われますが、「危機」を含むシャイン(キャリア中期の危機)とエリクソン(中年の危機)は多め。危機を含まない、ハヴィーガスト、スーパーは少な目です。
その他独自の背景を持つ理論(アサーション、ナラティブセラピー、現実療法、実存療法)
アサーション
自分の考えや気持ちを、相手に理解できるように伝えます。行動療法の1つ。社会的弱者のための自己表現として発達しました。
- 自分も相手も大切にした自己表現。
- 非主張的表現でもなく、攻撃的表現ではないのが、アサーション。
ナラティブセラピー
ナラティブセラピーは、 (社会は言葉による語り、物語によってつくられている)をヒントに、自分について語ることが自己を構成する、会話そのものが治療になるという考え方です。アンダーソン(Anderson.H)、ホワイト、エプストン(White,M & Epston,D)ら。
社会構成主義
例えば、受験に失敗したことを悔やんでいるクライエントなら、受験に失敗した事情(情報不足でスタートが遅かった等の問題)と、自分自身を切り離すように働きかけます。そして、自分自身が、この失敗を教訓にその後成功したことを自問自答し、物語の書き換えを図ります。これが、ナラティブセラピーです。
現実療法(グラッサー)|原点は暗い過去を持つ非行少年
現実療法は、グラッサーによる。過去(生育歴)、感情、症状に焦点を当てず、現在の満たされない重要な人間関係に焦点を当てます。当初、非行少年を更生させるために用いられました。
具体的な指針
- クライエント自身が、自分の行動を評価する。
- 願望と欲求を明確にし、自ら計画を立て実現に向かう。
- クライエントの言い訳は認めない。論争もしない。
現実はグラサンかけては見られない!と覚えてはどうでしょうか?
実存療法(ロゴテラピー)
ロゴテラピー … による。「ロゴ」が「意味」を表すことから、生の意味を見出すことを援助する心理療法のこと。創造価値、体験価値、そして態度価値が最大の特徴。態度価値は、絶望に瀕したときの態度をさし、それを前向きに捉え直す。アウシュビッツに送られた経験が生んだ理論。
フランクル
※キルケゴール、ニーチェなどの実存主義の影響。過去の出題は1回。
ロゴ寺ピーに、フランス人来る、と覚えてはどうでしょうか? 京都のお寺には、美のセンスがあるフランス人が訪れています。
家族療法(システムズアプローチ)
家族全体を援助対象とした療法ですが、近年は、家族関係、人間が作る関係性の変化を軸に置いています。ベルタランフィの一般システム理論がベース。会社などにも取り入れられている。
- × … 問題を抱えている本人に焦点
- 〇 … 家族関係(システム)に焦点
システムズアプローチ
- 境界と階層 … 個人<家族<会社。家族は別の家族や地域社会などと関わりを持っている。
- 循環的、円環的因果律 … 一律な因果関係ではなく、結果が原因に影響を及ぼすような因果関係が成立している。
フォーカシング
フォーカシングとは、まだ言葉にならないような、からだで感じられる微妙な感覚に注意を向け、そこから言葉を出していく作業です。(日本フォーカシング協会)
- やり方2つ(問題を決めるor身体から湧き上がるフェルトセンスを待つ)
- 体に合図を送る(深呼吸を2回など)
- フォルトセンスを探す(胃、みぞおち、胸、のどなど身体の中心線に沿って現れることが多い)
- フォルトセンスを認める(あいさつをするなど)。名づけを試みる。しっくりゆくまで(関係を見つける)。隣に座るイメージを持つ(友達のように扱う)。
- フォルトセンスに質問を投げかけ、答えを聴く(受け取る)。
フォーカシングは、自分自身の深層に対し、傾聴やカウンセリングを行うような手法だと思います。
ソーシャルスキル・トレーニング(SST)
- 「聴くスキル」「自己主張スキル」「対人葛藤スキル」
- 学習原理は、周りからの言葉で学習する言語的教示、オペラント条件付け、モデリング、リハーサル。(ただしアサーションの流れをくみ、レスポデント条件づけの要素を持つ)
- 標準的なプロセスは、①導入、②教示、③モデリング、④リハーサル、⑤フィードバック、⑥般化。
メンタリング(クラムによる)
最近聞かれるメンター(指導者)のイメージから入ってよい。メンタリングには、①キャリア的機能(部下に昇進に備えた行動を促す)、②心理的・社会的機能(部下のアイデンティティや専門性の成熟をめざす)。
解決方向カウンセリング
解決志向カウンセリングでは、クライエントが望む状態を実現するために、すでにうまく行っている部分や、クライエントが元々もっている強さに焦点を当て、問題解決のための方策を検討する。
(正誤問題)解決志向カウンセリングでは、クライエントの弱みに焦点を当て、クライエントの希望が実現できるように、問題解決を図ろうと試みる。
ヒント:失敗、弱みは、解決志向とは言えません。「うまくいっている部分」「強み」に直せば、正しい記述です。答え:正しい。
解決方向の名前から分かるように、前向きな部分に着目するカウンセリングです!
ポジティブ心理学
ポジティブ心理学では、人生の満足量をウェル・ビーイングという概念で捉え、それは、ポジティブ感情、集中力、関係性、意味・意義、達成感という5つの要素から構成されると考える。
ハーとクレイマー(Herr,E.&Cramer,S.)
ハーとクレイマーの主張
カウンセリングとは、大部分を言語を用いて行われるプロセスであり、カウンセラーとクライエントがダイナミックに相互作用し、カウンセラーはクライエントがよい意思決定という行動がとれるように援助するものである。
クレーマーは、言葉(言語)で抗議するものと覚えてはどうでしょうか?
15ページで分かるキャリアコンサルタント(筆者プロフィール)
キャリコンの学習サイトは、分量が多過ぎたり、単純な暗記を促したりするものが多いようです。受験ネットでは、過不足のない、具体的でわかりやすい内容をめざしています。
①キャリコンの概要#01(準備中)
②キャリアコンサルタントの倫理とあるべき姿|キャリコン対策#02
③ロジャーズとは?(来談者中心療法、内的準拠枠)|キャリコン対策#03
④認知行動療法をわかりやすく|キャリコン対策#04
⑤システマティックアプローチとは?|キャリコン対策#05
⑥スーパー(職業的適合性・アーチモデル)、ホランド|キャリコン対策#06
⑦クランボルツの意思決定・偶発性と、シャイン|キャリコン対策 #07
⑧ホールと、サビカスのキャリアアダプタビリティ|キャリコン基礎理論対策 #08
コンサルティング全体の流れ#09|労働経済白書と職業訓練、教育訓練給付金#10|人事労務管理、社会人基礎力#11| 学校のキャリア理論#12|労働関係の法律#13|社会保障制度・メンタルヘルス#14|学科試験・実技試験(論述・面接)対策#15|
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