変動が激しく、リストラや転職が当たり前になった現在の流動的な情勢に対応したキャリア理論家が、ダグラス・ホール、サニィ・ハンセン、マーク・サビカス(サヴィカス)です!
15ページで分かるキャリアコンサルタント(筆者プロフィール)
キャリコンの学習サイトは、分量が多過ぎたり、単純な暗記を促したりするものが多いようです。受験ネットでは、過不足のない、具体的でわかりやすい内容をめざしています。
①キャリコンの概要#01(準備中)
②キャリアコンサルタントの倫理とあるべき姿|キャリコン対策#02
③ロジャーズとは?(来談者中心療法、内的準拠枠)|キャリコン対策#03
④認知行動療法をわかりやすく|キャリコン対策#04
⑤システマティックアプローチとは?|キャリコン対策#05
⑥スーパー(職業的適合性・アーチモデル)、ホランド|キャリコン対策#06
⑦クランボルツの意思決定・偶発性と、シャイン|キャリコン対策 #07
⑧ホールと、サビカスのキャリアアダプタビリティ|キャリコン基礎理論対策 #08
コンサルティング全体の流れ#09|労働経済白書と職業訓練、教育訓練給付金#10|人事労務管理、社会人基礎力#11| 学校のキャリア理論#12|労働関係の法律#13|社会保障制度・メンタルヘルス#14|学科試験・実技試験(論述・面接)対策#15|
流動的な時代のキャリア理論
ホール、ハンセン、サビカスは、リストラや転職が当たり前になった、流動的な現代に合わせたキャリア理論を展開しました。時代に合った理論家として、3人いっしょに覚えておきます。
ダグラス・ホール | 心理的キャリア、プロティアンキャリア(変幻自在のキャリア) |
マーク・サビカス | 職業パーソナリティ、キャリア・アダプタビリティ、ライフワーク。 |
サニィ・ハンセン | 4L(愛、労働、学習、余暇)の統合的ライフプランニング、チェンジエージェント |
経済状況 | 安定期 | 過渡期 | 衰退期 |
スーパー ホランド | ・クランボルツ 学習→偶然 ・ジェラット 左脳→右脳 ・シャイン 外的⇔内的 | ・ホール プロティアンキャリア ・サビカス キャリア・アダプタビリティ ・ハンセン 4L |
ダグラス・ホールと心理的成功
ダグラス・ホールは、〇〇的成功 (自分にとっての成功、主観的キャリア)の重視が特徴です。アメリカで1980年代に、長期的な雇用形態が衰退したことが背景にあります。
👉心理的成功
雇用者や組織ではなく、自分自身の判断を基準としていることが特徴です。いまの日本では、例えば会社に勤めず、ユーチューバーなどをめざす20代のクライエントの理解に必要かも知れません。
覚え方 ホールは、社会の穴(ホール)に落ちてしまった人に、プロティアンキャリアというロープを投げかけました。
※ダグラス・ホールは、主観的なキャリアと客観的なキャリアの双方を考慮すべきとしており、客観的キャリアを否定している訳ではありません。
心理的成功の4条件
ユーチューバーになることは、心理的な成功なのでしょうか?
心理的成功の4条件
- 挑戦しがいがある
- 目標達成することに意義を見出せる
- 目標が自己概念にとって重要である
- 実際に目標が達成できる
ただし、組織で働くことも前提としており、客観的キャリア(会社内の評価や役職など)も踏まえています。
プロティアン・キャリア(変幻自在のキャリア)
ダグラス・ホールのキーワードが、プロティアン・キャリア(変幻自在のキャリア)です。
プロティアンキャリアとは、アメーバのキャリアとも呼ばれ、変幻自在のキャリアのことです。プロティアンとは、ギリシャ神話のプローテウスから名づけられ、変幻自在を示します。
プローテウスは、ナイル川河口の三角州沖合に浮かぶパロス島で、アザラシの世話をしており、「海の老人」と呼ばれます。予言の能力を持ちますが、その力を使う事を好まないため、予言を聞くためには、捕まえる必要があります。しかし、他のモノに変身する能力がるため、捕まえること自体が至難の技です。
プロティアンキャリアとは?
- キャリアは組織でなく、個人によって管理される。組織内キャリアからプロティアンキャリアへ。
- 核となる価値観は、昇進や権力でなく、自由や成長である。
- 重要なパフォーマンスは、地位や給料でなく、心理的成功である。
- 重要なアイデンティティ側面は、私は何をすべきか(組織における気づき)ではなく、自分は何がしたいのか(自己への気づき)である。
- 発達とは、公教育、研修、昇進を必ずしも意味せず、自己指向的な、継続的学習であり、人間関係や仕事へのチャレンジなかで成し遂げられる。
プロティアンキャリアを獲得するには、2つの前提があります。
- アイデンティティ … 自己理解と自己統合(過去、現在、未来に渡る自分の軸)が、ある程度進んでいること。
- 〇〇〇〇〇〇〇〇 … 変化を受け入れ適応、順応できる力。〇〇コンピテンス(=アイデンティティの探索力、反応学習、統合力)× 〇〇モチベーションのかけ算で表現できる。
(注)反応学習とは、環境との相互作用による学習。迷路を攻略するうちに、道順を覚えるようなもの。
👉アダプタビリティ、適応、適応
ダグラス・ホールの考えるキャリア意思決定とは?
ダグラス・ホールは、日々の選択もキャリア意思決定であると考えます。転職だけでなく、部署の目標に積極的に参画するのか等。また、サブ・アイデンティティ(付随する自己)の選択も意味します。
ダグラス・ホールは、キャリア意思決定には自尊心(過去の心理的成功)が必要で、人間関係の影響が大きいと考えます(関係性アプローチ)。
企業内キャリアコンサルティングへの応用
- キャリアの持ち主は、組織でなく、個人で(も)あるという認識を持つ。
- 個人(社員)に対し、情報やサポートを提供する。キャリアは、個人と環境の関係に根づくものであり、人事はブローカー(仲介者)に徹する。
- 個人(社員)に、キャリアサービスの意義や情報を積極的に説明する。
- 職務の習熟でなく、学習者としてのアイデンティティが成熟することを手助けする。
マーク・サビカス(サヴィカス)
マーク・サビカスは、スーパーの断片的な理論をまとめ上げながら、自身の理論を形成しました。ホランドの理論なども組み込み、キャリア理論のハンドブック的な要素があります。キャリア構築理論と呼ばれ、キャリコンの試験にも頻出です。
経済状況 | 安定期 | 過渡期 | 衰退期 |
スーパー ホランド | ・クランボルツ 学習→偶然 ・ジェラット 左脳→右脳 ・シャイン 外的⇔内的 | ・ホール プロティアンキャリア ・サビカス キャリア・アダプタビリティ ・ハンセン 4L |
マーク・サビカスの2W1H
マーク・サビカスは、クライエントに2W1Hを問いかけるべきだと考えます。
- What(あなたは何者?) … 職業パーソナリティ。スーパーやホランドのマッチング理論の延長線だが、主観的であり変化してゆくものと見る。能力、欲求、価値観、興味などを含む概念。
- Why(なぜそれをしている?) … ◯◯◯◯◯◯。なぜその仕事か。キャリアを貫く物語。
- How(どう変化に対応する?) … キャリア・アダプタビリティ。スーパーが発案した概念だが、サビカスが発案者とと誤解されることがあるほど。社会環境の変化への適応。
👉ライフテーマ
サビカスのキャリア構築理論の特徴は、◯◯◯◯主義。社会現象は人の頭の中で作り上げられたものが先立つという立場です。スーパー、ホランドの時代に比べ、変動が激しく、多くの人々が仕事の側からの客観的な評価を得にくくなったことを背景に、その人自身の物語(主観的なもの)を重視します。
👉社会構成主義
(正誤問題)サビカスは、職業パーソナリティは、能力とパーソナリティに大きく分類でき、能力には、適性と技量があり、パーソナリティには、適応、価値観、興味、態度があると指摘した。
ヒント:記述はスーパーの職業適合性の説明です。答え:誤り。
How|キャリア・アダプタビリティ
スーパーのライフスパン(5段階の発達)は、変化が少ない時代のものであり、各発達段階のなかでもトランジッション(転機)は、予想困難な形で起きうるとしました。得た地位を守るべき維持期(45歳~の維持段階)に、リストラにあう可能性があることが一例です。
キャリア・アダプタビリティ(変化への対応力)は、4つの次元から成り立っています。
キャリア関心 | 過去や現在を評価しつつ、未来に関心を持つこと。 |
キャリア統制 | キャリアは自分の責任だと自覚し、統制しようとすること。 |
キャリア好奇心 | 自分と職業の適性を探り、アンテナを張ること。 |
キャリア◯◯ | 過去に困難を乗り越えた自己効力感。 |
4つのうち3つに「しん」の読みが含まれます。関心、好奇心、自信。
👉自信
(正誤問題)サビカスの「キャリア関心」とは、過去の職業経験に囚われることなく、現在の経験に意味を付与する姿勢のことである。
ヒント:サビカスは、現在だけでなく、過去の経験も振り返って、自分なりの意味づけをすることで、未来につながっていくと考えます。答え:誤り。
Why|ライフテーマ
ライフテーマは、キャリアのwhyに対応する部分です。なぜその仕事を選ぶのかに対する答えであり、キャリアを貫く価値観となります。
- キャリアストーリー … 個人が職業上の転機や、直面した課題を語ったもの(物語)。
- ライフテーマ … キャリアストーリーを通底する何か(物語)。一見脈略のないキャリアストーリーにも見出されうる。
例えば、転職歴のあるクライアントなら、転職した理由を語ってもらいます。また、仕事のなかで納得がいかない部分を、どうクリアしたかもヒントとなります。これらの話に共通するものが、ライフテーマです(関連:キャリアアンカー)。
- 意外に覚えにくい?サビカス。「お風呂のサビとカスは、何をどうとるの?なぜ?」と覚えてはどうでしょうか?
- サビカスは、何者・誰(what)、どう(how)、なぜ(why)をまず思いせるようにします。誰→変化する職業パーソナリティ、どう→キャリアアダプタビリティ(4つ)、なぜ→ライフテーマのように、思い出せるようにします。
キャリアコンサルへの応用
- ライフテーマの発見 … キャリアストーリーを語ってもらい、通底するものを分析する。
- キャリア構成インタビュー … 下記
キャリア構成インタビュー
質問 | 筆者の回答 |
①子どもの頃、誰に憧れ、尊敬していましたか?(ロールモデル) | 戦隊ヒーロー、水戸黄門 |
②いつも読んでいる雑誌やテレビ番組はありましたか? | ドラえもん、鉄道雑誌 |
③本や映画で好きなストーリーはどんなものでしたか? | 勧善懲悪 |
④好きな名言や格言はなんですか?(モットー) | 私はずっと人気者であると同時に嫌われ者で、成功者であると同時に敗者で、愛されると同時に憎まれてきた。で、今になってわかるの。どちらにしろ、みんな意味の無いことだ、ってね。(マドンナ) |
⑤思い出せる最も昔の記憶は何ですか? | 大けがをしたこと。 |
①軸(勧善懲悪)、②職業興味(鉄道会社)、③問題解決のヒント(正しいことを優先する)、④モットー(達観)、⑤先入観(命の危険)
上で学んだ内容の正誤問題を3つ置いておきます。
正誤問題 | 答え |
ハンセンの統合的生涯設計では、個々が「自分の満足する仕事」をめざしたキャリア選択をしていくことの重要性が示されている。 | 統合の文字に注意。社会全体への視点。誤。 |
サビカスのキャリア構築理論の主要概念には、職業パーソナリティ、キャリア・アダプタビリティ、ライフテーマの3つがある。 | what、how、whyにあたるものです。正。 |
プライアとブライト(Pryor &Bright)は「キャリア・カオス理論」を提唱し、キャリアは偶然によって不規則に変化する点を、バタフライ・モデルを用いて示した。 | マイナーな理論家ですが、名前(プラ、ブラ)とバタ「フラ」イ理論が合致します。正。 |
サニィ・ハンセン(女性)
サニィ・ハンセンは、田舎生まれで裕福とは言えない、ノルウェー系のアメリカ人です。ハンセンの考え方の特徴は、個々がどんな仕事につくのかという観点を超越した、広い視野にあります(統合的人生設計)。利他性、BORN FREEプログラムで知られます。キャリア発達理論、ジェンダー、多文化理論なども取り入れ統合的な理論をめざしました。
ハンセンは、人生の役割を、〇、労働、〇〇、余暇(ハンセンの4L)としました。ほかの生活上の役割や人生全体のなかで仕事を捉えるのが、ハンセンの統合的生涯設計(ILP)です。
クライエントに、仕事だけでなく人生を包括的に捉え、個人の利益だけでなく社会に目を向けた仕事選びを促します。前者は、キルト(パッチワーク)をたとえに説明されます。
👉愛、学習
(正誤問題)ハンセンは、統合的生涯設計(ILP)において、人生の役割をLove(愛)、Labor(労働)、Learning(学習)、Life(生活)の4Lで表現した。
ヒント:Lifeは一見正しい感じがするが、Leisure(余暇)が正しい。答え:誤り。
確認:①愛・Love ②労働・Labor ③学習・Learning ④余暇・Leisure
ハンセンの指摘した現代キャリアの重要課題
ハンセンは、現代キャリアの重要課題として以下を指摘しました。
- ① 地域や国全体、あるいは世界で起こっている、グローバルな状況を解決するために仕事を作り出すべきである。
- ② 人生の全体像を充実させる。愛、労働、学習、余暇のハンセンの4Lを充実させる。
- ③ 家庭と仕事を行き来し、男女が平等に負担する。
- ④ 多元性(多様性)と包括的な視点を大切にする。
- ⑤ チェンジエージェント。 経営者や組織幹部と一線を画し、個人と組織の変革に貢献する代理人的存在。
- ⑥ 人生の目的、意味を探求
+1 健康(健康は、あとから追加されました)
サークルオブライフ
生涯の年数を円周で表し、◎の外側に人生の出来事を書いてゆき、◎の内側にそのときの思いを書いてゆく。その共通項を中心部に書く(=自己概念)。今後の人生を、自己概念をもとに考えてゆく(ワークショップやクラスでの提供を推奨)。
ハンセンを帆船と書けば、帆のイメージ。帆布のキルト(パッチワーク)をイメージできるかも知れません。キルトには、4L(愛、労働、学習、余暇)が描かれています。
リハビリテーション・カウンセリング
- 障害を持つ人の職業的な側面だけを見るのではなく、人間の全体性に焦点を当ててアプローチする。また、個々の独自性を尊重する。
- 障害を持つ人が、人生における目標を定め達成できるようにサポートする。社会参加できるように、特に仕事を得られるように支援する。自分の資源を利用し、問題解決できるようになることをサポートする。
- 障害を持つ人が平穏で、創造的で、活力と喜びに満ちた生活を送れるようにサポートする。
- 障害のある人が、無理をして環境に合わせようとするのではなく、環境を変えることによって、障害があっても生活しやすい社会を目指す。
15ページで分かるキャリアコンサルタント(筆者プロフィール)
キャリコンの学習サイトは、分量が多過ぎたり、単純な暗記を促したりするものが多いようです。受験ネットでは、過不足のない、具体的でわかりやすい内容をめざしています。
①キャリコンの概要#01(準備中)
②キャリアコンサルタントの倫理とあるべき姿|キャリコン対策#02
③ロジャーズとは?(来談者中心療法、内的準拠枠)|キャリコン対策#03
④認知行動療法をわかりやすく|キャリコン対策#04
⑤システマティックアプローチとは?|キャリコン対策#05
⑥スーパー(職業的適合性・アーチモデル)、ホランド|キャリコン対策#06
⑦クランボルツの意思決定・偶発性と、シャイン|キャリコン対策 #07
⑧ホールと、サビカスのキャリアアダプタビリティ|キャリコン基礎理論対策 #08
コンサルティング全体の流れ#09|労働経済白書と職業訓練、教育訓練給付金#10|人事労務管理、社会人基礎力#11| 学校のキャリア理論#12|労働関係の法律#13|社会保障制度・メンタルヘルス#14|学科試験・実技試験(論述・面接)対策#15|
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