キャリアコンサルタントの倫理とあるべき姿、新たな潮流「社会正義」|キャリコン対策#02

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キャリアコンサルタントの倫理とあるべき姿を分かりやすくお伝えします。新たな潮流である「社会正義」の項目も付け加えました(2025年3月)。

たった15ページで分かるキャリコン対策筆者プロフィール

①キャリコンの概要#01(準備中)
キャリアコンサルタントの倫理とあるべき姿、新たな潮流「社会正義」|キャリコン対策#02
ロジャーズとは?(来談者中心療法、内的準拠枠)|キャリコン対策#03
認知行動療法をわかりやすく|キャリコン対策#04
システマティックアプローチとは?|キャリコン対策#05
スーパー(職業的適合性・アーチモデル)、ホランド|キャリコン対策#06
クランボルツのキャリア理論、偶発性と、中高年齢者や介護に関する知識|キャリコン対策 #07
ホールと、サビカスのキャリアアダプタビリティ|キャリコン対策 #08
コンサルティング全体の流れ#09
職業能力開発基本計画に基づく、各種助成金・給付金、ジョブカード、セルフキャリアドックの制度|キャリコン対策 #10
人事が採用や人材評価、労務管理でやってはならないこと|キャリコン対策#11
学校のキャリア理論#12
労働基準法、雇用対策法・職業安定法を軸とした労働関係法令|キャリコン対策#13
会社員のメンタルヘルスに関して知っておきたい知識と実際の対処法|キャリコン対策 #14
学科試験・実技試験(論述・面接)対策#15

キャリアコンサルタント 参考書・問題集の選び方
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キャリアコンサルタントの倫理綱領とは?

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守秘義務をはじめとするキャリアコンサルタントの倫理綱領は、通学過程の冒頭の授業で確認をするケースも多い、重要な内容です。

キャリアコンサルタントの信頼性は、その大半を「国家資格である」という点が支えています。それにふさわしい、倫理やあるべき姿を守ることが必要です。倫理綱領の全文は、キャリアコンサルタント倫理綱領で見ることができますが、試験対策上重要なのは、以下の項目です。

自己研鑽(4条) …知識・技能を深める、上位者からの指導を受けるなど、自己研鑽に努める。

上位者からの指導を、スーパーヴィジョンと呼びます。指導を受けるにあたっては、指示・命令的、あるいは依存・受身的な関係ではなく協働的な関係が必要です。なお、スーパーヴィジョンを受けることは、努力義務であるため、受けない期間があったとしても、倫理綱領違反とまではなりません。

守秘義務(5条) …守秘義務、書類の管理、相談内容の無断使用の禁止。ただし、身体・生命の危険や法律に定めのある場合は、例外となる(警告義務)。

任務の範囲(8条)…精神的な病名の判断など、専門外の行為をしない

専門的な判断が必要な場合、心療内科などを紹介しますが、オファーと呼びます。オファーの用語も、よく出てきます。

自己決定権の尊重(9条)…絶対にやめない方がいいわよ!など、クライエントのためを思ってという気持ちからの権利侵害にも、注意が必要です。

多重関係の禁止(10条)… 相談以外の関係を持たない。相談の前後で別の場所で会うのは禁止。個人的な仕事の依頼(特に相場より安い依頼は大きな問題)もしない。

報告の可否(11条)…相談者  のもとで、組織への報告、提案等可。

👉了解

倫理として新たに注目される「社会正義」

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OECD、ILOなどは、キャリア指導の目的として、労働市場のミスマッチの是正、教育訓練のほか、社会正義の実現を挙げています。現在注目が集まる価値観が、社会正義です。

キャリアカウンセリングが誕生したと言ってもよい国がアメリカ。アメリカのカウンセラー倫理綱領にも、社会正義が3番目に出てきます。

  1. enhancing human development throughout the life span(発達)
  2. honoring diversity(多様性) and embracing a multicultural approach in support of the worth, dignity, potential, and uniqueness of people within their social and cultural contexts
  3. promoting social justice(社会正義)

80年代には、スーパー(人名)のライフキャリアレインボー(年齢別のキャリア図)が、アメリカ白人中心と批判され、90年代に移民、非白人、女性、LGBなど多文化キャリアカウンセリング研究が盛んとなりました。しかし、研究が分断される傾向があり、現在ではsocial justice(社会正義)を念頭に置き共通化を図るように変化してきています。

(定義)社会正義の実践は、社会の価値、構造、政策、実践を変えようとする学術的・専門的な活動であり、それによって、不利な立場にある対象層、周辺的な対象層が自己決定の手段により多くアクセスできるようにする活動である。

社会正義のキャリアコンサルティング

・(深い意味での)カウンセリング。不利な立場にある対象層、周辺的な対象層の存在の承認。個人の悩みとして聞くのと同時に、組織・制度・社会の歪みとして捉える。
・エンパワメント。自己決定の手段により多くアクセスできるようにする。
アドボカシー(提案、代弁、申し入れ、具申)。セルフアドボカシーは、クライエント自身の交渉の支援。クライエントアドボカシーは、クライエントのかわりに代弁、説明、交渉。システムズアドボカシーは、組織・制度・社会全体への介入(組織改革、組織開発)。

一般に、個別キャリア相談のニーズは、男性よりは女性、中高年よりは若年者、正社員より非正社員で多い。⇒組織文化の中心と比べて、周辺的な対象層でニーズが高い。

キャリアとは、仕事だけを意味するものではない!

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キャリアと言えば、一般には「職歴」のことをさしますが、キャリアコンサルタント(国家資格)では、どんな意味で使っているのでしょうか? 

キャリアの定義は、キャリアコンサルティングの父とも言える    の定義が有名です。

👉スーパー

  • 人生を構成する一連のさまざまな出来事。
  • 職業と、人生のほかの役割や地位とのつながり。無報酬を含む。
  • 雇用者のほか、学生、家族、市民、副業、年金生活者などの役割を含む。

スーパーは、キャリアコンサルタント(国家資格)でもっともよく出題される理論家の1人です。

キャリアの意味を理解する上で重要な点は、ワークキャリアのほかに、ライフキャリアも含んでいることです。これには、家庭、地域など、仕事以外の役割も含まれます。キャリアコンサルティングのなかで、クライエントの、仕事以外の役割にも耳を傾けることが大切です。

ときには、クライエント以外への働きかけも

一般的にコンサルティングといえば、依頼者(クライエント)への働きかけが中心です。

しかし、キャリアコンサルタントの役割には、組織(地域、学校、会社、家族などの環境)との共生への支援も含まれます。そのため、ときには会社、家族などへの働きかけを行うこともあります。

キャリアコンサルタントは、指示を控え、相談に軸を置く!

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キャリアコンサルタントとは、職業の選択、職業生活設計、職業能力開発に関して、  、助言、指導のみを行うことです。

👉相談

キャリアコンサルティングは、何を行うことなのでしょうか?  職業能力開発促進法(第2条5項など)は、キャリアコンサルティングを次のように定義しています。

労働者、求職者(非正規雇用や学生も含む)の……職業の選択、職業生活設計、職業能力開発に関して 重要 相談、助言、指導のみを行う。

自らの知識や経験をもとに、こうしたほうが良いと、結論を伝えたり指示をしたりするのは、キャリアコンサルタントの仕事ではありません。

キャリアコンサルタントは、有用感を与えたいがため指示を与えてしまう部分がありますが、このほかに相手の不安を共有し、早く解決したいと焦りが生じてしまうという理由があります。慌てて指示を与えてしまうと、それが成功した場合には依存、失敗した場合には他責という状態を生みやすくなり、自律や成長を阻害してしまいます。

助言・指導だけではなく、相談(傾聴)が中心となる

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一般的にコンサルティングといえば、コンサル側から、助言や指導がもらえるイメージです。しかし、キャリアコンサルティングでは、ロジャーズやフロイトの研究を土台に、前段階にこそ、力点が置かれます。

キャリアコンサルティング
  • 1
    前段階
    傾聴(しっかり聞き、深く理解)、相談
  • 2
    最終段階
    助言、指導、情報提供

前段階があってこそのキャリアコンサティング」(木村周)という言葉があるように、前段階である傾聴過程で、自己理解(自己  を促すことが重要です。

👉探索

例えば、クライエントの話しを聞くのもそこそこに「それならあなたには〇〇が向いてる!」とジャッジするのは、キャリコンの仕事ではなく、一般人の仕事です。傾聴する中で、クライエントが自問自答(自己探索)し、今まで気づいていなかった問題点や自身の強みに気づくように導く点が、キャリアコンサルタントの大きな役割です。

ヒント ロジャーズは、現在のキャリアコンサルティングの土台を作った重要な人物です。キャリアコンサルティングの父スーパーと並んで、毎回(3〜12回を調査)出題されています。

また、クライエントが持ち込んだ問題が、よく深めてみると的外れであることもよくあります。そのためにも、持ち込んだ問題(来談目的や主訴)に即応するのではなく、傾聴を経て、真の問題を特定するプロセスが重要となります。

自己概念も重要 問題とは、「自己概念」とのずれが背景に存在することがあります。相談者のものごとの捉え方、感じ方、価値観、こだわり(背景には時代、親の育て方、世間体といったもの)を探ることが必要です。

キャリアコンサティングは、なぜ必要になったの?

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日本で、キャリアコンサルティングが必要になったのはなぜなのでしょうか? 背景には、経済・社会的環境の変化があります。

  1. 終身雇用制度が揺らぎ、企業倒産や解雇が日常化。
  2. 技術革新により、職業能力が突然無になることがある。
  3. 高齢化による、職業生活の長期化。
  4. 市場の成熟により、多様な専門性が求められる。
  5. ニート、フリーター等、職業意識の希薄化。

キャリアへの支援は、転職や技術革新に耐える個人の能力を育てるだけでなく、企業や社会全体の活性化にもつながる、相乗効果をもたらすものです。

かつて、企業では、企業の枠内で個人を育てる方向性でしたが、現在は個人がOFF-JTに参加したり、自己啓発を進めたりして、その成果を企業にも還元する流れが想定されています。

日本のキャリアコンサティングの歴史は?

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2001年、企業の事業主が、自社の都合だけではなく、労働者のキャリア設計を考えた施策をするように定められました。また、職業訓練給付金の制度が創設されました。

2001年 職業能力開発促進法改正(事業主が講ずべき措置)

① キャリアに関する情報、相談の機会の提供
② キャリアを考慮した配置等の配慮
③ 自主的な能力開発のための休暇や時間の確保

2001年~ 第7次職業能力開発基本計画(5つのインフラ整備)

① 労働力需給調整機能(ハローワークの強化、官民連携の雇用情報)
② 情報提供
③ 教育訓練機会(教育訓練のコース開講、給付金
④ 能力評価
⑤ 支援システム(キャリアコンサティング技法、国家資格の布石)

  • 2002年 キャリアコンサルティング研究会
  • 2008年 キャリアコンサルタントの技量差が目立つ状況を改善するため、キャリアコンサルティング技能検定(2級)の開始。
  • 2011年 キャリアコンサルティング技能検定(1級)の開始。1級、2級、標準レベルの3段階に整備。標準レベルは、のちに国家資格化。

2015年 キャリアコンサルタント国家資格化が実現。企業領域、労働需給調整システム領域(ハローワーク、ジョブカフェサポステ)、教育機関領域での活躍が想定されています。

日本におけるキャリアコンサルタントの制度

キャリアカウンセラーは、誰でも、どんな実績でも名乗れますが、キャリアコンサルタントは、2016年に国家資格となりました。以下のような、特色があります。

  • 専門家である。
  • 名称独占資格(勝手に名乗ってはならない)。
  • 登録制(5年後更新)。
  • 守秘義務。信用失墜行為の禁止。

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